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異世界から来た人格  作者: 狼狐
第二章:交差する狂気
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夢の終わり

[ダニエル]

このクラブは実にいい所だ。

女達が俺の疲れを癒してくれるし、酒も大量に飲める。

その気になれば手に入れた大量の報酬でビッチ共をお持ち帰りなんて事も...。

妄想と欲求が同時に頭を支配する。

金が己を満たす、金で全てが変えられる。

俺はクラブにいる間中ブリーフケースを一度も放さなかった。

酒を飲む時も、大麻を吸う時も、トイレに行く時だって、一度たりとも、だ。

ボスもいつもこういう気持ちなのだろうか?

下着姿の女達を同時に抱き、アルコール度数の高いウォッカを飲む。

これが俺の夢だった。

だが夢はいつかは覚める、そんな事分かりきっていた。


[マーク]

14、15、16...。

ダメだ、肉片と肉片が混ざり合って17人だか16人だか分からん。

だが少なくともこの店の中で15人以上は殺害した。

それでも獲物共は次から次へと沸いてきやがる。

見た限り5箇所以上ある扉から何人も何人も...。

俺はあらゆる対抗手段を行使した。

が、そろそろそれも終わりそうだ。

ナイフの刃は折れ曲がり、スレッジハンマーは取っ手が抜けた。

出入り口の扉は封鎖されたし、俺は奴等に完全に包囲されちまったってわけだ。

後は奴等が俺の正確な場所を把握すれば一気に殺しにかかってくるだろう。

幸いな事にこのクラブは広い。

奴等が一人でも歩いてくればその足音や声が反響してこっちに伝わってくる。

一人...また一人。

俺に歩み寄る人影を確実に潰していく。

唯一の武器は、敵の死体から奪い取った小型拳銃一丁だけだ。

おまけにサプレッサーがついてきてくれたおかげで、奴等には気づかれていない。

だが足元にある死体の山のおかげでこの部屋に皆が押しかけて来る。

そしてついに、避けたかった事態が起こった。

弾薬が底を尽きたんだ。

引き金をいくら引いてもカチッカチッとしか音は出ない。

「クソッ...クソッ!」

俺は銃をその場に叩きつける。

マガジンを舐めるように見回す。

そして目を閉じ、ゆっくりと死を覚悟した。

だが目の前まで迫る死という恐怖に手が震える。

まだ地球上の全人類が味わった事のない世界。

死んだら人間はどうなる?天国か、地獄か?それとも永遠の暗闇?

そう考えていると丁度、俺を殺そうと、手柄を手中に収めようとする警備員が歩いてきた。

奴等はもはや侵入者を止める気はない、潰しにかかってるんだ。

ニヤニヤ笑い、バットを振り回しながら寄って来る。

「お前が俺を天国へと連れて行ってくれる天使か、もっと可愛いもんだと思ってたぜ。」

ポケットの中に入っていた最後のタバコに火をつける。

奴は暢気に死を迎えようとする俺の前でバットを振りかぶり、俺の脳天目掛けて振り下ろした。

俺はそのまま死を迎える...はずだった。

だがその時俺はバットを華麗に避けたんだ。

恐らく俺の心の奥底に眠っている生存本能が叫びを上げたんだろう。

奴がバットでぶん殴ったのは俺の咥えていたタバコだけだった。

消えたようにしか見えなかっただろうな。

俺は奴の背後に回り、首に腕をかけた。

苦しそうにジタバタともがくが、こうなってしまったら俺の勝ちだ。

グッと腕に力を入れ、圧力を急上昇させる。

奴の首は俺の力を入れる方向に対して必死に抵抗するが、ついにその力を失った。

バキッという音と共に一気に右に回ったんだ。

バタバタともがく腕はダランとだらしなく垂れ、荒い息遣いは聞こえなくなる。

この男の生命活動は一瞬で停止し、その場に倒れた。

俺はバットを拾い上げ、部屋から出る事を決意する。

俺の中で死ぬという事は甘えだ、死を覚悟して目を閉じるだなんてとんでもねぇ。

世の中弱肉強食、適者適存だ。

目標を見つけ出すまで殺しはやめねぇ。

人間狩りの時間だ。

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