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異世界から来た人格  作者: 狼狐
第二章:交差する狂気
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厳重警戒

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もうウンザリだ。

そう思いながらも俺は一度覚えた殺人の快感を忘れられずにいた。

見た目は人間、心は血に飢えた猛獣だ。

そして今回も電話の言うがままに動き、ノースゴースト20番街のクラブに来たってわけだ。

奴はギャングのボスを名乗っていて、部下に渡した金が急遽必要になったから取り返してきてくれとの事だった。

そしてその取り返した分の3割は報酬として俺にくる。

悪くない話だ。

だがノースゴースト地区は20番街が一番治安が悪いらしく、その分警備も頑丈になっている。

既に玄関前には警備員と作業員が配置されていて、非武装の作業員が武器を持っていないか確かめ、警棒を持った警備員らしき男が身分証明証などを確かめている。

警備配置基準に違反しているのではないかと思う程厳重な警戒だ。

俺はナイフを後ろポケットにしまい、フェイスマスクを外す。

そのまま大股で表玄関へと向かった。

2人はこちらに気づいたようで、手に持った警棒のような物をまるで威嚇するかのように強調した。

俺は2人の前で立ち止まり、身分証明証を探す素振りを見せる。

左側にいた作業員はそそくさと荷物検査を開始し、警備員が退屈そうに俺を睨み付けた。

人を苛立たせるためだけに作られたようなその顔は俺の逆鱗にいとも簡単に触れた。

そして荷物検査をしていた作業員がバッグの中から事前に入れておいた短めのスレッジハンマーを見つけ出したその瞬間、俺はポケットの中から先程のナイフを取り出し、退屈そうにしていた警備員の顔に叩きつけた。

眠気覚ましだ。

突然の出来事に対応出来ない作業員はヘタッと腰を抜かし、その場に座り込んだ。

俺はそれを横目に、警備員にナイフを刺し続けた。

首に、胸に、腹に...。

中々しぶとい野朗だ、既に10回以上身体に穴を開けている。

その度に野良犬のように吠え、絵の具のような血が服の下から滲み出る。

もはや怒りも沸かなかった、これじゃただのキルマシーン(殺人兵器)だ。

自分がやっている事がどれだけ無駄かを見直す。

突然押し寄せて、言われるがままに殺し、己の衝動的欲求を満たす。

無残な死体から流れ出る血を舐めて笑みを浮かべるんだ。

俺は少しの間ボーっと宙を見つめた。

が、生憎俺の脳は細かい事や難しい事を考えるのは苦手だ。

「ま、やっちまったもんはしょうがねぇよな。」

執拗に付きまとう悩みを一言で片付け、俺はようやく死んだ警備員の死体を漁った。

クラブに入るには門番が持っている鍵を借りなければならない。

表玄関の扉を開けるためにな。

ポケットやポーチの中を丹念に探すが、ない。

あからさまに残念そうなため息をつき、俺はクルリと作業員の方に身体ごとむき直した。

相手を舐め腐った顔でナイフを親指と人差し指で持ち、作業員に刃先を向ける。

よしよし、いい感じにビビってくれている。

今にも泣き出しそうな目で必死に逃げようとするが、足は硬直して動かないようだ。

さて、どのように甚振ってやろうか?

俺は彼の作業服につけられたピカピカのネームプレートを眺める。

なになに、名前は....ボブか。

「やぁボビー、鍵を渡してくれないか?」

俺は先程ボブが荷物検査中に見つけてくれた15kgはありそうなスレッジハンマーを持ち上げた。

流石重いな、持ち上げるだけで足が腕がガクガクする。

そしてそれをそのまま振り下ろした。

ゴシャッという痛々しい音と共に巨大な鉄の塊は真下にあったボブの膝の骨を粉砕した。

周囲に血が流れ出し、ボブは苦痛に泣き叫ぶ。

小便も血に混じって流れてきた、痛みで失神したか?

彼の必死の命乞いも俺には雑音にしか聞こえない。

じゃ雑音が聞こえたらどうするか?音の発生源を潰すのさ。

俺は重いスレッジハンマーを身体全体を使いもう一度持ち上げ、涙でグシャグシャになったボブの頭に叩き付けた。

「こんなん持ち運んでたら肩壊すぜ。」

ミキサーにかけた挽肉そっくりになってしまったボブをよそに、俺は肩こりの心配をする。

で、湯に浸かる老人のような声を出しながらその場に腰を下ろし、死体の中から鍵を探す。

身体は殆ど赤黒くなっていて肉片が鍵を探す邪魔をする。

飛び出した内蔵を左手でどかし、右手で内部を探すが、中々見つからない。

骨盤はスレッジハンマーの衝撃で身体の中に埋まっている。

だがそれは服も一緒だ。

ポケットに入っているとしたら、相当奥の方まで潜って行ってしまっただろう。

その時、肉の奥で指の先が小さな固い物に触れた。

骨ではない、もっと小さな何かだ。

「鍵か?」

心の奥でそう確信した。

だが肉の裏に隠れていて簡単には取り出せないだろう。

両手でそれをわし掴みにし、強引に引き抜く。

まるで地面から蕪を引き抜く爺さんみたいにな。

それは確かに鍵だったが、腸のような長い何かに絡まって取り出せない。

俺はポケットにしまっておいたナイフで粘液の付着したそれを切り落とす。

ネチョ...ネチョ...一本また一本と絡まった肉は削ぎ落とされていく。

中々気色悪い感覚だ。

最後の一本を俺は手で千切り取った。

そしてすぐに鍵を開ける。

長ったるい事後処理なんかしている暇はない。

この顛末を誰かに見られて困るんだ。

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