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異世界から来た人格  作者: 狼狐
第二章:交差する狂気
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捜査

[デニス]

午前10時30分...捜査開始...と。

こんな朝っぱらからこんなとこ来たくなかったぜ。

どうやら犯人は犯行現場に戻ってくるって説は正しかったみたいだな。

昨日俺はこの家から妻子の命を奪った。

夫エリックは行方不明か、何やってるんだ、家族が死んで頭おかしくなったか?

近所のおばさんが教えてくれなかったらずっとこのままだぞ。

まぁ、俺の知った事じゃない。

それより、こんなズタズタになった死体から身元なんて特定出来るのか?

四肢を切断して、目玉を刳り貫いて、ついでに首も鋸で切断した。

部屋の隅々まで血が飛び散っている。

外じゃ部下達がゲーゲーと嘔吐している程見るに耐えない。

死体だらけの部屋を捜索するのはノイローゼになりそうだ。

俺は検死中、部下達の前で考え込む素振りを見せ続けた。

怪しくは思われなかっただろう、何せいつも考え込んでいる俺だ。

刑事らしくメモをとりながら、奥にいる部下達の会話を盗み聞きする。

「この死体は犯罪に起因する事が明らかになっていて...」

当たり前だ、心の中で笑う。

仮にこれが自殺だとしたら無理心中ってレベルじゃない。

息子は殺せてもテメーどんだけタフなんだよって話になる。

このあとは遺族から鑑定処分許可状を貰えればこの妻子の司法解剖が行われるし、貰えなければ勝手な理由で片付けられ終わりを迎えるだろう。

殺害に使った銃弾はちゃんと肉の中から抜いてあるし、汗も一滴すら垂らさなかった。

バレる事はまずないはずだ。

だがどうなのだろう、病理解剖と全く方法が変わらないという事はかなり詳しく調べるだろうし、もしかしたらもあり得る。

そこからちょっとした証拠で俺に容疑が被せられる可能性も少なからずあるだろう。

だが、マイナスの事は考えないのが俺のやり方だ。

後ろ向きにやってたらこんな事は出来ない。

楽観主義者でいる事こそこの世で成功する秘訣だと信じている。

俺は垂れる冷や汗をハンカチでふき取ろうとする。

取り出したハンカチを見て愕然とした。

固まった血で黒く染まっている。

恐らくこの惨状を作り出す際に使用した物だ。

昨日は疲れ切ってそのままベッドに入ってしまったため、忘れてしまったのだろう。

あわててポケットにしまい、周囲を見回す。

幸いにも誰一人としてハンカチに付着した血液には気づいていないようだ。

皆捜査に没頭している。

俺はホッと一息つき汗を手で拭った。


[マーク]

朝から何もする気にならなかった。

"仕事"で手に入れた金でテレビを買い、新しいタトゥーも彫った。

背中にデカい棺桶を彫ったんだ。

その棺桶の中にはエリックを埋葬した。

勿論実際に入っているわけないが、俺はそれほどまでにアイツの死を悲しんでいるという事だ。

教会の告会室で懺悔しても拭えない。

俺はこれから一生ダチの棺桶を背負って生きて行く。

そう決意したのさ。

そんな今朝、またも電話が俺を呼び出した...。


[ダニエル]

今回のクラブ襲撃の件で俺の地位は飛躍的に向上した。

ボスも喜んでくれたし、俺の収入も激増した。

ブリーフケース一つじゃ入りきらない程の大量の紙幣の束だ。

これさえあれば家も買えるし別荘にだって住める。

女も...車も...フェリーも...何もかも全部俺のもんだ。

あまりの嬉しさに無意識に笑みがこぼれる。

涙まで出てきた。

長年生きてきて初めて人生の絶頂期というものを噛み締める事が出来たんだ。

何度もボスに礼を言いながら事務所を出る。

盗人などに狙われないようにブリーフケースを隠しながらそそくさと車に乗り込んだ。

全財産を、俺の人生の全てを失うわけにはいかない。

これでどん底から這い上がってやる。

事務所を出て、まず俺は銀行に金を預ける前に今まで手を出せなかった高級なクラブへ寄る事にした。

多少の幸福ならまだしも、大きな幸福は人と分かち合うものではない。

そう分かっていながらも俺は誰かに自慢をしたくて堪らなかった。

それが失敗だと分かっていながらも。


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