活字との出会い
俺には夢があった。中学年の頃だったろうか。当時は有名な、なんてことないファンタジー小説を友人から借りて何となく頁を開いた。そこには、ゲームしかしてこなかった自分には、皮肉にもそれが逆に新鮮に感じて、僕は作家になりたい。そんなはっきりとした願望ではなかったが、そんな曖昧な夢を持ちはじめていた。
それほどにも、ただ、活字を追うという作業だけではなく、自分の世界をくっきり浮かび上げる、想像力。
俺はそんな麻薬的な感覚に取り付かれた。
だが、俺はその曖昧な夢に、徐々に明瞭な輪郭を持たせていった。
そして俺は高校生になり、大学受験の為の勉学に励む事もなく、授業中は読書家、帰宅しては執筆作業。そんな、作業気取りの生活を送っていた。
その時はもう既に、自分は作家になると決めていた。
色んな作家、昔の文豪の作品、流行りのベストセラー、とにかく、目にはいる興味をそそられた本に俺はなけなしの小遣いをそれらに注ぎ込み、読み漁った。
しかし、その決心も教員、友人、親にも打ち明けることもなく、ただ、自分の中でこっそり隠しては、学校の帰りに喫茶店に寄り書きかけの小説を書き上げること、それだけに腐心していた。
これから、どんなに辛い人生が待っているかも知らず、俺は現実から目を背け、自分の夢を追っていた、そんな人間が他にどれだけいるかも知らずに、クソみたいなアウトサイダーを気取っては、周りを馬鹿にしていた。