冬の冷たい季節
〜冬風氷姫side〜
生徒会室に居てもすることが無くなったので一人帰路を歩く。別に自分ひとり早く帰ったのではなくそろそろみんな帰りだす頃だろう。
――さて、今日の晩ご飯はどうしたものだろう。
私の家は私と弟との二人暮らしだ。両親は一応生きてはいるがしばらく会っていない。確か今はアメリカに居るんだったか。まあ、どうでも良い事だ。
今日は適当にカレーでも作ろう。そう自分の中で結論を出した所で不自然な視線に気付いた。
――またか。
明らかにこちらを見ている。まあ、いつもの事だった。自分で言うのもなんだが昔から私はモテていた。それはもううんざりする程に。どこかへ出かければナンパなんてしょっちゅうだ。だから、学校の帰りにナンパされる事もそう珍しい事ではない。告白されたら一蹴すればいい。
「かわいいね」と恐らく視線の持ち主であろう男の声。どうやら相手は二人組らしく髪を金髪に染めていること、ピアスを開けている事から不良であると推測出来る。そして、制服から龍忌学園の生徒だとも分かった。
厄介な相手だなと顔をしかめるもすぐに冷たいものを見る顔にする。はなしかけるなとでも言わんばかりに。だが、逆効果だった。
「アレ?調子乗っちゃってる?」
「まあ、そんな態度とらずにさあ、俺たちといいことしないか?」
一瞬だった。私がはなった蹴りが不良Aのみぞおちにヒット。もう一人には目つぶしをプレゼントした。
終わったか、そう息をついた瞬間に後ろからすごい力で引っ張られた。
「おい、お前らなにしてんの?こんな可愛い娘と、てか、俺待つの嫌いだって言ったよね?」
「は、はい赤沢さんすいません……」
「すいませんじゃねんだよ、まあいいや、この娘は誰だよ?」
「あ、俺たちがナンパしてた女です」
「それで、ボコされてるわけか?」
「それは……」
男はなおも私をはなさない。
「言い訳はいいんだよ!!」
――ボコ
鈍い音がしたかと思うと不良AとBは地面に倒れ込んだ。
「グググ……」
「んで、おめえ」
男は私に話しかけて来た。
「なんだ?」
「可愛いじゃねえか、俺の女にならねえか?おい」
男が首で合図すると雑魚Aと雑魚Bが私のバックから携帯電話を奪い取った。
「名前書いてあります。一応俺の携帯に送っときます」
「ああ、わかった。そういう事だ、ちょいと付き合ってくれや」
……どうしたものだろう。流石にこの男は強そうだ。私一人じゃ倒せないだろう。
「いいから来いよ!!」
ついに、男に引っ張られた。強い力だ。くそっ…。
「おい、そこでなにやってんだ!!」
「チッ、めんどくせえ。また、今度いい事しようぜ、冬風氷姫」
そう言って男達は帰って行った。
「大丈夫か?」そう声をかけてきたのは生徒会長の紺野優朔だった。
「なんでもない、ただのナンパだ」
「いや、おめえどう考えても今のはナンパじゃ――」
「うるさい」
「いでェァ!!」
会長に目つぶしを食らわしてその場から逃げた。
それから、数時間後。あの男と思われるものからメールが来た。
―――明日、龍忌学園近くの廃屋となった倉庫に来い。こないとてめえの学校の生徒全員ぶっ殺すからな!!【END】