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ユマの雪うさぎ

次の日。

ユマはまた食料や飲み物を持って、洞窟にいきました。

きのうの竜に会うためです。


「きのうは元気なかったけど……大丈夫かな?」


ユマは心配しながら、暗く洞窟へ入っていきました。


やっぱり竜は、ぐったりと首をふせていました。

病気なのでしょうか?


「おまえは、きのうの……」


人の気配を感じた竜は、目をあけました。


「だって、来てもいいって言ってくれたでしょ」


ユマの言葉を聞いて、竜は少しだけ笑いました。


「そう言えば、まだ名を聞いていなかったな」


「わたしはユマって言うの」


ユマがにっこりと笑いながら言いました。


「私はグラースだ。よく来てくれたな……ユマよ」


グラースが少し笑いました。

とても嬉しそうです。


「はいこれ。今日も持ってきたんだ」


ユマは自分の家から持ってきた袋をグラースに見せました。

やっぱり、量はまったく足りませんでしたが、ユマの心遣いが嬉しかった様です。


「ありがとう……私を訪ねてくれて」


グラースは体を起こしました。

でも、うまく力が入りません。


「グラース……もしかして病気?」


心配になったユマが、グラースに聞きました。


「病気ではない。これは村全体の問題なんだよ」


ユマには、この言葉の意味がわかりませんでした。


「私は、この村から忘れられてしまったのだよ」


ひどく悲しそうに、グラースは話します。


「村から忘れられ、私は力を失っている」


話がわからず、首をかしげるユマは、グラースに聞きました。


「どうしたらグラースは元気になるの?」


すると、グラースは考えました。

でも良いアイデアは浮かんできません。


「じゃ、ちゃっと待ってて!」


するとユマは、洞窟の入口へ走っていきました。



しばらくしてから、ユマは何かを抱えて帰ってきました。


「それは?」


グラースが聞くと、ユマは笑顔で答えました。


「雪うさぎだよ」


グラースに見せた手のひらには、小さな雪うさぎが乗っていました。


「おばさんにね、作り方を教えてもらったの」


ユマは、グラースの前に雪うさぎを置きました。

その雪うさぎのつぶらな目を見て、グラースは少し笑いました。


「こんなにも愛らしいものがあるのか?」


「うん。少しは…元気になった?」


心配そうに顔を覗き込むユマを見て、グラースは首を上げました。


「ありがとう。ユマのおかげで、少し力が戻ったようだよ」


その時のグラースの目は、今までとは違い、どこか力強い感じがしました。


「久々に飛ぼうか」


グラースは体を起こし、翼を動かしました。


「ユマ、背中に乗りなさい。空からお前の村を見よう」


「はっ…はい」


その日、白銀の世界を優雅に飛ぶ竜が、村から見えたそうです。






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