村のお祭り
ユマの両親は、雑貨屋の夫婦にユマを預け、仕事で村を出たっきり何年も帰ってきません。
成長したユマは、雑貨屋を離れ自分の家で暮らしています。
だから、今ユマは一人暮らしです。
それでも心配な雑貨屋の夫婦は、3日に一度ユマの家を訪れるのでした。
今日は、雑貨の夫婦が家に来る日。
ユマは2人のために温かいスープを作って待っていました。
コンコン。
ドアを叩く音がします。
「はーい」
ユマがドアを開けると、そこにいたのは雑貨屋の夫婦でした。
「やあユマちゃん。元気にしてたかい?」
「うん!」
おじさんの声を聞いて、ユマの表情がぱっと明るくなりました。
「こんにちは。ユマちゃん」
「おばさんこんにちは」
両親がいない今、まるでこの夫婦が親の替わりのようです。
ユマも、本物の両親のようになついていました。
「2人のために、スープを作ったよ」
「本当かい?ユマちゃんのスープはおいしいからね。嬉しいよ」
2人がテーブルの椅子に座り、ユマはスープをお皿によそいます。
おいしい。と2人はスープを飲みました。
ユマはすごく嬉しかったのか、顔が赤くなっていました。
でも、楽しい時間はすぐに過ぎていきます。
夜になりました。
この村には、夜に出かけてはいけないと言う決まりがありました。
2人は帰らなくてはなりません。
「もう帰っちゃうの?」
少し寂しそうにユマが言いました。
「今度は、もっと早くに来るね」
おばさんがユマの頭をやさしく撫でてくれました。
次の日の朝。
珍しく村は騒がしいです。
今日は、半年に一度のお祭りの日なのです。
ユマはこの日が嫌いでしかたがありませんでした。
お祭りの日は、みんなが村を回るからです。
もちろん、ユマの家にも来ます。
――嫌だなぁ……
ユマは心のなかでそう思いました。
小さな子どもたちは、みんなでユマを囃し立てます。
ユマはそれが辛かったのです。
――そうだ。今日はあの場所に行こう
するとユマはパジャマから服に着替えました。
そして大きな袋にパンと飲み物を入れ、コートを着てどこかへ出かけていきました。
雪の積もった山道を歩きます。
それは思った以上にしんどくて、ユマは汗をかきました。
でも、目的の場所はもうすぐです。
険しい山道を登り、山の縁の崖につきました。
そこには、周りから飛び出した場所があります。
ユマはそこから見える景色が大好きでした。
「やっとついた……」
暑くなった体が、すうっと冷えていきます。
村の近くある大きな湖が、きらきらと光ってとてもキレイです。
その時、ユマは横を向きました。
そこには大きな洞窟がありました。
――こんな洞窟あったかな?
雪が溶けて、ふさがっていた入口が現れたのです。
――中に入ってみようかな……?
見たことのない洞窟を見て、ユマは入りたくなりました。
でも、大丈夫なのでしょうか?
――座ってるだけじゃつまらないし、行こう
すると、ユマは洞窟の奥へと入っていきました。