Defect productー欠陥品ー
私は欠陥品。
足りない物があるの――
“す”“き”
“ス”“キ”
“好き”
私は二文字を知らない。
思っても言葉に出来ない……
その言葉が言えない、書けない。
好きな人が出来たのに、この想いを伝えられない。
だから、いつも見ているだけだった。
毎日、毎日、見ているだけだった。
そんなある日、彼は私に話しかけてくれた。
「君はどこが欠けてるの?……どこが欠陥品なの?」
私は何て言っていいのか分からなかった。
私が黙っていると、彼が悲しそうに笑った。
「……俺はここが足りない」
そう言って、彼は胸を指差した。
「病気?」
「まあ、そんなもん」
「大変だね……」
「でも、君が傍にいてくれたら満たされる」
「どういう事?」
「……人は皆、欠陥品。だけど、補う為に補える為に誰かが存在してるんだ。それは家族かも知れないし、恋人や友達、近所の人かもしれない。人によって違うんだ」
気が付くと私は彼の腕の中に居た。
「君は俺の事をどう思っているのかは分からない。だけど、俺はいつでもここに居るから――」
「……うん」
言葉よりも確かなものがあった。
私はやっぱり彼が好きなんだ。
勇気を出して言ってみようかな。
「私は、あなたが です」
END.