第三十九幕 伝説の陰陽大将軍再び…命を掛けた黄泉御前との一大決戦!
極魔殿の天守閣に突如現れた冥府十神の一人である黄泉御前の出現により、事態は急変を迎えたのだが…何としてでも夜叉髑髏の暴動を阻止しようと正親たちはあらゆる攻撃で動きを止めようとしても全く効果はなかった…。
それを嘲笑うかの如く…不敵な笑みを浮かべながら正親たちを見下す黄泉御前は金比羅神社に奉納されている天下五神剣の一つである太陽金剛剣を盗み出そうと画策していたのである。
だが、正親たちは夜叉髑髏との戦いの真っ最中で…黄泉御前の野望を阻止する事すら出来なかったが…一刻も早く決着をつけようと術を施して夜叉髑髏の動きを封じようとしていた。
しかし、黄泉御前は正親の術を封じ込め…更に闇古神道術を施して正親たちの動きを封じ込めていったのであった。
「か、身体が…全然動かねぇ…。」
「さては黄泉御前め…闇古神道術で動きを封じやがったな…。」
『ひゃっひゃっ…。どうかね、我が闇古神道術の威力は…。一度闇古神道術に掛かれば最後…二度と解かれる事は不可能なのだよ。』
「くそっ、何としてでも黄泉御前の術を解かなければ…。」
「む、無理だ…。黄泉御前の闇古神道術はそう簡単に解けるもんじゃないぞ。奴を倒さない限り…俺たちはこの術で命を奪われてしまうんだぞ。」
「こんな時に、晴明様が助けに来てくれたら…。」
黄泉御前の闇古神道術によって動きを封じられた正親たちは…全く手も足も出ない状況に追い込まれてしまうが、それでも正親たちは晴明が必ず助けてくれる事を信じて疑わなかった。
『あんた達がどう足掻こうとも…その呪縛から逃れる事は出来ないんだよ。さて、そろそろ総仕上げと参ろうかね…。』
黄泉御前が夜叉髑髏に正親たちを抹殺するよう差し向け…一気に全滅させようとしたその時だった。
「そこまでだ、黄泉御前…。お前の悪事は、この安倍晴明が既に見通しているんだ。潔く観念するんだな…。」
そこに現れたのは、地獄界から駆けつけた晴明と八咫烏が姿を見せ…黄泉御前の闇古神道術を陰陽術で打ち破り、正親たちの呪縛を解放していったのである。
「晴明…。」
「兄弟子、怪我の方は御座いませんでしたか…。」
「ああ…我々の方は大丈夫だ。それよりも、黄泉御前は金比羅神社に安置されている天下五神剣の一つである太陽金剛剣を盗みだそうとしているんだ。」
「やはりそうでしたか…。私の推理通り、黄泉御前は事前から金比羅神社に安置されている太陽金剛剣を盗み出し…更にはこの讃岐国の何処かに眠る秘宝・玉蛙を奪おうとしているに違いありません。」
「何だと…。黄泉御前め、そんな事まで考えていたのか…。」
「兄弟子、あとは私に任せて頂けませんか…。」
晴明は黄泉御前との対決を正親に懇願し、既に体力を消耗している仲間にこれ以上戦わせるのは危険だと判断した上で…全ての責任を負う形にすると正親に話していったのだった。
「分かった…。だが、気をつけろよ…。黄泉御前は闇古神道術の使い手故…十分注意して戦うんだぞ。」
「承知しました…。」
その後晴明は、黄泉御前の前まで歩み寄り…地獄界に封印されていた夜叉髑髏を脱獄させた経緯や金比羅神社に安置されている太陽金剛剣を盗みだそうとする窃盗未遂の件について問い詰めようとしていた。
「黄泉御前…お前が地獄界に封印されていた夜叉髑髏を逃がし、更には金比羅神社に安置されている太陽金剛剣を盗もうとしている事は既に明白である。潔く罪を認めるんだな…。」
『おや…誰かと思えば安倍晴明じゃないか。まさかこんな所で会うとは…。だが、アタシが地獄界から夜叉髑髏を逃がしたと言う証拠がどこにも無いじゃないか…。さあ、その証拠とやらを見せてもらおうじゃないか…。』
「この期に及んでまだ罪を認めないと言うのか…。ならば、仕方があるまい…。お前が夜叉髑髏を逃がした岩牢の近くに、こんな物が見つけだんだ…。」
晴明が黄泉御前に見せた動かぬ証拠…それは、黄泉御前が逃亡の際に落としていった〔髑髏の根付け〕だった。
しかも、その髑髏の根付けには本来印籠とか財布に付いている物なのだが…黄泉御前はそれに気付かず、夜叉髑髏を逃がす事ばかりに気を取られ…岩牢の前に落としていったのだと晴明は事の真相を明らかにしていったのであった。
『その根付けがアタシの物だと言うのかい…。そんな根付けなんか何処にだってある代物なんだ。アタシの物だと言う証拠にはならないんだよ…。』
「残念だったな…黄泉御前。この髑髏の根付けは普通の根付けとは違って、妖怪の骨で出来た特別の代物なんだ。普通の根付けは珊瑚とか赤松の木から作られるのが一般的で、そう同じ物が二つとも作れる筈が無いんだからな…。それに、この髑髏の根付けから僅かながら蒐気を感じるんだ。これだけ証拠が揃えば不足は無い筈…。悪党なら悪党らしく、すっかり泥を吐いてしまえ…。」
晴明は夜叉髑髏を地獄界から逃がした黄泉御前の罪状を全て話し、これで黄泉御前は罪を認めるかと思われていたが…当の本人は悪びれた様子も無く、むしろ黄泉御前は半ば逆切れ的な態度で晴明に反発していったのである。
『そこまで見抜いていたとは…さすがは稀代の陰陽師と呼ばれていた男と言いたいところだけど、だがこれ以上邪魔をさせる訳にはいかないんでねぇ…。申し訳ないけど、此処に居る連中諸とも始末してあげようかね…。』
「そうはさせないぜ…黄泉御前。お前が罪を認めないと言うのであれば、地獄の裁判官・閻魔大王様に成り代わり…この安倍晴明がてめぇに神の裁きを下す故、左様心得るがいい。」
そう言って、晴明は懐から閻魔大王より授かった〔閻魔の代紋〕を黄泉御前の前に翳し…これで事件が全て解決したかに見えたが、それでも黄泉御前は諦めず最後まで抵抗し続け…夜叉髑髏に命じて晴明を抹殺させようとしていた。
『もはやこれ以上話しても無駄な様だね…。さあ…夜叉髑髏よ。そこに居る連中を一人残らず踏み潰しておしまい…。』
すると夜叉髑髏は、晴明たちを踏み潰して全滅させようと攻撃を仕掛けていくが…咄嗟の判断で晴明は陰陽術で正親たちを完全防御していったのである。
「兄弟子っ…。」
「晴明、我々の事は心配するな…。お前は夜叉髑髏を倒す事に専念するんだ。」
「しかし…。」
「いいか、夜叉髑髏を倒せるのはお前しかいないんだ…。それと同時に黄泉御前を倒さなければ、太陽金剛剣を奪われてしまうんだぞ。」
そして晴明は、ある決断を下す事になるのであった。
「兄弟子、もう一度〔陰陽大将軍〕に変身しても構いませんか…。」
「お前、あの時の事を忘れた訳じゃ…。」
「心配には及びません…。あの時みたいに、大暴走する様な真似は…二度としないつもりでいます。」
「…そこまで言うのであれば、思う存分暴れるがいい。世の為人の為…人類を守るのが我々陰陽師の役目である事を絶対に忘れるなよ…。」
「分かってます…。私は今までの自分とは違うと言う所を見せてやりますよ。」
晴明は懐から天魔変化秘傳乃書を取り出し…右手で印を結びながら術を唱え、再び陰陽大将軍に変身して夜叉髑髏との最終決戦を迎えようとしていた。
「さて、そろそろ決着をつけるとしますか…。」
陰陽大将軍に変身した晴明は…迫り来る夜叉髑髏の攻撃をかわしながら一進一退の攻防が続き、夜叉髑髏が口から毒煙を吐いて晴明の動きを封じようとするが…晴明は持っていた伸縮自在の芭蕉扇で夜叉髑髏の毒煙を遠くへ飛ばし…その隙に正親たちを安全な場所へ移動させ、再び夜叉髑髏との対決を再開するのであった。
「兄弟子たちを安全な場所へ移動させたのはいいが、これ以上奴を野放しにする訳にはいかないな…。仕方がない、陰陽術で奴の動きを封じ込め…奴を再び封神札を使って封印するしかなさそうだな。」
そう言って、晴明は夜叉髑髏の動きを予想しながら絶好の機会を狙い…陰陽術で動きを封じ込めるのと同時に夜叉髑髏の攻撃を封印していくが、そう簡単に一筋縄でいく筈もなく…苦戦を強いられる場面も多々見られるも、最終的には夜叉髑髏を何とか封印する事に成功していったのである。
「さて、あとはお前だけだぞ…黄泉御前。」
『うぐぐ…。よくも夜叉髑髏を封印しおったな。だが、夜叉髑髏を封印したところで…太陽金剛剣を奪うまでは最後まで諦める訳にはいかないんだよ。』
それを聞いた晴明は、太陽金剛剣を奪われまいと黄泉御前を金比羅神社に近付けない為に行く手を阻んでいこうとしたが…悪辣極まりない黄泉御前は闇古神道術で完全に動きを封じようとするも、晴明は咄嗟に黄泉御前の攻撃をかわしながら陰陽術を繰り出していったのであった。
「またしても闇古神道術で封印しようとしやがるか…。だが、そんな姑息な術でこの安倍晴明を倒せるとでも思ったら大間違いだぞ…。」
『お、おのれ…。ちょこまかちょこまかと…鼠みたいに動き回るのは目障りなんだよ。もう一度闇古神道術で…貴様を冥界へ送ってやろうかねぇ。』
「何度やっても無駄だと言った筈だ…黄泉御前。陰陽大将軍に変身した以上…もはやお前の術など通用しないんだ。潔く降参を認めるんだな…。」
『誰が降参するもんかね…。幾ら陰陽大将軍に変身したところで、戦況は変わらないんだ…。こうなったら、取って置きの秘術を見せてやろうかねぇ…。』
すると黄泉御前は、黒水晶を翳しながら呪文を唱え…晴明の術を封じ込めようとするが、晴明は持っていた短刀で黄泉御前の左腕を目掛けて投げつけ…その衝撃で持っていた黒水晶を落としてしまい、これで戦いは終息を迎えるかに見えたのだが…黄泉御前は晴明にこう言い放ったのである。
『これでは埒が飽かないから、最終決戦は金比羅神社で決着をつけようじゃないか…。その時こそが、安倍晴明…あんたの最後だから覚悟するんだね。』
黄泉御前は捨て台詞を吐きながらその場から姿を消していったのだったが…晴明にとっては何とも不甲斐無い結果に終わってしまった事を後悔せざるを得なかったのだ。
「くっ、あと一歩のところで黄泉御前を逃がすとは…何たる失態。だが、この次は必ず黄泉御前を捕らえて成敗せねばならぬな…。」
それからしばらくして、晴明は正親に黄泉御前を取り逃がした事を詫び…まだ機会は幾らでもあるからあまり落ち込むなと晴明を宥めていったのである。
「晴明、諦めるのはまだ早いぞ…。黄泉御前が逃げたところで、まだ太陽金剛剣を奪われた訳ではないのだからな…。」
「しかし兄弟子、奴は太陽金剛剣を奪うだけではなく…もう一つの宝物・十二神将変化の巻物を狙っているのですよ。」
「心配するな…。そう簡単に十二神将変化の巻物を奪われる事は先ずあり得ないからな。」
「どう言う事なのですか…。あの巻物が絶対に奪われないと言う確たる証拠があるのですか。」
すると正親は、十二神将変化の巻物にはある仕掛けが施されており…普通の人間が巻物に手を触れると一瞬にして砂の様に崩れ…逆に魔物が巻物に手を触れると石の様に固くなってしまい元には戻るのは不可能と言うのだ。
つまり、正統の持ち主だけが十二神将変化の巻物を触れる事が許される唯一の方法だと正親は説明するのであった…。
「そうだったんですか…。あの巻物にはそんな仕掛けがあったとは…。ですが、黄泉御前にもし十二神将変化の巻物を奪われるような事がありましたら…。」
「大丈夫だ…。十二神将変化の巻物が入った宝箱には…特別な鍵が掛かっていて、その鍵が無ければ開く事が出来ない仕組みになっている。だが、その鍵が何処にあるのかも未だに不明なんだ…。」
「その鍵さえ見つかれば、十二神将変化の巻物を手に入れる事が出来るのですね…。」
「ああ…。それよりも、黄泉御前が金比羅神社へ逃げたとなれば…事は一刻を争う事になるやも知れぬ。それに、この地に眠るとされる玉蛙も奪われる可能性もある…。急いで金比羅神社へ向かうぞ。」
と、その時…涼汰が何か不穏な空気を察知して金比羅神社へ行くのを少し待って欲しいと正親に話していったのだった。
「正親様、金比羅神社へ行くのをもう少し待って貰えませんか…。」
「涼汰、何か変わった様子でも察知したのか…。」
「はい…。さっきから何やら不穏な空気を感じ…とてつもない恐ろしい蒐氣が充満しているみたいなのです。」
「そう言えば…先ほどからもの凄い蒐氣が漂っているみたいだが、こいつはどうやら一波乱起きそうな予感がして来そうだぞ。」
「兄弟子、まさか…。」
「そのまさかだ…。いいか、決して誰一人死ぬんじゃないぞ…。」
黄泉御前との戦いで、あと一歩と言うところで逃してしまい…落胆する晴明たちの前に再び迫り来る見えない敵が襲来しようとしていた。
このままでは太陽金剛剣は黄泉御前に奪われてしまうのではないかと焦りの色を見せるのだが、果たして晴明たちは無事この状況から脱する事が出来るのであろうか…。
そして、晴明たちを襲う見えない敵の正体とは…。
第四十話に続く…。




