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第二話

今回はちょっと残酷表現があります。念のため。

 ふむん、と息をつきつつも現在の自分の状態を確認するために腕輪からディスプレイを出させる。そして「(自分のステータスを表示しろ)」と念じていると本当にそうなった。


 「(一応HPとMPのゲージは表示されてるな。ま、こっちはこれでいいとして、状態確認…『健康』今のところこれだけか。)」


 他にも特性(『魔能値:最高』『得意属性:全て』などなど、)や簡単なプロフィールも書いてあった。自分しか見ないのに自分のプロフィール確認してどうするんだとセルフツッコミをしつつも、とりあえずまだ地図も購入していないので適当に歩くことにする。ちなみに自分は地図がなくとも目印さえあれば初めての土地でもそうそう迷うことなく歩ける人間である。


 「(ひとまずあの大岩の辺りまで歩くか。)」


 脳内で勝手にそう決めて歩き始める。ちなみに現在の格好は白に黒のドクロがプリントされた毛糸のカーディガンに、紺色のタートルネックと藍色のジーンズを穿いている。足は室内だったため靴は履いていないが、冬用の厚手の黒い靴下を履いているので少しはましだった。




 30分程歩いている(ちなみに時間は腕輪で調べた)と、どこからともなく妙な気配を感じるようになった。方向としては自分の風下で、ほぼ後ろ。数は分からないが範囲は分かるのでそれによるとどうやら一体から三体程度らしい。


 人に会う前に自分の能力を確認しておいた方がいいかなーと考えていたところだったので、まぁ丁度いいかなと思い後ろを振り返る。が、その瞬間に振り向かなかった方が良かったかなーと少し後悔した。


 「しょっぱなから何このグロテスクな生き物。」


 数は一体だけだったが、かなり巨大でなんかわけのわからない生き物だった。基本はピンク色(ただしミミズのような生っぽい感じ)の半透明なナメクジみたいで、そこからクジラのようなひれを何十対も生やし、頭に当たる部分にはカブトムシみたいな角と兜がキッチリとはまっている。(もしかしたら融合してるのかもしれない)尾の方は何故か二股になっており、それぞれ細い尻尾が生えている。


 見れば見るほど気持ちの悪い生き物だった。


 「(ん~…こっちに来る前にデウスは『剣と魔法とモンスターのファンタジー』って言ってたけど、確かにあれはモンスターっぽいけど、なんか色々どうすればいいんだろ。)」


 正直な話、出来れば今すぐにでもこの場を去りたい。しかしそんなことをして本当に大丈夫なのかとも思う。だって何となくだけどあいつこっち見てるし、見るからに隙窺ってるし。


 「やっぱりここは「たたかう」なのかなー?コマンド選択的な意味で。」


 そう言って身構えたとたん、想像以上の速さでカブトナメクジ(今考えた)はこちらに向かってきた。かなりの巨体でスピードもあるため一瞬焦ったが、言い方を変えれば直線的な動きしかしていないということに気づいたので冷静にそこから離れる。


 案の定真っ直ぐにそいつは進んだが、一定のところまで行くと動きを止めてこちらに向き直る。ちなみにカブトナメクジが私の傍を通り過ぎる際、とっさに嫌な予感がしたためしゃがんだら頭上をあの細い尻尾がとんでいった。やっぱりというかなんというか、あの尻尾も武器らしい。


 「(しかし考えてみたら私、この世界の魔法知らないから、まだ魔法を使うことはできないなぁ。となると記憶にあるなんかの技使って撃退するしかないか…?)」


 そこで頭の中で『想像の具象化』という能力を一つ創った。これは物はもちろん、技や現象などを現実でも使えるようにするという至ってシンプルなものである。


 そうしているとやがてカブトナメクジが再びこちらに突進してきた。頭を下げて兜の角を真っ直ぐこちらに向けている。


 「…っ」


 忘れていた、私はそもそも生き物を殺したことがない。そんな人間が、こんなやつを「殺せる」のか――?


 「(…でも、迷ってたら殺される)ええい、こんちくしょう!!」


 無理やり自分を奮起させ、その考えを振り切る。既にカブトナメクジの巨体は数メートル目の前に来ていた。私はとっさに浮かんできた某三国志最強武将の必殺技の構えをする。


 「おおおおおっ――――最強の武を見せてやる!!」


 武器は無いので、そのまま右手を前に突き出すようにした。だがそれで十分だったらしく、私の手からは赤い稲妻をまとった黒いエネルギーが放出され、カブトナメクジと真正面から衝突した。


 黒いエネルギーはそのままカブトナメクジの角を割り、兜を突き抜け、やわらかい肉を貫通した。


 どうやらそれで絶命した様子ではあったが、流石にアレだけの巨体が急に止まることはなく、結局私はまた脇によけることになった。


 そして改めて自分がやったことを冷静に見てみる。あの技は一方向にしか攻撃できないが、範囲や距離はそれなりのものがあるし、威力は最強を冠するのにふさわしいものだ。頭部が無くなり、貫通した部分が潰れてへこんでいる様子を見ていても、すぐにそれが分かる。


 「(…私は、これだけのことが出来るようになったのか。)」


 頭ではそのことを理解できたが、心理的な整理がつくのは当分先になりそうだなと人ごとのように思った。


 しばらくそうやって立ちすくんでいたが、やがて大勢の人が走って来るような音が聞こえてきた。何事かと思ってそちらへ顔を向けると、中世のプレートアーマーやチェインメイルのような鎧を身にまとった人間やnot人間がこちらへ迫ってきている。どこかの国の騎士団の様なものだろうか?と思っていたら、その騎士団らしき人たちはすぐに私が倒したモンスターらしきあれの周囲を取り囲んだ。いつ動き出してもいいように、槍を内側に向けている。


 「失礼、そこのもの。このグランドールを倒したのはあなたか?」


 どうやら私は声を掛けられたらしいので、声が聞こえた方に振り返る。振り返った直後に「(今私変な顔してるだろうなー。)」と思ったが、そんなこといちいち気にしているだけの時間がなかった。


 そしてそこにいたのは、何とも私好みの人外オッサンだった。

彩音さんはどこか殺伐としていますが、たとえ化け物相手でも殺傷ごとは嫌がるような人です。しかし理性的でもあるのでどうしてもそうせざるを得ない時はそうします。あとオタクでそこはかとなく腐っています。(好みは上記のとおり)


途中に出てきた必殺技はまぁ…多分伝わる人には伝わったと思いますが、某無双アクションゲーの黒いGの無双乱舞です。最初見た時は本気で「ええぇぇぇ!?」ってなりましたねありゃ。


2012/02/18:ちょっと最後の方修正しました。何か私の知ってる話と殆ど終わり方が一緒だったのが気に入らなかったので。

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