第一話
前回がちょっと中途半端な終わり方だったなーとか思いつつ。
一話目です。
「(……いやいやいや、マジでここどこよ?私好みのものすごく綺麗な場所だけど。)」
あたりを見回してみるとどうやら単なる極彩色などではなく。それなりに規則性のある並びをした光の玉の集合体のようだった。あるものはまばゆい虹色の光や透明感のある単色の光を放っていると思えば、あるものはゆらゆらと不安定な弱い光を放っている。気になったので真上を見てみると、実際に体験した事はないが海中から空を見上げたようなあんな感じの光が無数に降ってきていた。
『――この場所が気に入りでもしたか?』
「ぬおっ!?」
突然妙に威圧感のある声が聞こえ、思わず奇声を上げる。だが声の聞こえてきた方向はかなりはっきりしていたため迷わずそちらを向く。
そこにいたのは、先ほどまでペンタブを使ってデジタルで描いていたオリキャラだった。
「……え?なんで?」
『お前が、私の創造主か。』
その言葉に思わず身体がすくんだ。というのも、先ほどまで二次元の存在だった現在三次元にいるこの目の前の人物は確かにオリキャラというのもあり、私が創ったキャラクターだった。だがその設定に問題がある。
「ちょい待て、確かに私は貴方の創造主だとは思うけど、あなたはまさか、本当に私が設定した通りの人物…というか、神、なのか?だとしたら私は今何をやったんだ?」
『フム、まずそこから説明せねばならないか。』
そこでその私が作りだしてしまった神――デウス・ミラビリス・ポンティアは、その美しいシルバーブロンドの髪を空間にたゆたわせながら色々話してくれた。そしてその結論をまとめさせてもらうと。
・彼は本当にたった今私が生み出した神様である。
・たまたま新しい神様が生まれる瞬間に私が彼を描いていたため、その姿や設定を踏襲することになった。
・ので私が彼の創造主ということになる。
・私がこの場にいるのは神様誕生の余波をもろに食らったため。
「……完全にとばっちりじゃねーか?それ…。」
『お前には申し訳ないが、そういうことだろうな。ああ言っておくが元の世界に戻ることはもうできないぞ。この周りにある光の球はそれぞれ世界を内包しているが、数が多すぎてお前がどこの人間だったかという特定すら出来んからな。』
「何…だと…?」
それってつまり、元の世界だと私は突然行方不明になってしまってるってこと?
『それならまだいいが、最悪存在ごと最初からなかったことになっている。』
何だそのファンタジーにありがちな展開!!じゃあ私はこれからどうすればいいんだ!!
『まぁ案ずるな、そこはお約束的展開とやらでオマケ付きでどこかの世界に転生させてやる。』
「わーホントにお約束的展開ですねそれ、というかさっきから気になってたんですがなんで生まれたばかりなのにそんないろんな言葉知ってるんですか。」
『お前の記憶を勝手に覗いた。』
何処まで覗いたのかは気になるところだが、まぁ一部を除いて大体人に知られてどうこうという記憶はないはずなのでそこはスルーしておくことにした。
「…ちなみに、どんな世界に転生させる予定なんですか?」
『そうだな…少なくとも、科学はそれほど進歩していないな。せいぜいお前たちの世界基準で少し遅れているといった程度だ。その変わりに魔法が発達している。要は剣と魔法とモンスターのファンタジーだと思ってくれればいい。』
「なるほど、大変わかりやすい説明をありがとうございました。それで…おまけって、どんな?」
正直一番気になるところではある。下手なおまけ貰ってもいらないし、逆に扱いきれなくて自滅しかねないし。
『ひとまずその世界における魔法に関する能力は最高レベルまで引き上げておく。言葉は自動で翻訳できるようにしておくし、肉体強化としてある程度の身体能力向上はしておこう。』
「もうそれだけしてくれたら充分です。何かそれだけあれば充分チート出来ると思います。」
『まだあるぞ。命までは無理だが、ある程度なら能力を作ることができる力もつけておく。それを使えば自分の記憶にある漫画やゲームの能力を再現することもできるだろう。それとこれだ。』
手渡しで直接持たされたものは少し大ぶりな、それでいて繊細な模様の施された淡い水色の腕輪だった。試しに嵌めてみると左手首にぴったりと落ち着き、手の甲側を上にするとアメジストのような円盤状の石が上に来た。
「これは…?」
『言うなればpip-boy3000の様なものだと思えば良い。お前の記憶にもそんなに詳しい記憶がなかったから所々好きにいじったが、容量制限のない収納機能はあるし、その世界の地図や書物の情報も勝手にダビングされる。自分の健康状態を確認することもできるし、他にも様々な機能があるから、向こうに行ってから確認すれば良い。』
「それ以前にどうやったらそんな機能使えるんですか、お約束なら念じればいい気もしますけど――」
とか思いつつ「(なんか画面出ろ)」と念じていると、本当に水晶の表面みたいなディスプレイが空中に出てきて現在の私の持ち物が表示された。
『お前の望み通りのお約束だが……気に入らなかったか?』
「…いえ、何かもう充分です、お腹いっぱいです。」
本当に何かもう、色々お約束過ぎる上に凄すぎる……。そもそもこうやって異世界に転生するってだけでも個人的にはお腹いっぱいなのに。
『さて、私からはこんなところだな。そろそろ転生させたいが、構わないか?』
「あ、はい。でもどっちにしろ私にそんな拒否権無い気がするんですけど。」
『まあそうなんだがな。』
まてやコラ。
『案ずるな。そう簡単なことでは死なないようにしておいたし、どうやら喜ばしいフラグなんぞもあちこちに見えるぞ。そんなに気張ることもないだろうから、己のやりたいようにやればいい。仮にもお前は神を創造した者なのだからな。』
「神様がフラグとか言うな、なんかイヤだ。でもそうだな…わかった、やれるだけやってみる。」
『そうか。では目を瞑れ、送るぞ。』
言われたとおりに目を瞑ると、すぐに自分のまわりに光が満ち始めたのが分かった。やがてそれが段々強くなり、それが突然フッと消えた。
そして目を開けると、自分は草原の中に立っていた。
なんか予想以上に長くなってしまった感がありますが、やっとトリップです。
2012/02/23 誤字修正