第十一話
さぼりました(ちょっ
あと前回と場面繋がってません。
「なんてこったい。」
なぜ私がしょっぱなからこんな発言をしているかというと、それはこの世界の時間の概念が私の想像以上に酷いものだったからだ。
朝食を食べた後、フランシスカ王様は即行で私とイリアスさんを城から追い出した。すでにイリアスさんの荷物をまとめた馬車がその放り出されたところにあり、昨日の長期休暇宣言が本当だったのだと改めて思い知らされた。仕方なく私とイリアスさんはその馬車に乗り込み、彼の屋敷に着くまでの時間をこの世界に関する授業時間に割り当てた。
そこで私は早速一番気になっていたこと――この世界の日付についてイリアスさんに尋ねた。
「とりあえず創世歴はちゃんと理解しようとすると長くなりそうなので、一年と一月は何日だとか、一日は何時間だとか、まずそこからお願いします。ついでに言うと私のことは名前で呼び捨てでいいです。」
「創世歴はそれほど長い話にはならないのだが…、まぁ、確かにきちんと理解しようと思うと長くなるな。ならそこから話すか…あ、アヤネ……殿。」
「……いや別にいいですけど、それでも。」
まぁ、下手に他人行儀で呼ばれるよりはずっとましなのでよしとする。
それでひとまず一日が何時間なのかというところから始まったのだが、驚いたことにこの世界は一日が48時間という計算になっているらしい。言われてみれば私の泊まった客室にかかっていた時計は妙に区切りが細かかったような気がする。この時点でまず「この世界の一年=元の世界の二年」という方式が成り立ってしまった。
次に一月が何日かなのだが、これも元の世界と違っておおよそ57~62日、つまり元の世界の二月が大体この世界の一月なのである。幸い月の数は元の世界と同じ12ヶ月なのだが、これで「この世界の一年=元の世界の四年」方式がなりたってしまった。それで冒頭の台詞である。イリアスさんが話し終わってしばらく黙っていた後に、おそらく無表情でそんなことを言ったからかイリアスさんは訝しげにしている。(どうでもいいがイリアスさんと私は対面式に座っている。閑話休題。)
「アヤネ殿?急にどうされた?」
「いえ、こっちの話です。それよりどうしましょうイリアスさん、私この世界の一年換算だとあと十五~十七年ぐらいしか生きれないかもしれません。」
「…?昨日の話では、あなたはあと七十年は生きれるのではないのですか?」
「一日の時間と月の日数換算がこっちとあっちで全然違いました。私の世界ではこっちの半日が一日で、一月が二月なんです。」
「詳しくはわからないが…その、異世界とこの世界では、こちらの方が一年が長いのか?」
「そういうことです。例えばイリアスさんが私の世界に行ったら……七百二十歳になりますね。」
「それほど違うのか!?」
「それだけ違うんです。でもたぶんこれから先、まだまだ驚くことが出てきそうですから今はそんなに暴れませんけど。」
…急に思いついたが、後であの神様と念話できるかどうか能力創ってためしてみるか。なんだかんだで元凶はあれなんだし。あれに話を聞いたらまだ他にもわかりそうなことがある気がするし。
「うわ、いつの間にか結構静かなところまで来てる。」
「ん、私の屋敷は国の東端にあってな。この国の東側はまだそれほど民衆がいるわけでもないから他の所に比べると閑静だ。」
たしかに私がこの国に入ってきたのは大体西側で、そっちのほうは結構民家や商店がたくさんあった。それに比べるとこのあたりは民家が少なく、さながら昔の田園地帯のような感じで広い土地に一つの民家というのが普通のようだった。
「(にしたって平屋造りの家が多いような……まるっきり富○の平野部と同じじゃないか。これで田んぼの仕事をしているのが人間だったら完璧だったのに。)」
残念ながら畑仕事をしているのは牛とか馬っぽい見てくれの人達ばかりだった。これはこれでなかなか良いとは思ったけども。
「イリアス様、そろそろお屋敷に到着いたします。」
「ああ、ありがとう。」
どうやらいつの間にかそんな近くまで来ていたらしい、窓から少し頭を出してそれらしき建物を探してみる。(案の定イリアスさんに叱られた。)
進行方向に、やたらとでかい洋館造りが見えた。
いよいよイリアスさんの家にお邪魔します。