第九話
その日はフランシスカ王様がささやか(本人談)な宴を開き、改めて私を国客として歓迎した。酒もすすまれたが私は未成年なのでそれを理由に断ると、「まだ未成年なのか!?」と異様に驚かれた。それは私が老け顔だと言いたいのか?まぁ私がそんなのも手伝ってか宴の一次会はわりと早めに終わり、一部の酒飲みの人たちの二次会参加者は除いてみんな早々と自分に割り当てられた部屋に戻っていった。
「(でも意外だった…イリアスさん完璧なまでのザルだ。)」
途中からこの国の重臣たちによる飲み比べが始まったのだが、イリアスさんは酒をまるで水のようにがばがば飲んでいたにもかかわらず、ものの見事に最後まで残ったのである。隣にいたメイドさんに聞いてみると、どうやらこの光景は宴のたびに見られるらしく、この国ではイリアスさんの右に出るような酒飲みはいないともっぱらの評判らしい。確かにあれではだれも勝てない気がする。
「(私も割と酒は飲める体質の筈だけど、あそこまではできないだろうなー…。そういえば、この国ってお風呂に入る習慣とかあるのかな?)」
ちなみに酒は飲める云々は以前学校でやったアルコールパッチテストの結果によるものである。それは別として、正直今日は風呂に入りたい。普段疲れている時はあまりちゃんと入らないのだが、今日みたいにどこかが汚れている時はやっぱりそれをちゃんと落としてから寝たいというのが日本人の性だと思うし。
あてがわれた部屋に戻り、一応あちこち見てみたが頑張ってもシャワーっぽいものがあるだけだった。さすがにこれはちょっと味気ない。
「…そうだ。なければ作ればいいんだ。」
幸いにも、今の私にはそれが出来るだけの力がある
「(広さは十分あるからこのまま箱っぽいのを作ればいいとして…大きさは自分ちの湯船ぐらいあれば十分か?)」
念のためシャワーのある部屋全体に魔力遮断の結界のようなものを展開しておき(これは某結界漫画のあれを応用した)、『想像の具象化』でまずそれっぽいものを空間に出現させる。
「……うん、判ってはいたけどこれはないな。」
まぁ最初は単なる箱が出てくるだけで、正直見た目的にも実用性的にもしょうもないっちゃしょうもない。そこでそれを基盤として頭の中で少しずつそれをいじっていく。
「(内側は石にして、お湯が流れやすいように少し傾斜をつけておくか。外側はどうするかな…外側も石でいいか、少し背もたれっぽくもしたいから短辺の側面に傾斜を付けて……。)」
そんな感じであれこれイメージしていくと、だんだんそれっぽくなってきたのでそれを一息に具象化させる。
ガンッ
「おぅわっ!!」
予想以上にすごい音がしたので思わず奇声を上げる。これヘタしたら外に聞こえてるんじゃないか……?
「(……考えないでおこう。)」
それに今は何よりも風呂に入りたい、湯船の方を見てみるとなかなかイイ感じに仕上がっていたので、さっそく中にお湯を満たして入ってみた。大変気持ち良かったです、ハイ。それから腕輪の中にやっぱりいつの間にか入ってた寝巻き用のスウェット上下を身に着け、ふかふかのベッドでぐっすり寝た。
翌日、いつも通り日の昇らない時間に起きたのにベッドの上は知らない天井で、一瞬何が何だか分からずに少し混乱した。
「(……そうだ私、異世界に来ちゃったんだっけ。)」
寝起きで少しボーっとした頭で、そのことを思い出す。それを改めて自覚すると、少し目の奥が熱くなった。
「……戻れたら、良いなぁ。当分はいいけども。」
正直この状況が辛くないといったら嘘になる、仲の良かった友達や家族にも会えないし、ネットサーフィンすることもデジタルで絵を描くこともできない。何よりイラストレーターになるという夢だってもう叶わないものになってしまった。しかし今はまだイリアスさんやこの世界のことをもう少し知りたいというのが勝っている。第一私はこの世界でもう命を奪ってしまっていて、今仮に元の世界に戻ってもそのことが後を引いて生きにくくなりそうだ。
「……やめよ、しばらくこのことは考えないでおこう。」
結局その問題は後回しにし、私は体を起こして軽く顔を洗い、昨日と同じ服に着替えた。そして少し気になることがあったので腕輪を見てみることにした。
「(頭の中でイメージすればいいから…まずは『城のMAP表示』、おお出てきた出てきた。)」
そこには私が昨日通ってきた道がきっちりマッピングされており、現在地の辺りには白い丸が写っている。おそらくこれが私だろう。次に『現在の日時』とイメージすると、これはなぜか普通に表示されて「創世歴1003452年10月42日」と表示された。
「(今日イリアスさんに詳しいところ聞いておかないと、下手したら私の世界の一年=この世界の半年ってことになりかねないなこれは。)」
次に『現在の所有物』を見てみると、自室に会ったものはほとんど入っているうえにオマケなのか何なのか色々なゲームや漫画の回復薬と武器が入れられていた。所有数が【∞】となっているのが何だか憎たらしい。ありがたいから良いけども。
「(そういえば、武器があっても使い方が分からなかったら意味がないな。)」
出来れば使いたくはないが、この世界に来ていきなりあんなことがあった世界だ、何が起こってもおかしくはない。そこで新しく『武器・兵器の知識DL』という能力を作っておいた。新しい武器や兵器を持った時、即座にそれの使い方が脳内に表示されるようにしたものだ。DLと言っている辺り、自分がどれだけデジタル人間だったかが思い知らされたような気がした。
最後に『現在の自分のステータス』を表示させると、そこには昨日と同じように自分の現在の状態が表示されていたが、一か所新しい項目が出来ていた。
「(新しく『能力』が追加されてる…。)」
一応見てみるとそこには私が今まで追加してきた能力が書いてあり、どうやらここを見れば今まで自分がどんな能力を作ってきたかが分かるようになっているらしかった。
「アヤネさま、王からご朝食のお誘いが来ております。お目覚めでしたら同行お願いします。」
急にノックをされてそう言われたので、私は「起きてまーす」と言いベットから立ち上がった。履物はあたらしいものが用意されていたので遠慮なくそれを履き、扉を開けていた赤髪のメイドさんについていって王様のところに行くことにした。
やっぱりちょっとしんどくなってきました、というか話がぜんぜん進まなくてすみません。
これを見ている人たち的にはもう少しとばしとばしで進めていっても大丈夫なんでしょうか?よければ意見をお願いしますm(__)m