年下の彼女
年下の彼女
デートにおける必須条件の一つにあげられる「まず生き残る事」ですが、父さん。
どうも、それを守れそうにありません。
先日の話になるのですが、
「ねぇ」
「ん?」
「好きな髪型ってある?」
と、彼女に尋ねられました。えぇ、年下です。彼女は……えーと……五つ下ですかね。多分。まぁ……ロリってますね、正直。ジャケット着せて、シャツを着てネクタイをすると、もう完璧女子校生。そうそう、そっち。……警察の方の視線が怖い感じになります。
何をいきなり漫画やアニメみたいな台詞をあにはからやん、さては俺の本棚を探られた!?みたいな事を考えて、悩んだのは一瞬。
「ポニーテール……かな」
呟いてしまったわけです。ふぁぼれ!えぇ、そうです。齢三十も間近というのに俺は相変わらずこんなんです。……いやぁ……大人……ねぇ。
「そう」
しかし……まぁ、俺より年下の彼女ですが、まぁ、父さんならわかるでしょう。そう、俺より余程大人です。女の子ってすげー。いや、女性ってすげー、ですね。みたいな。まぁ社会人になってしまえばこんなもんでしょうけど。
「あ、ボルドーでカベルネの……そうですね、重い方でお願いします。分かり易い方が好みです」
ソムリエの扱いも慣れたもんです。
とりあえずビール、か、もしくは、梅酒ロック!がせいぜいの俺からすれば青息吐息、さすれば心は五里霧中。ごりごりマッスル。君に首ったけ。
目を丸くしたのは一度や二度じゃあないですね。
ついで、
「かたぐるまー」
……だいぶキャラクターが崩れてる感じがしますが、そこがギャップ萌えです。軽く酔うとこんな感じです。ガチで酔うと吐きます。その辺も含めて可愛い彼女です。
東京の雑踏の中、肩車をしながら歩いたのも一度や二度じゃないです。すみません。父さんが母さんを肩車してるのはどうかな、と思ってましたが……
いやいや、悪くないですね。確かに。
世界の中心がまるで此処だと言ってる気がします。
まぁそんな露出癖と注目癖は置いといて。
特にドラマチックな出逢いではなかった二人ですが、まぁその事件が起こるまでは普通のカップルをしていました。まぁ、肩車を普通のカップルがするのかと言えば、確かに疑問を挟む余地はあると思いますが、一度やると癖になることは請け負いましょう。後は女性側のテンションです。ついでに言えば、この間、公園でお姫様抱っこをしながらグルグル廻ってるカップルを見ました。今度実行してみます。じゃあなくて。
そう、事件が起こったのです。
先日の突然の髪型の話題。
元々、彼女は、黒髪で、長かったのですが、拘りがあるらしく(その辺もぐらっと来た理由です。自分を作り上げてる女性は惚れます)、一貫したスタイルでこれまでは来ていました。せいぜいが、まぁ、軽くカチューシャ(!)だったり、花を横に添えてみたり(!)、耳を出したり(!)、前髪をぐいっとあげたり(!)だったのですが……
え?
ちょろい?
いやまぁ、なんです?いちいち報告するな?
いやぁ……って父さん!?切らないで!電話切らないで!
相談なんです!大事な!
……仕事が忙しいのはわかりますが、一応息子なんで愛情溢れる対応を……
あー、ごめんなさい!切らないで!
え?ガハラさんのふぃぎゅあを鑑賞しなきゃいけないから?
……
ま、まぁそれはいいです。
いや、聞きたくないです。
いや、大丈夫です。間に合ってます。
何が間に合ってるのか言っておいて謎ですが。
つまり!
だから話を戻しますが!
彼女がこの間「ポニーテール」でデートに来たんですよ!
いいですか!?ポニーテールですよ!?ポニー!
フルメタルパニックの犯罪者はオマエか?
……いやいやまさか。彼の気持ちはわかりますが。
おかげで、顔が一日中真っ赤っかですよ。
似合いすぎました。鼻血が止まらなくて。つまり、ある意味で黄金比で、彼女のポニーテールはそれこそ、神秘の領域、神のみぞ知る絶対領域、まぁ、普段のワンレンも、それはもう素敵で素敵で素敵の三乗くらいで……聞いてますか?父さん?……あれ……いやだからもう一度言いますよ?つまり――
……「あれ?じじい、兄さんからの電話は?え?……あぁ……また病気か……」