パンチラとパンテラって字面が似てる 2
パンチラとパンテラって字面が似てる 2
「ぐわああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
扉をあけた瞬間、ノーパソの画面を締め、抱え、転げ回るお兄さん。こいつもソッチ系か。なんなんだ?そういうのってバレバレだろ。
「だ、誰だ!何故三次元の可愛い女の子が俺の部屋に!?まさか遂に……俺は次元を超える事が……」
「ただいま、兄さん」
「なんだ、志真か……ということは、こちらが京さん、か」
「そうそう、京さん」
「どうも、初めまして、木守京です。京って呼んで下さい」
「いや、京さんだろ、ここは」
「そうだよね、兄さん」
毎回、思うけど、志真は変なヤツだ。知っているということは、私の事を話しているということだよね?……どんな評価を?気になる。凄く気になるぅうううううううう!
「志馬田家長男の和兄さんです」
それにしても。……似てない。格好いいは、格好いい。さっきからちらちらノーパソが気になるようだが。確実に二次元オタクなのは間違いがない。いやそうじゃなくて。いや確かに私も乙女ゲーは嗜みますがね!良いよね!……じゃなくて。しかし、ごく一般的なレベルで言えば、かなりいい男部類に入りそうだ。見た目は。
見た目は。
中身は知らない。
「へぇ……てことは、警察官のお兄さんは、次男とか?」
「そうだよ、基兄さんが警察官」
「ふーん」
案外他人の家庭の事情は知らないので、なんとなく珍しくもある。しかも家を出ていない二人の兄。ちなみに向かい側が基の部屋と書かれていた。
「で、何だよ、志真。お前が今回この子を連れてきたってことはアレか?なにがしかのトラブルか?」
「うん、多分、兄さんか姉さんかは、解らないけど」
志真の家族の性かよ!
「基には聞いたんだよな?」
「うん、さっき」
「名前は?」
「桜井健」
「よし、じゃあ、ちょっとノーパソ開くから、京さんには顔を背けて頂いて」
「解ってますよ」
タマの部屋でそういった情報には慣れていると思うが、ここは素直に従う。
ポイントはあげておかねば。じゅるり……。うぇっへっへっへ……ていうか私は何を考えているぅううう!?なんて動揺をしながらとりあえず耳だけは傾けておく。
「うーん、引っかかってこないな。大学の方から情報は引き出したんだけど」
「!?」
犯罪じゃね?通報するべきじゃね?
「兄さんのネットワークに引っかからないってことは、姉さんのネットワークにもいないってことだよね」
「そうだな、今回は、俺たちの性じゃなさそうだな……ということは、だ。志真頼みになるな」
「解った。あ、京さん、健さん家への行き方解る?」
「解るけど」
行ってどうする?
「ついでに兄さん、アレ、解除しといてくれないかな」
「どれくらい?」
「うーん、半分くらい、かな。あ、後、携帯貸してくれない?」
「……あぁ、ほい、携帯。んで、解除、と。これで大丈夫だな」
キーボードをカタカタ叩きながら、じゃらっと可愛いマスコットキャラのストラップがついた携帯を渡すお兄さん。
うわ、可愛い。
ちょっと年上の男性が持つ感じのマスコットキャラじゃないですね!これぇ!
「うん、ありがとう」
「じゃあ二人とも気をつけて行ってこいよ」
「あいさー、兄さん」
「お邪魔しました」
「あ、そうだ、京さん」
「?はい?」
「志真をよろしく」
「?え、えぇ?」
……玄関から家を出る。
ドキドキする。公認!?何が!?え、公認なの!なんて考えてた。
……まぁ、今になってみれば私は、この時勘違いをしていたわけだけど。だからと言って、彼の台詞が間違っていた訳じゃない。
「てかさ、志真ってさ」
「何?京さん」
「完全に犯罪者予備軍だよね」
お兄さんに至っては、捕まっても可笑しくないし。
「大丈夫、大丈夫。兄さんが警察管だから」
「……」
だいぶ際どい台詞を言いながら、志真は歩く。
健さんの家に着くなり、鍵を一回し。当然、渚が鍵をかけたのを私は見た。
首肯を一回。うん、よし。
指を突っ込み、開けたのが見えた。
うん、よし。
私、突っ込まない。
「まあまあ、今回は状況が状況だし、仕方ないでしょ」
何をどうやったのか、定かではないが。突っ込むべきなのだろうが、スルーした。
私は、知りません。うん、これで行こう。
ちなみに、こいつ、ここの住人にも知り合いがいるらしい。
さっき大家さんと話をしていた。妙なヤツだ。
「どう、ある?違和感」
「うん、ある。なんか変な感じ」
「……あぁ、それは多分」
ジャー、とトイレの水の音が聞こえる。水の音?
誰もいなかったはずなのに。誰かがいる。
ちょっと、待って。これって、特にホラー系のそういった話じゃないよね?ただの超絶ハチャメチャ支離滅裂ギャグ話だよね?そんな要素はまるで必要が……!
キィッと扉が開く音がする。目の前の廊下にあるトイレのドアが開いた。
「うっ!?」
今のは私の悲鳴。
隣の志真は何故か顔面を左手で覆っている。……なんだろう?何か、知り合いがそこにいて、あちゃー、こいつは京さんに知られたくなかったぞぉ的な顔をしている。え?何で解るのって?いやいや、ずっと志真を観察してきた私にわからないはずもないでしょう?
トイレから出てきたのは、頭に花を突き刺した男だった。
……花?
男、というより、中学生くらい?の男の子という方が正しい?
可愛い顔してるけど。
花。
「おう、志真。待ってたぜ」
知り合いか。
しかし……、言わせて貰うが、変なコスプレだな。そもそも、頭に花って。花ってなんだよ。何で、花?しかも、凄い作り物的な。何、その二次元、みたいな。
「いやいや、腹の調子が悪くってさ」
そんな変なヤツが近寄ってくる。志真は、
「ちょ、何やってんすか」
と言いながら、近づいていく。
確かにこいつは変だと思っていたが、真面目に変なヤツと付き合いがあるとは。
「志真」
つい、声をかける。だって、オカシイじゃない?
「その変なコスプレした人誰?」
言外に、そいつがやったんじゃないか?的な意味が含まれているのは、彼にもわかったのだろう。おもむろに、彼の花を引きちぎる、志真。
「いや、知り合いですよ、ただの」
――ブチッ
弱冠。いや、正直に言うなら、違和感はあった。でも、目の前で花が取れたのだ。特にナマモノとは思わずに、その時の私はスルーした。
ただ、そう、正直に言って、何かが引きちぎれた音だとは、思った。
ナマモノ的に。
だって、
「あんぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?、おい、何するんだ、おいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!そんな事して生えてこなかったらどうするんだぁあああああああああああああああ!?恥ずかしいだろうぅがぁあああああああああああああああああああああああああ!」
何て言いながら、その男は転げ回っていたのだから。恥ずかしいのか?
何を言ってるのかわからなかったけれど、聞いてはいけない気がしたので、私はとりあえず耳を塞いでおいた。
いや、うん、どう考えてもオカシイ。
とは言え、その当時の私は単純に『余程、好きなんだな、そのコスプレ』としか考えなかった。ということにしていた。しかし、それはオカシイ。
「いやいや、引っ込めといてくださいよ、これ」
と言う志真の台詞と、
「だって、お前、大を出すときくらいリラックスを」
なんて言う男の台詞を考えれば、どうしたって何かがオカシイという結論を出しても可笑しくないが、何かが私を押しとどめたのだ。消されたくなければ、黙るべきだ、的な。記憶的な何かが。読者諸君には、解って頂けると思い、書かせて頂いた。
そういうことだ。
本来は、絶対お前らオカシイ、と言うべきだった。
「で、そのコスプレ男は誰?」
「あぁ、えっと、良く喫茶店に来る、……うちゅ……警察官の」
「真坂真下です」
本名か?……見たことがない。そもそも、警察官?……らしくない。どこが、というのでもないけど、何かが不自然。そういう印象が、ある。むしろ人間?みたいな。
「まぁでも、普通の警察官じゃないから、らしくはないんだけどね」
と、志真。まるで私の思考の先読みをしたような発言。
「一応、広域監視科所属という者になります。以後、お見知りおきを、京さん(ぴゅーぴゅー←噴き出る効果音)」
と、言う。
まるで聞いたこともない部署だ。……まぁ、コスプレイヤーだし(ヒドイ偏見)。
でも何かがぴゅーぴゅー飛び出ている頭から目が話せない。……もしかして、縫い付けてたの?……まさかな。生えて……いやいや違う。そういうことじゃないことにしておかないと。
「ところで、志真、何でわざわざ現場に?」
その発言はむしろ、貴方がされるべきなのでは?という私の意図とは、裏腹に(ていうか確か鍵が掛かっていたような?)志真はこう続けた。
「どうも、俺らの関係じゃないかと兄さんが言っていたので」
「ふーん。まぁ、お前の兄ちゃんが言うならそうなんだろう。ところで、このエロ本やばいぜ。一緒に鑑賞しよう」
――「せいっ!」
スパン!パカン!(私がスリッパで二人の頭を叩いた音)
ベチャッ(スリッパが床に落ちた音。ぴゅーぴゅー飛び出た汁がついたから手放した。ごめん、健さん、渚)
「で、本題なんだけど」
らしくない警察官(私服だし。カジュアル)が話し出す。
「どうも、猫耳がここの住人を連れ去ったみたいだね」
「猫耳?」
「うん、痕跡がある」
床から、毛を一本、拾い上げる。
「簡易検査装置で見たところ、間違いないな」
「真坂さんにしては仕事早いですね」と、志真が言う。
「お前な、一応俺はエッリートなんだぜ?」
「で、猫耳はどこに行ったんです?」
「うーん、……どうしよう?神様のご都合主義か、ドラゴンボールレーダー、どっちが良い?」
「……どっちもだいぶ際どいっすね」と、私。
ていうかドラゴンボールレーダーって。あるの!?地球に!?
「ただまぁ、そんな便利アイテム使わなくても、今時間は?」
「……六時十七分ですね」何も見ずに応えたぞ、此奴。でも私は無視。
「じゃあ、多分、この辺の旨い餃子屋にいるはずだ」
「餃子屋?」
「うん、……中華料理?」
「なんで?」
「好きなんだろ、餃子?多分、遺伝子的に」
「遺伝子的に……」
志真は花をその真坂広域監視科所属警察官に花を返してあげ(自分で突き刺してた。するとあら不思議、花が元気になってた。ていうか刺したら治るのかよ!)、私たち二人は健さんの部屋を後にした。
「ねぇ、志真」
「何、京さん?」
「あの人が出てきてから、違和感が消えたけど」
それは紛れもない事実。
「……ま、あの人がいるだけで、違和感がありますからね」
「そんな変な人なんだ」
「だって、頭に花のっけてんですよ?どこの桜ヒ○ユキ君ですかって」
「確かに。でも、そのネタ解る人いるの?」
「やっぱ古いですかね」
「チョイスがねえ」せめてゼノン様くらいは言わないと……苺のティアラになるけど。
「ところで、京さん、こんな話、知っています?」
「何の話?」
「私服の写メで、ヒーローが飛んでくるって言う」
「あぁ、アレ。萌えたわ、つーか、燃えた」
「今更読んだんで話題振ってみましたけど」
「うん。今はもう、ひたぎエンドの後が楽しみだけどね」
「で、俺らどこに行ってんですか?」
「決まってるじゃない」
タンバ町で混じりけなしに、餃子が旨い店。
中華飯店・猫田。
其処以外に、ない。
中華飯店・猫田についてみれば、確かに。
いた。
猫耳。
……すげー旨そうに食ってる。餃子。
「ふんむむむむむむ、はぁー、ハグハグ、いやいや、流石、ギョウザ!芸術的な焦げ目に引き立つ香り……!毎度思いますが、どこの次元の食い物ですか、ハフハフ、ふにゃあ、……追加五人前!まだまだいけるよー!」
「姉ちゃん、いつも良く食うねえ」
「そりゃ、任務が任務だから、食べれる時に食べておかないと、ハガガガガガ」
「おい、タマ、追加五」
「うぃー」
ニンニク、ごま油ののった中華料理屋らしい、良い香りが立ちこめるその店内にいる猫耳。
まぁ元来、何も気にしない親父だ。
突っ込めよ、コスプレに!と、私は思うが、それでどうということもない。
それよりも、今気になったのは、タマの表情だ。
焼き餃子追加五人前を皿に並べ、持ってきて、立ち止まっているタマ。
猫耳を注視し、浮かべているあの表情は、紛れもなく……
「ばんわー」
志真、お前は空気を読もう!
猫耳の真正面に座り、挨拶をする志真。
いくら私でも今の展開はないわ!
ガタンッ!
「お前はっ……!!(モグモグ、ゴックン)」
「」
猫耳は突如立ち上がった。餃子は手放さない。皿ごと持ち上げて、まだ食べ続けている。ぱない。そんなに旨いんだ。
すげー旨そう。
「」
ていうかコメントが挟めない。
タマが追加の五人前の皿を持っている。
猫耳は自分の皿に餃子が残っていないのを確認すると、タマに振り向き、何故か顔を赤くし、皿をひったくり、さらに食べる。
「広域監視科の!?」
締まらない。
そこはワンクッションいれずにそのままリアクションするべきだよ、猫耳さん。
でもなんで、志真が広域監視科なんだ?
「こらぁ!座って食えぇえええ!」
親父の一喝。
と言うわけで、今は向かい合いで三人で四人掛けのテーブルで話し合い。
締まらない。
バトルパートはないの?
ひたすら餃子を食う猫耳。……可愛いのに。
「猫耳も、最近はノルマが結構厳しくてねー」
なんて、疲れたOLみたいな台詞を吐く猫耳。
名前は、
「三宅ニャミ」
と言うらしい。
三宅ニャミ。芸名?
「で、広域監視科の知り合いのお前がどうして、ハグハグ、旨っ!私を追ってるんだ?」
「さっきから言いたかったんだけど、そこは、にゃ、にしといた方がいいんじゃないの?」
「いや、この京さんの知り合いの彼氏がいなくなっちゃって」
「スルーなの!?私の台詞!」
「にゃんと!旨いッ!」
「意外と素直な人だなあ」
「キャラ的にそうした方がいいんだにゃ?」
「いや、まぁ読者的にはこれで一発で解るから、……いいと思うけど」
「一応、こっちにもこっちなり、……こっちにゃりの事情があるから、それを含んだ上で、聞いて欲しい……にゃん」
「素直な人だなあ」
「それにしてもギョウザ臭いですねっ!」
「にんにくにゃん、それがいいんだにゃん」
「……志真は男の癖に、えいっ、……あーん」
「へぁっ」
志真にギョウザを食わせた。何故か顔が真っ赤だ。
もふもふ黙って食べている。
「私のギョウザー!?」
ニャミさんは今にも泣きそうだ。
そこへ、
「ほい、ニャミさん、追加のギョウザ。旨かった?俺のギョウザ。これは、俺からの奢り」
タマがギョウザを持ってきた。
「……うんまぁあアアアア!!!……にゃあ」
素直だなあ。
口からビームが飛び出ている感じだ。
ピカーッ。
ぺろりと平らげたニャミさん。
「じゃ、そゆことで」
「待った、ニャミさん、肝心な事を聞いてない」
「にゃに?」
「……何をしている?」
「そのまんま、にゃ」
「侵略?」
「いつも通りに、にゃ」
「ちなみに、もしかして、使っちゃってます?彼?」
「さて、にゃ。それに正確に言うなら……言うにゃら彼等、にゃ」
「いい加減、そっちの上も諦めてもいい気がしますけど」
「まぁ、今回がラストにゃ。いい加減、現実ってヤツに気づいたからにゃ」
「ということは?」
「ということにゃ」
「じゃあ早速……ふぎゃっ!?」
「志真ぁ!?」
……多分、ニャミさんの蹴りがヒットしたのだろう。まるで見えなかったけど。
志真が厨房へと吹っ飛んでった。
気づいた時には志真が隣から吹っ飛んでいたから正確には、何が起こったのかはわからない。ただ、
ガッシャーーーーン!カラカラゴラッロロロン……カッコーン『イテッ!?なんでやかん!?』
声は聞こえてきた。
……生きてるみたいだ。
「……ニャミさん?」
「作戦時間はリミットまで後二時間。得物はすでに手に入れ、後は組み込むだけ」
「何の話を……」
「世の男共のオタマジャクシというオタマジャクシを消滅させる、遺伝子破壊キャノン、名付けて、ファイスタ!」
「……つまり?」
「それが今回の作戦の胆。そこで延びてる広域監視科の知り合いに伝えておいて……にゃ」
「ニャミさん、何を?」
「私も、ここまで来たからには覚悟を決めなければならなかったのよ、単純に」
「……それでギョウザを?」
話の流れがまるで理解できないながら、一応話を繋ぐ。
私って、良い奴だな。
「好きなモノを最後にっていうのは、誰だって、考える結論だ……にゃ」
少し、タマの方を見たような?
「じゃ、……あ、にゃ!」
「いや、そこは、じゃ、でいいんじゃ」
と私が突っ込む間にニャミさんは消えた。
「……お代」
親父は、少し哀しそうな顔をしている。