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 コンビニ店員の男 2

 コンビニ店員の男 2


 えーと。ここから?何?僕、すげー中途半端なところから語らされんの?いやいや。ちょっと待って。流石に待って。なんか恥ずかしい青春の主張した後だから、ちょっと無理というか、ちょっとなんと言うか……。

 いやほら、僕、ダメンズだし――っていだああああああああああああああああああ!?

 上巻さん!?



 ――っ!?ぎゃーす!




 つねらないでっ!




 ……そう、まっきーこと梢さん。上巻って結構良いと思うんだけどな。語呂が良くて。

 卑下するな?……はいはい。わかりました、わかりましたよ。うす。超好きっすよ、梢。……良し、ダウン。しばらく復帰して来ないだろうな、アレなら。

 ていうかイエスイエス枕なんてのがあったのに、正直、僕は驚いた。……良く探してきたな……でも、この人なら手縫いか……?

 ……枕に顔を埋めながらゴロゴロしてる所はかなり可愛い。

 まぁそんな僕のロリチックな趣味と特殊性癖の話は置いといて。

 いやつか梢さん……

 ゴロゴロし過ぎでしょ。

 どんだけ楽しくなっちゃってんの?

 

 普段すげー無口なのに。

 

 そう、梢ことまっきーは、どちらかと言えば無口だ。


 多分、内心ではスゴイ、それはもうものごっつい速度で言葉が波のように羅列並列直列ベルトコンベアーのように転がされてるのだろうけど(傍目で見ている限り、彼女のパソコンの打ち方は機関銃)、演算処理が速過ぎるのか、口がその速度についていかないのか……


「ふみゅ……」


 いや、ふみゅはないだろう。と、当初僕はよく思った。変な人だ。アレで僕より年上で、……いくつ上だっけ?まぁいいや。六つか五つだな、確か。実際、仕事モードの時は、顔つきが違う。言葉もなめらかで、生殖行為における、快楽の……と言った言葉だってすらすら出てくる。イエスイエス枕なんてモノを買ってきた行動力もスゴイ。

 

 でもまぁ……


「……ごちゅ」


 果たしてそれが何の言葉の形を為していたのかわからないくらいの「ごちゅ」……。流石に僕に赤ちゃんプレイを要求する下地はない。ま、時間が解決してくれるでしょう、とのんこさんからは言われたが。そういうあんたは最近ますますお熱ですか?と尋ねたら、ホッペタを引っ張られた。いひゃいいひゃれす!のんふぉしゃん!と言ったら、余計に引っ張れた。


 ……もう二一なのに。


 のんこさんと喋る時の速度……というか、僕に対するノロケは正直……嬉しいが、僕はそれほど褒められるのになれてない。

 心底嫌なヤツだ……おっと。

 卑屈禁止。

 だからまぁ顔を真っ赤っかにさせられたので許してください。

 照れたんです。

 ……ていうかこれこそ完全なノロケだな。需要あんのか?これ?

 

 あ、そもそも、どうやって付き合うことになったかの話だっけ?

 

 えっと……確か、まぁ彼女の家に送っていったわけだ。

 ……まぁ、お世辞にも片付いてるとは言えない惨状だったのはまぁよくある話として。


「えぇと……」

「上巻梢」

「……んぅ?」

「まっきー」

「……」


 んん?

 と思ったが、とりあえず、彼女をソファに降ろそうと(おんぶして帰って来たのだ)する……降りない。……えぃっ……降りない。身体を振ろうかと思ったが……


「ふぐぐぐぐぐ」

 

 背後で踏ん張る音。……なんだろう、この人。

 見た目とのギャップが激しすぎる。

 と、一瞬の隙を突き(どんな隙だ)おんぶから僕の前面へスライド。どんな動きだっ!?

 思ったら彼女は移動し、


 ……お姫様抱っこ。


 ……。


 いや、待て。

 おんぶからお姫様抱っこへ移行するってすげー難しくね?


「むっふっふ、私の頭脳を持ってすれば容易いわ」


 ……そして勝ち誇る。

 

 まぁそんな経緯があって、だなぁ。

 端折り過ぎ?……いや、確かにそうだね。うん、そう。

 いや、そんな女性に遭ったのは初めてだったからさ。そう、会ったんじゃなくて遭った、ね。遭おうと思って遭えるもんじゃないし、これを逃したらそこまでかも知れないからさ。そう、遭ったのは初めて。間近で出会ったのは初めて。


一も二もなくそこで告白したわけだ。


「結婚を前提に僕と付き合って下さい!」


 やれやれ。


 ……いや、我ながら阿保だと思うよ?

 男性誌でよくある『ありえない告白トップテン』とかに羅列されておかしくない話だもん。前提も、経験も、相手の性格も、おかまいなしに、言ってしまえば単純に見た目やら行動で判断したわけだからさ。『でさー、タカシのやつがさー』『ぎゃはははは、彼奴は馬鹿だねー』なんてギャルが(死語かな?)言って笑い話にしかならない告白方法だろう。

 でもまぁ、何よりの予想外は――


「喜んで」


 親指をぐいっと立てるサムズアップ。


 サムズアップだぜ?


 ポニーテールでクールなお姉さんがお姫様抱っこされながらサムズアップ。


 というわけで僕は――

 って上巻さん!?

 いや、デート行くって言っても、ほら、僕は今ちょっと――

 ちょっと!?えぇ!?

 顔真っ赤ですよ!?

 大丈夫ですか!?

 爆発!?――ぐぇっ……

 梢さん!絞まってる!首絞まってるから!


 引きずらないでぇ!


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