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お嬢様と執事(とりあえずそのコントローラーはちゃぶ台の上に置いておけ)

 お嬢様と執事(とりあえずそのコントローラーはちゃぶ台の上に置いておけ)


 なんでこんなタイトル?とも思うけれど、まぁ気にしないで欲しい。



「あー、大辻、大辻はおるかー」

「なんです?お嬢様。ていうか、今日僕休みなんですけれど」

「いや、実はね、この作家さんの二次創作が面白くてね。ちょっとメロンブックスや虎の穴を巡って、買ってきて欲しいかな、と」

「つかどうやって入ったんです?僕の部屋ですよね?此処。ていうか、話聞いてます?ていうかネット使え、ネットを。通販してください」

「じゃ、MMORPGが私に世界を救えと囁くんで。そろそろアイテムたまったから市場でお金稼ぎしてくる。ラングリッサートライソードだっけ?マジ楽しみ」

「いや、お嬢様。外の世界に出てください。つか、課金アイテムばっかりにひたすら投資してどうするんですか。もっと無駄に買い物しろ。小金持ち」

「アバターが可愛くなると幸せだよね。ていうかルーセンハートちゃんとやりなさいよ、大辻」

「その気持ちは分かりますがね!?僕の話聞いてないよなぁ!?ていうか人のパソコンを勝手に起ち上げて――パスワードを入力しないでください!なんで知ってるんですか!?ていうかそんなゲームやってる時間なんてないじゃないですか!」

「右目が……疼く!」

「ついでのように力一杯人の冷蔵庫から取り出した牛乳を飲みながら中二を発病させないでください!」

「ところで大辻。……このデスクトップえろいでしょ?」

「勝手に人のデスクトップの画像を自分の写真にしないでください。いや、『私の考えたオリキャラ』を貼んな!つーか学校行け。お嬢様」

「嫌よ。めんどくさい。学校が来たらいいじゃない。それよりも世界が私を冒険へと誘うのよ?無視出来るわけがないでしょ?」

「やかましいわ!ダメ中学生!」

「ちょっと!どこ触ろうとするんです!」

「一人で身もだえないでください!まるで近づいてないですよ!」

「いけず……」

「はいはい。はい、お嬢様。ココア。飲んだら送っていきますんで。……完全に遅刻ですけどね。……あぁ……また給料が減らされる……ぐすん」

「大辻は私がいないとホントにダメね」

「お前の性だよ!」


 なんで僕がお嬢様、なんて人種と関わってるかと言えば、それはひとえに、


「おはよう、上木」

「おはよう、下田さん」ちなみに上木は僕の名前です。大辻上木。まぁ、僕自身ちょっとこれはおかしいんじゃないか、と思いますが、まぁ名前なので仕方ありませんよね?

「やれやれ。朝からやる気のない表情だねぇ」

「やる気は漲ってますよ。マジで。そんなどこかのラノベの主人公的だるがり精神はありません」

「いや、布団の中が好きだと見た」

「それはアンタだ。ていうか、人の布団に入らんでください」

「えー……だるい」

「気持ちはわかりますがね!」

 布団の中からぺっと吐き出させます。


 ま、それはそれとして。


……女性がくるまっていた布団……か。


「あ、嗅がないでね」


「人の心を読まないで頂けますかね!?」

「またまた臭いフェチの癖にぃ」

「やめて!」

「嗅ぐのは仕事が終わってから一人遊びの時間の時にして」

「撤退かと思ったら意外とぐいぐい来る要求ですか!?」

「たっぷり擦り付けておいたから。良い感じに。靴下……いる?」

「具体的過ぎるだろ!」


 それはひとえにこの人の性です。いや、おかげとも言えますね。


 高校を卒業して、家にお金はないし、そもそもそれほど勉強が好きだというわけでもないので、そしてさして武器もない、せいぜい、エクセル、VBA、ワードにパワポ、フォトショに、イラレ、インデザインと、ジャバスクリプト、とCSSとHTML?程度の技術しかないいわゆるごくふつーの高校生には職があるわけもなく。ということを母親に相談してみたら、


「そう言えば従兄弟の家が執事一家だったわね」

「執事?」

「そ。リアルメイドとかそんなん」

「はぁ」

「ちょっと聞いてみるわ」


 で、行かされましたわけですよ。あれよあれよという間に、執事に。

 家事手伝いです。えへ。

 ていうか、今の不況だと言っている日本にそんな金持ちがいるのかよ、と真面目な話、その家に送られる事になった時に思ったわけですが。

 居るんです。小金持ち。


 お嬢様の両親はそれぞれ働いていて、父親は社長。母親は……なんでしょうね。料理研究家とかそんな感じでしょうか?とにかく忙しそうです。

 二人とも、四〇を前に人生を謳歌している感じは出ています。幸せそう、の一言に尽きます。

 ま、とはいえ。


 仕事が忙しいという事は家に帰ってきて、何もする気がなくなる、というのは僕の友人の言ですが、『お前片付けろよ!』『待ってましたー』『そうか、待たせてたか……じゃないよね!?』『ノリ突っ込みが寒いんで寝ます』『いや、仕事しろよ!ていうか片付けろ!手伝え!』『あーうーう゛ぁー』……となるのは普通で。


 家に帰ってきた二人は大抵ゾンビになってます。


 ていうか、なんでこんなに家広いんだよ、と感想を抱くほど広いです。


『それは主に税金の取り方のせいさ……あー、うー、う゛ー』


 いや、旦那様。死んでます。目が死んでますよ、と。

 そしてそれはタオル。タオルは口に含むものじゃないですよ?


『そうね。税金の性よ。税理士が言うの。もっとちゃんと上手い事使って下さい、って。あーうー、う゛ーう゛ぁーう゛ー』


 奥様。それはテレビのリモコンではないです。携帯電話です。すまーとふぉんてやつですよ?ボタンがない時点で気付いてください。この家に妖怪リモコン隠しはいませんよ?多分。『フシャー!』『モキュー……』っ!?……気の性でしょう。多分。


 ま、忙しいとお金を使う暇もなく、という事でしょうが。

 個人的にはただの一般人的見解から『もっと金使えよ!お金持ちぃ!(俺の右手がバーニング)』と言いたい所ですが、ま、仕方有りません。そして、かのお嬢様はと言えば、


「まぁそれはそれとして、だ。大辻君」

「何キャラ?ていうかだから人の部屋にはいんな。漁るな」

 お嬢様は中学生です。

「……肌色成分が少ない」

「……どこからその単語が出てきた?」

「このラノベとそこの小説借りてく」

「いや、勉強しろ、お嬢様」

 大事な事を言ってあげます。

 大学にいけるお金があるなら、行っておいた方が良い。マジで。

 何せ、大卒であるかないかで面接が受けられるかどうか変わるからね。

 高卒、もしくは専門卒という単語のしょぼさはマジで身に染みる。

「上木、勉強教えて?」

「いや、教えるの得意じゃないんで。ていうか教師に頼め、教師に。もしくはご両親」

「……ふむ。縞パンが欲しい……仕方ないね?」

「誰も要求してないよ!」

「あれ?香住が上木は縞パンが超好きって言ってたけど?」

「下田さーん!?下田ぁ!――アンタ女子中学生に何を教えてるんだぁ!?」


「……呼んだ?」


 ……押し入れから現れた。


「何してた?」

「別に?」

 ……まぁなんでもいいんだけどさ。


 夜、自分の布団を嗅いでしまったのは不可抗力だと思いたい。

 そんな十九の夜。


 しかし、事件は差し迫っていて、翌日、


「大辻ー!お母様とお父様が狙われてる!」

「ぐあああああああああああああああああ!?」


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