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着衣とはつまるところ 3

着衣とはつまるところ 3



「お、居た居た。失礼しマース」


 入って来た!

 泣いてた瞳を乾かす間もなく、いや、泣いてないし、ちょっとヨダレっただけだし。ちょっとどぼっと。溢れちゃっただけだし。


 なんてあたふたしてるウチに、彼女が部屋に入ってくる。


 私はもう、何がなんだか。

 わざわざその現実を突きつけてくる目の前の茅萱に頭に来るやら、彼女が乗り込んで来て、ということは、きっと今の今まで茅萱の部屋、もとい家にいたに違いなく、それはつまり、『そういう』事で、私は自分の部屋なのに急に、部屋が狭く感じられて、尚更目の端に滲んだ水滴が……


 なんてやってる瞬間、ふと温かいモノを、



 ――って、



「なんばしよっとかぁ!?」


 握られた手を思わずふりほどこうとする。けれど、


「何って――」

 なんて狼狽しながらも茅萱のヤツは離さない。

 でもその温もりが欲しかった、ということと、裏腹に他人に向かってそれが差し出されてたはずって事にもう私の心は一杯で、あぁ、畜生、です。

 正直、むかついて仕方ありません。


 だから、


 とにかく振り解こうと強引に――



「あれ?取り込み中?」



 してる所へなんて彼女が言ってくるし、……




 ……うん?




 なんか凄い温度差を感じますね……?


 あげく、


「だから姉ちゃん。ご飯食べ終えたら、紹介ついでに呼ぶって言ったじゃん」


 ……姉ちゃん?


 おいおい、ジョニー……冗談きついぜ。HAHAHAHA。


 え?姉ちゃん?茅萱の?

 制度上結婚不可能(少女漫画の結婚エンドは定番)なあのお姉さん?


「へぇ……彼女がアンタの彼女?」

「姉ちゃんっ!?」


 は?


 私の頭は馬鹿みたいにさっきから廻りまくっていて、脳内を一瞬前の出来事が駆け巡り、いやつかお義姉さん!?いやむしろお義姉さまでしたか!?


「どうも。姉です」

「またそのポニテ?」なんて茅萱が言う。また?ポニテ?彼氏の趣味って事?

「ふふん。仕事あがりの彼とデート出来る事になったから行ってくるー、帰らないからーって言おうと思って来たのよ」


 なんてはにかみながら言う彼女は確かに綺麗で。


「な、なるほど」羨ましい限りで。


「初めまして。なずなちゃんだっけ?よろしくね。今日は時間がないけど今度うちで一緒に飲みましょう」


 なんて言ってさらっと行ってしまう。


 なんとまぁ、嵐のような……



 しばらく呆けてたら……



 なんて事はホントにないです。

 そう、お義姉さまショックがなくなった瞬間、握られたままの手が気になり、


 いやまぁ、気になりってのは語弊があって、お義姉さんの事よりもさっきからそればっかで、挙げ句、此奴は全く離そうとしないし、


 ていうか絶対この後、茅萱のヤツはきっとこう尋ねてきますよ!マジで!『お前、さっきなんで泣いてたんだ?』さてどうやって胡麻貸しましょう?A『自分のひんぬー具合に泣いた』……あ、マジで泣けそうです。B『先日買ったショーツが入らなくなった』いや、泣けます。これは、マジで。夜にテンション上がって、カップ麺作って、気付いたら、そこに茅萱が炊いておいてくれたご飯をいれて食べたりとか続けると……うん、……入ったよね。多分……。大丈夫。最近ジーンズがスリムからだぼったのが好みになったのは、別に趣味嗜好が変わっただけであって、別に体系が横におっきくなったわけじゃないの。そうなの。きっと。そうに違いないんです!……やばい。軽く泣けてきました……。


C『彼女がいたみたいだから取り乱した』


……順当に行くとその通りなんですけどね。


 最早顔が点滅して、耳たぶはホットですし、脳みそは茹だっちゃってます。


「なぁ、……薺?お前さっきなんで」


 やっぱり!


 言い出しましたよ!此奴!


 ……ま、普通そうでしょうけどね。そしてちゃんと聞いてくれる辺りにまた私は気分が良くなってしまって。


 ……うん、


 私は精一杯の覚悟を決めました。


 そうです。


 その通りです。


 死して屍なし。


 いや、違いますね、えぇ。じゃなくて。


 そうそう、虎穴にいれて、虎児ゲットだぜ、と。


 つまり、




「良し、ヤりましょう」




 私は自分が羽織った薄手の半袖パーカーに手をかけ、さっと投げ捨てます。


――「はぁ!?」


 あ、久しぶりに驚いた顔見たかも。

 結構好きなんですよね。そういう普段見れない顔。


「そう!今すぐにやりましょう!」

「っておい!脱ぐな!」ショートパンツを脱いでさらにショーツにかけた手を止められました。まったく。……上から脱ぐべきでしたでしょうかね?ていうか――



「脱がないと出来ないでしょう!?」



「なんでキレてんの!?ていうか、おい!段階飛ばし過ぎだし、つーか、そもそもさっきの泣いてた理由も――」

「良いから!」

「どんな押し進め方!?ていうか待てって!いや、押し倒すなよ!つか、話を聞いて!」

「ヤりながら答えるから大丈夫!」

「最早お前漢らしくて格好良いけれどさ!待てって!」

「えぇい!男なら四の五の言わないで食べて下さい!どうしていつも私が下着姿で居たと思ってるんですか!」

「どんな告白の仕方だよ!?つかその台詞の方が恥ずかしいだろ!?」

「いいんです!もうアレです!責任取って余すところなく味わえ!」

「命令形!?」

「強制執行の取り立て人です!なめたらあかんぜよ!でも舐めて下さい!ちゅーも!」

「それボケ!?解りづらくね!?つかせめてもうちょいムードを大切に……」

「大事なのは勢いなんです!」

「つかせめて俺からも告白させろ!」



「さっきお義姉さんがぶちまけたのはちゃんと脳内HDDに保管したので合意です!」



「そこは誤魔化せよ!」

「えぇい!茅萱!大好きです!」

「せめて目を見て言えぇ!」

「恥ずかしくて言えるわけないでしょう!?」

「逆ギレ!?現在進行形でもっと恥ずかしい事してない!?」

「良いから茅萱も早く脱いで!」

「どんな展開だよ!」


 ぎゃーぎゃー……




 ……


 ま、結局、喋らされたんですけどね。


 で、


「まぁ、元気が出て何よりだけどさ……」

「やみつきそば風味な饂飩が食べたいですね」

「はいはい。……玉子あったっけな……?」


 なんてわけですよ。えぇ。

 いいでしょ、この辺で。

 だいぶ、真っ赤です。私。


「……あのさ、薺さん」

「何です?茅萱さん」

「良いから服着ろ」


 ……。


 ま、夏ですから。


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