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着衣とはつまるところ 2

 着衣とはつまるところ 2


 別にね、いいんですけどね。という話なのですが。

 見ちゃったのです。

 普段、あまり出歩かない私ですが、その日はぶらぶらーとしたくなったわけですよ。

 ねぇ。

 そういう日もある。

 下着一枚で牛乳を飲むのが日課とは言え、そう、そういう日もある。

 友人の自称名探偵によれば、『いや、最早漢らしい』……褒めてないよな?褒めてナイヨなぁ!まぁ、それは良くて。ちなみにそいつは勝手に私の原稿を読み、勝手に評価をつけて、帰ります。そういうヤツです。なかなか得難い友人、という所でしょうか?いつも何故かパトカーの後部座席に座ってるのを街で見かけますが。

 もしかして、犯罪って彼奴の性で起こってね?とも思いますが、不思議と殺人事件が起きてるわけじゃないので、きっと、知り合いの刑事さんをいじりに行ってるだけでしょう。もしくは、アレだ。バーの友人の依頼とかで、美人な被害者をさらっと遠ざけたり……なんでもないです。やですね?女の子って怖い怖い。話を戻しましょう。

 そう、極めて普通に新刊のBLを買いにいったわけです。

 作家とはいえ、他人の作品がちょー気になります。いや、貰えたりもするんですがね。

 買うのは存外ストレス解消になるし。

 ぐへへへ。今から取捨選択してやるぜ。うぇっへっへっへ。どこの穴が優良物件かな、げへげへ、とまるで、どこぞの変態親父のような事をやるのが趣味というか。

 されたくはないですけど。

 複雑な乙女心。

 ま、私のストレス解消なわけです。

 うぇっへっへっへ。

 きゃっ、性格悪い。

 で、

 見ちゃったわけです。

 それはもう、バッチリと。

 ていうか、この繰り返しがそろそろうざいとせっつかれそうなので、白状すると、

 そう、

 茅萱が女の子と歩いて居るところを!

 いや、彼氏でもなんでもないんだけどね。彼奴。

 ただの便利屋というか。

 ほら、隣人で大家だし。

 つまり、間接的に私が彼奴を養ってるわけだしね。うんうん。

 別にアレ出し。

 好きとか、そんなんじゃないし。

 バレンタインデーの時にあげたチョコも別に普通に手作りなだけだし。

 暇なだけだし。

 別に部屋で下着姿でうろついてるのも、『よっしゃ!ばっちこーい!』と誘ってるわけじゃないし。『かもーんたつおー』なんて思って無いし。そんな親父ギャグ。えぇ、マジで。そんなつもりはないですよ。そんな妄想も……うん、してないしてない。セフセフセーフセーフ。ダブルドリブルはしてない。良し。まず落ち着いて。落ち着け、私。まだ大丈夫。スリーポイントをいれれば、一気に逆転出来る。いや、なんだよ。スリーポイントって。

 そう、仲睦まじく、なんだかまるでそれはもう親密なカップルのようにスーパーに買い物に入っていく後ろ姿を見たわけです。

 もう、アレですよ。

 ハンカチかんじゃいますよ。電柱の影から。『ぐやじい』そんな感じ。

 で、鼻水をすすりながら(私は鼻炎症持ちなのです。鼻セレブ……神!)『ちーん』していると、出てくるじゃないですか。おいおい。兄ちゃん。何やってるんだい?

 なんて出て行きたい所ですが、それで、『あぁ、そう言えば、言ってなかったな。俺の彼女』なんて事になってみんさい。もう、私の心の防御シールドが完全破壊されてしまいますよ。私の心のATフィールドなんて、エネルギー切れのフェイズ装甲並にもろいんですから。

 ていうか、もう、アレですよ。

 勝利を確信した瞬間のアーマーシュナイダークラスの一撃ですよ。敵としてはこれいじょうないくらいの悔しさに違い有りません。

 確実に恋人が死にますね。間違いなく。例え、此処が砂漠でないにせよ。改造型わんちゃんが一発。しかし、伊坂幸太郎風に言えば、砂漠と言えば砂漠なので、こりゃもう捌き切れんわい、とぼやいても致し方ないでしょう。ていうか、くどい。私、くどい。

 なので、その場をそりゃもう全力ダッシュ。Bボタン連打ですよ。マジで。

 あまりの哀しさに近所の八百屋さんによって、大根一本買って、抱いて寝ましたからね。最早、自分でも意味解らん。

 で、

「そういやなんで書けないんだ?」

 なんでこの野郎が言うわけですよ。まったく。ぷんぷん。

「別に書けないわけじゃないわよ。普通に書いてるし。ちょっとペースが落ちてるだけ」


 そう、

 不調なのは解ってるけれど、

 支障が無いと言えば、ない程度の仕事はこなせているのだ。

 だからまぁ、そんな騒ぎ立てる事じゃない。

 ただ、

「張り合いがないだけ」

「そりゃ結構重症だな」

 まぁ、八つ当たりに近い。それはもう、物凄く自覚している。

 ハッキリ言って、嫌な女であるというのがもう、アレですよ。突きつけられるというか。この『スランプ風』だって言ってしまえばまるで、茅萱の気を惹こうとしているみたいで。

 ていうか、マジでむかついてきた……。

「なんでうちに居るのよ」

「はぁ?」

 彼女が居るのに、という単語は呑み込む。これだけは言えない。はぁ。言ってしまえば楽になるんだろうけれど。それはもう、アレだ。ピリオドを突きつけるということだ。

 ま、ここまで来て自分の事しか考えてない時点でアレですけど。がっはっはっは。……なんて笑う気力もなく、

「飯作ったらでてけ」

「おい!?どんな発言!?」

 あー……むかついてきたー。なんかいらいらしてきたー。

 そしてなんか狼狽の仕方にいらつく。生理かしら?いや、違う。

 そう、アレだ。これはもう、単純な嫉妬だ。

 でも仕方ない。私だって、女の子……まぁ、だいぶん、我ながら『厚かましい』発言だとは思いますがね。女の子なんですから!(言い切ってみた!)

「おい、夏子っ!」

「ばによっ!ぐじゅっ」

「なんで泣いてんだよ!?」

 うるさい!馬鹿!


 などとやってるところへ、


 ――ぴんぽーん、とチャイムが鳴り、


 扉がきぃ、と開く音と、


「茅萱居るー?」


 なんですと!?


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