私の日常へ襲撃
私の日常へ襲撃
どうも。皆さん。お久しぶりです。長間屋のバイト、もとい、店主(先輩)のシャツを嗅ぐのが趣味の上木です。
え?覚えてない?
あぁ。まぁ、それはいいですよ。そもそも、コレ、短編って扱いですもん。
今日も喫茶『長間屋』は……ゆるーっと営業されてます。
一組のカップルが――
『いやだから』
『さぁ!今すぐ!今すぐ行きましょう!』
『なんでそんなに焦ってるの!?』
『デート!これはデートなんです!』
『つーか、なんで俺!?だからなんで俺受け入れたことになってるの!?』
『いいじゃないですか!据え膳!喰え!』
『なんか違う!お前そんなキャラだっけ!?』
なんて熱々な感じで……
畜生。
恨みがましく先輩を見てみても、
『……うん。ジュアッグ悪くない』
いや、呆けすぎでしょ?貴方。という感じです。
むむーん。
たまらん。
は、まぁ良くて。
「だから上木ちゃーん」
目の前の、
「恋ってどうやってするんだっけ?」
という友人が邪魔です。
「いいから帰ったら?」
「上木ちゃん、ひどい!そんな事言うと友人無くすよ!」
「いや、私、彼氏さえいれば満足出来るヤンデレ系なので大丈夫です」
「嫌な女だよね。上木ちゃん」
「ちょっと」
「まぁ、それはどうでも良くてさ」
「おい、こら」
友人をいきなり嫌な女発言て、しかもそれはどうでも良いとか、
目の前の彼女――綿貫梓(二八)が言う。
「というわけで蘭君結婚して」
――なんですと―――――!?
「ちょっ、おまっ!」
思わずつかみかかる。
「いたいいたい!上木ちゃん!?何!?」
「えぇい!始末しておくべきだったか!」
「待って!お盆を振り上げないで!多分それじゃただのギャグだよ!決定的な有効打になりえない凡手だよ!」
「やかましいわ!」
ちなみに蘭は先輩の名前です。
どうでもいいですけど、私は先輩の名前をまともに発音出来ません。
……ら、らんひゃん。
何処の青春ラリアットですか。
「いや、梓さん。その台詞何度目?」
なんて笑いながら先輩が言う。
「さぁ?二桁は軽いね。まぁそれはそれとして、梓さんは先日出来た男と別れて傷心中なのですよ。コーヒー奢れ」
「はい、コーヒー」
「上木ちゃんが淹れたの?えー、蘭君が良いのにー」
「ふぐぐぐぐ」
「ところで上木ちゃん」
「なんです?」
「告白しないの?」
「ぶぅ―――――、!?」
は!?告白!?
「上木、好きなヤツ居るのか?」
は!?先輩が近づいて来る!ど、どかしかせんといかへん!も、
「――もろこまち!」
「「んん?」」
「なんでもありません」
「す、すっごい無表情ね!?上木ちゃん!?」
「もう一杯コーヒー如何ですか?」
「う、うん。悪いけど、頂こうかな」
私は平静を取り戻すため、火をかけ、挽いた豆を用意し、
「そう言えば蘭君。今日暇でしょ」
「まぁ……暇ですね。確かに」
ぢぃっ!?落としに来やがったか!雌豚がぁ!
「……あそこから物凄い殺意を振りまいてる彼女借りてってもいい?ていうかどんな視線よ。どこから発してんのよ。そしてどうして目の前の蘭君はまるで気付いてもいないのかしら?これがいわゆるフィルター?フィルターってやつ?」
「良いですよ。なぁ、上木ー」
「なんです?先輩」
「どわっ!?」
こそっと近づいたら驚かれた。ついでにコーヒーを渡す。ひょひょいと。
ま、それはそれとして。
「上木ポイント二アップです」
先輩の驚いた顔……たまらん。ぐふふふふ。
「相変わらず妙な事言ってるけど。あ、ちなみに変な道には引き込まないでくださいよ。梓さん」
「任しとけ!」
「すっげー不安になる返答ですね……それ」
何故か先輩がげっそりし、
「良し。上木ちゃん!着替えてこい」
……はい?
私が連れ出されることになった。