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年頃の彼女 3

 年頃の彼女 3


 さて、今日はお見合いコンである。

 欲望溢れ、それこそまさに真剣勝負。一瞬の油断も許されないぴりぴりと張り詰めた間合いの取り合い。情報収集イコール相手の価値基準。

 奪い取るは相手の興味。

 つかみ取るは出逢い。

 おーいエー!

 B、A、B、Y、べいべー!

 戦え!

 三〇代!

 みたいな。


 ところでどうでもいいけれど、最近は晩婚化が進んでいるらしい。

 と言っても、あくまで一般的に契約社員とか派遣社員は、だけれど。

 やはり正社員が人気だ。

 そしてやはり正社員は普通に結婚している人が多いらしい。

 相手の家族からしたらそれはそう。

 例えば俺に娘がいたら……うーん……そうだよなぁ。

 でも立場が変われば言うことは変わる。


 社員かそうでないかというのは外から見た場合、かなり重要だ。

 資本主義社会における最優先事項は『資本』であり、『人間』じゃない。

 そもそも会社組織における常識、というか、右肩上がりでなければならないという論理が最初から破綻しているというか。

 ま、そうでないと怠けるのが人間と言われればそこまでだけど。

 例えば国家予算。

 予算を使い切らないと来年削られるから使い切らないと。で、借金。気付いたら一人あたりそのうち一〇〇〇万くらいになるらしい。ギャグだ。ていうか、俺はどちらかと言うと頭が悪いので、どうして国が俺等から借りた借金を貸したはずの俺等が返すんだ?……うーん……すげーシステムだ。よくわからないけれど。

 俺も真似してみたいが……

 国って確か家族ではないよね?

 というかそもそもどうやって借金してるんだよ?

 みたいな。

 だからね、


「――なんで俺、縛られてんの?」

「いや、目覚めるかな、と思って」


 ……


 ……


 ……うん、


 ……


 ……何に?


 とりあえず脳内妄想で頁および文字数を補完したのは良しとして。


「七夏さん?」

「なんです?こーいちさん」

「俺、今どうもリアルスマキンにされてるっぽいんだけど誰がやったか知らない?」

「知りません」


 お前だろう!?


お前だよな!?


「ていうかうちにこんな縄……」

「あぁ、昨日の夜にこーいちさんのお母さんから譲って貰いました」

「やっぱりお前が犯人じゃないか!」

「騙しましたね!?」

「そこで自白!?」


 つかなんでうちの母親が縄なんて持ってんだよ!


「プレイ用だそうです」


 ……


「今日は良い天気だな」

「なんでいきなり話題を変えたんです?つまりプレイっていうのはですね」

「知ってるから!良いよ!説明しなくて!ていうか人の心を読むな!」

「いえいえ。嗜むのは重要なことです。うふふふふ」


 何かがおかしい。


 今日はお見合いコンへ出席する予定で、

 準備していたはずで、

 つまりまるで、彼女、つーか、七夏に縛られる理由がわからない。


「俺、なんかしたっけ?」

「えぇ、それはもう」


 ……マジで!?


「しかし記憶に残る限り、俺は七夏のお風呂を覗いた事もなければ、一度もラッキースケベをしたことはないんだが!」

「当然です!現実でラッキースケベを起こしたら犯罪ですよ!犯罪!」

「それもそうか」

「ていうか、この場合!さりげなくそういう事態に対応しようとしていた私が惨めです!」

「え?なんか言った?」

「つまり、アレですよ。女心のわからない豚は死ね、ということです」

「どこのファムプーリ学園だ!」

「狼は生きろ。豚は死ね」

「復唱するのか!」

「ていうか!こーいちさん!」

「ぎゃあ!」のしかかられた!

「……今の悲鳴で私の怒りのワンメーターが一つあがったのは解りますよね?」

「誰だってあげるから!」


 だってコメ一袋がのしかかったらぱないぜ?案外。


「もうデリカリーですよ!マジで!」

「おいかりーですか!」

「エッシャー!」

「というか七夏、大学行けよ!」

「こーいちさんが気付いてくれたら行きます」


 ……何に?


「すまん。七夏」

「……なんです?」

「漏れそうなんだけど」


 タンクがね。タンクが決壊しそうなんだよね。貯水タンクがさ。


「……其処でしてください」

「どんな扱い!?」

「私は受け入れられます」

「俺は受け入れられないよ!?」

「例えこーいちさんがボケても私は受け入れます」

「どんな感情!?」

「えぇい!人がここまで言ってるんです!腐れ鈍感!気付いてください!ていうか、卑怯です!いい年してんだからそこは汲んで下さい!」

「汲むも何も漏れるだけなんですが」

「私がさっきから大決壊ですよ!」

「そうか?」

「だから――」

「しかしまぁ、アレだ。うん、確かに受け入れられる」

「……えっ……それは、やっと私の想いを――」

「七夏、漏らしても、ちゃんと掃除してやるよ」

「誰が介護をお願いしますと言いましたかっ!」


 ……。


 とりあえず、間を挟む。言い聞かすように。


「はぁ。おい、七夏」

「なんです?」

「二〇万程度じゃ、良い生活できないぜ?」

「?なんの話を――」

「世の中金じゃないって言うけどさ。お金ってやっぱり大事でさ。単純に過ごしやすい、やすくないって言うのは、思ったより重要な問題なんだ」

「……」

「そこへ行くと、お前はこれからだ。女子大生。就職が決まる。給料は俺より良くなるはずだ。いずれ、な。いや、下手すれば最初から余程いいかもしれない。女性の人生は結構相手の男で変わるんだ、マジで」

「……」

「どうしたって、お金は一生ついてまわる。今は良いかもしれない。けれど、何かが決定的に変わる瞬間は来ないとは限らない。だから――」



「こーいちさんはずるいです」



「何を――」


「それにそれならそれで私は勝手に見切りをつけて出て行きます」


「……お前」

「先の事なんてどうでもいいんですよ。私は」

「……」

「目の前に好きな人が居て、将来がわからないから駄目?それは本末転倒って言うんですよ。こーいちさん。私は貴方が大好きです。……まぁ、微妙にロリ好きなのは多少気になるところですけど」

「良いよ!そこはスルーしろよ!」

「ロリいちさん」

「やめて!」

「で、ロリいちさん。私はそんな不確かな曖昧として、いつ、信用を失うかわからないお金より、ロリいちさん……じゃなくて、こーいちさんを信じたいんです。わかります?言ってる事?」

「……流石にわかる」良い感じの台詞が台無しだけど。

「私の気持ちに応えて、良い仕事をしてください」

「……」

「……」

「……ていうか、アレ?いつの間にか俺説得されてない?いつの間にか、俺七夏を受け入れることになってない!?おい!ていうか、お前、彼氏はどうした!意中の彼は!?」

「豚は死ね」

「うぇえ!?」


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