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年頃の彼女 2

 年頃の彼女 2

 

「で、こーいちさん。私の悩み、聞いてます?」

「聞くも何も、恋の悩みなんてそれこそ俺の方が聞いて欲しい位だぜ」

「ほぅ……」

「おい、なんで構えた?」


 しかも腰を落として。

 お前、前に空手やってただろうが!


「いえ、どこのドロボウ猫が魚を咥えに来たのかと思いましてね」

「……魚?」


 おい、それは俺のことか?


「やれやれ。死んだような魚に興味を抱く変態が居るとは……やれやれ」

「おい!七夏!なにげにひどい事言ってねっ!?」

「なんです?やれやれ。世の女性のためにかっさばいておくべきでしたでしょうか?」

「何を!?」

「ていうか、こーいちさん」

「ていうか近い!お前、近い近い!近いよ!」

「えぇい!もっと吐息を!もっと近づかないと!」

「わけわかんねえぞ!」

「というか、スーパーに寄って帰るんでしたっけ?」

「そうそう。ていうか、アレだ。なんで被さってきてんの?なんで俺公園のベンチにおしつけられてんの?」

「……じゅるり」

「じゅるりの意味がわかんねえよ!」

「で、なんの話でしたっけ?」


 よいしょっと言いながら、離れる。やれやれ。


「晩飯、かな」

「私はハンバーグを要求します」

「……ていうか、女子大生。好きな男が出来たなら、料理くらいしろよ。教えてやるから」

「いやいや、こーいちさんが居ないときは私、作ってますから」

「ふーん……」


 まぁ、そうなのかもな。

 手間と暇さえかければ誰だって出来ることだし。

 時間が有限でさえなければ。


「でもアレだぜ?胃袋って結構強烈だからな。これだけで離婚にもなるし、結婚にもなるんだぜ?」

「ていうか、普通、そんな手料理を振る舞うまでが大変ですから」


 ま、そうかも知れないな、と。


「部屋が悲惨てのは良く聞く話だしなぁ」

「その点、こーいちさんの部屋はキレイですよね」

「キレイって言うほど、キレイでもない気がするけど」

「いえ、作業部屋としても、一人暮らしの部屋だとしても、結構良い感じです」


 そう、この従姉妹はうちに転がり込んで来ているわけだけど。

 それはまぁ、よくある都心に近い親類で、という理由がある。社会人だし。働いてるし。そんなに貰ってはいないが、(二〇ちょいだ。割に頑張って)都心に近いけれど、微妙に外れてるので、家賃はそれなりで安く借りているマンションに住んでいるのだ(また大家が友人というのもある)。ついでにこの従姉妹、七夏が、一番懐いていた、ということらしいが、彼女の母親やうちの母親の話なので、詳しくは知らない。まぁ、子供受けはいい。多分。たまにただ単純に舐められてるだけじゃね?という疑問が近所のがきんちょ(青っぱな)共と遊んでると思う。

 ……毎回、俺、怪人の役だし。

 たまには、ライダーもやりたいぜ。


「いや、そもそも率先して遊びにいくのはこーいちさんですよ?」

「つか公園に連れ出すのはお前じゃないか」

「まぁこーいちさん、ほら、日の光成分が圧倒的に足りてないんで」

「あぁ、まぁ確かに」


 パソコンがお友達。蹴飛ばさないよ?


「いや、そのネタ解る人いるんですか?」

「奇面組がわかるお前がスゲ―よ」

「いや、それはほら、何せ、ねぇ、ひとつ屋根の下、と言いますか……」


 ごにょごにょと何か呟いている。

 いや、いやんいやん、じゃなくて。

 つーか、ウインナーパックを抱えたままいやんいやんはするな、っつーに。

 女子大生は良いな、と。

 とりあえず、日替わりの豚肉お得パックをカゴに突っ込む。

 しかしまぁ、なんだかんだで結構な付き合いになるが、まぁ、恋をしてテンションが上がってるなら良いことだ。

 大学……良いなぁ。


「飲みサー入ってただれた生活してみたかったなぁ……」

「はっ」


 鼻で笑われた……。


「良く言いますね、お家大好き、へたれの癖に」

「いやつか、七夏、さっきまでそこでうかれぱっぴーやってたじゃん」


 へたれ発言はスルー。いやほら、収入ってアレじゃん。なかなかアップしないじゃん。

 特にデザイナーって。意外ときついんだよ、割と。基本時間給だし。アルバイトに近いモノがあるよね。

 まぁ、名前が売れてれば別なんだろうけれど。


「いやいや、何を仰ってるんです?この良家の子女を捕まえて」

「初耳だわ、それ。何?相手は御曹司かなんかなの?」

「……まぁ確かに弱冠疲れたちょびひげの王子様ですけどね」

「……ちょびひげの王子様、ねぇ」

「つか、こーいちさん」

「何?」

「いい年なんですからもうちょい心の機微とかに詳しくなってもいいんじゃないですかね?」

「いや、きびだんごは足りてるかな」

「どんな状況ですか!?」

「そう言えば、七夏は就職どうするんだ?」

「いやまぁ、正直、こっちで探そうかな、とも思うんですが」

「ま、彼氏次第、だよなぁ」

「そうですね」

「……おい、なんでこっち見た?」

「いや、彼女居ないのって可哀相だなぁ、と」

「あ、そう言えば、俺の恋バナなんだ……けど……?どうした?」

「いえ、殺しとくべきかな、と」

「誰を!?」

「さぁ!言え!」

「……いや、ほら、さっき、七夏も言ってたけど俺もいい年じゃん」

「今、大多数の三十路を敵に回しましたけどね」

「いや、それは知らんけど、……っていうか、言ったのは七夏!お前だろうが!」

「そうでしたっけ?」

「それに人生いつでも青春時代!」

「どこの映画ですか?」


 でも、そんな感じじゃね?八〇年代なんてもろ。


「だから、ほら。うちの母親とかお前の母親にも良く言われるけど、今二八だろ?友達とかは結構結婚ラッシュしてるし。となると、まぁ、女性になれる的な意味合いを含みつつお見合いコンとかやらないとなぁ、と」

「……くっ……全く逆効果だよ……母さん……」

「?何を言ってるんだ?お前」


 なんかごにょごにょまた呟いてる。


 その七夏に携帯の画面を見せる。


「……明日?」

「そっ。事務所のこないだ結婚した女の子が教えてくれた仲介所でさ。結婚確実!この思い込ませ度は破格!三倍上手く効率的に結婚出来ます!っていうのが売りらしくて」

「明らかに詐欺ですよね!?」

「恋愛はエッシャーみたいなもんなんだよ」

「プロレスですか?」

「おっしゃー!(飛びかかる俺)」

「どりゃぁー!(蹴りを繰り出す七夏)」

「ま、そういうわけで明日は俺、居ないから。勝負を決めるなら胃袋が狙えるぜ?」

「……はぁ。全く。うちの母親しかり、こーいちさんしかり。なんかこう、いつも方向性を間違えるという、ね!」

「ね?……?まぁ、とにかく、そういうわけで明日。戸締まりとかよろしくな」


 で、


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