警察管 2
警察管 2
妹の双掌底で気絶した翌日。
彼氏が出来た、と言われた。
まぁ妹に別に彼氏が出来ようがそれはまぁいいんだけど。
何故かBLを読みふける探偵は不服そうに、
「うーん……」
と、挿入シーンをおっぴろげながら思案顔。
どうやら、つっちーとの、二回目のデートがおじゃんになった事を聞き及んでいるのか、それとも。
「やれやれ、ですね。はぁ」
……いや、逆さにして何も具体的にそんな部分をクローズアップしなくても――
「犯人がわかりました」
……相変わらずわけのわからない探偵だ。
しかし。
まぁいいんだけどさ。
――――妹の方に彼氏が出来るなんて!
てっきりあんな暴力娘だし、彼奴の顔が売れて
『柏木?……あぁ、あんた、柏木の妹の兄貴か』
兄貴だよぅ!
なんで彼奴の方が顔が売れてんだよ!
聞き込みがやりやすくて仕方がねえよ!
お兄ちゃん複雑っ!
となる。
だからきっと、普通の彼氏なんて無理だと思ってた。お兄ちゃん。
きっとダメンズに走るに違いないと思っていたのだ。
まぁそんな妹に彼氏が出来たのは別にいい。彼氏とは顔見知りだしな。いいコンビだろう。なんだかんだ言いながら、あの妹についてまわれるのだから、ある意味変態というか。つーか、よく付いてまわるな、と思ったもんだし。やれ、暴走族やらその辺の……まあ色々とある組織やらと関わり合いになったのは一度や二度じゃないだろうし。
変態だな。
「で、何を悩んでるんです?柏木さん」
バレバレらしい。
「妹の話なんて迂遠な事せずに尋ねたらどうです?『つっちーどうしてる?』って」
これだから名探偵は嫌いだ。
「ちなみにいつも履いてる靴下の柄があってませんよ」
言ってくれよ……。
「だからどうしたという話でもないですが」
「まぁ確かに」
コンビニで買う必要がある話でもない。
「仕方ありませんね。つっちーの下着、貰ってきてあげますよ。やれやれ」
「いいよ!別にそんな事はまるで望んでねえから!」
「柏木君……君、そんな趣味があったのかね……?」
隣の警部補の視線が気になる。今日は上司だ。昨日のヤツは今日非番。
「いやそういうわけでは――」
「え?でも此処にあるって言ったら、欲しくなりますよね?」
……
……
……
……あるの?
ちらり
「安全運転をしてください」
もっともです。
「こほん。しかし、アレだな、柏木君」
「なんでしょう?」
「まぁ他人の下着はともかく、そういう関係の相手の下着を愛でるというの決して悪い話ではないだろう」
「はぁ」
「むしろ、はきつぶす。かぎたおす。クンカクンカ。はぁはぁ。舐め尽くすくらいの心持ちでいないといかんな」
「はぁ……なるほど」
……
今、なんつった?
「下着は飾るべきだな。玄関先に」
終わってる!終わってるよ!この上司!こんなんが日本守ってるの!?え!?ていうか警部補がそんな趣味!?
「で、どうします?柏木さん。欲求不満の、……柏木さん」
区切んなっ!
わかってるよ!
もうなんか勢いだよ!
確かに遠回りだったよ!
おれは欲求不満です!
と、やってる所に、彼氏が通りかかるのが見える。大学に行く途中のようだ。
「お、妹さんの彼氏さんですか」
「見たところ、彼も下着愛好家に属するな」
おれの身の回り変態しかいねえ。
つか下着愛好家……ねぇ?
ちらっと思わず探偵の方を見る。
まるで見るのがわかっていたのか、ほくそ笑んでやがる。
「良し」
と、言うなり、
警部補がいきなり、足を運転席に突っ込んでくる。
シートベルトを外し、急ブレーキ。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!?」
……まぁ後方に車が来ていないからやったのだろう。きっとそうだろう。
きっとそうであって欲しい。
つか絶対警部補普段運転しねえだろ。
「えぇい、柏木君、君は警察管だろう。これくらい慣れたまえ」
アメリカじゃあるまいし。日本の警察にそんなハリウッドアクションをお願いされても困る。とおれは言いたい。
と思っていると、突然、二人が車を降り、
驚いて止まっていた妹の彼氏に詰め寄る。
「は?え?」
仕方なく車を降りて歩いていくと、
状況についていけない彼氏が右往左往していた。まぁそうだろう。おれだって、突然、スライドドアが開いて、車の中にいれられたら、慌てるに違いない。
まぁスライドドアじゃなくて、パトカーだけどさ。
「君、……下着は好きかね?」
「……はぁ?」
ちなみに探偵はにやにやげひげひしながらその光景を見ている。つか、オマエはいつまでおれらの所に居るんだ。仕事しろ、仕事。
自分の事は棚にあげて思う。
「好きだろ?ん?んぅ?」
「い、いや、その」
「無理はしなくていい。ロリコンと同じく、これもまた、精神病の一種だが、気にするな」
「えーと」
「犬猫を探す探偵だって、ロリコンなのだ。警察管が妻の下着に興奮して何が悪い」
同志を集めなければね。
「同志よ!」
「はぁ!?」
がっと突然、警部補が妹の彼氏の手を取る。
探偵は最高潮だ。最早、気持ち悪い笑みが満面に浮かんでいる。やだやだ。絶対頭の中とか見たくない。きっと、心が折れる映像がこれでもかというくらいオンパレードに違いない。
全く。
同じ表情であっても、あの人なら全然受け入れられるのに……
やれやれ。
「いやつか勘違いですよ!おれは同志じゃないです」
「皆最初はそう言うモンさ」
駄目だ。警部補の気持ち悪さが止まらない。
大変だな。これくらい好かれる奥さんてのも。
「だって君!履いてるじゃないか!」
……はぁ?
思わず、車に戻りかけた足を止める。
……履いてる?
何を?
「へ?」
彼氏も口をあけている。
「きっと、アレだろう。最初は履かされる、程度でも我慢できるのかも知れない。ちなみに、アレだな。君、首のくぼみ、そう、そこ。其処を殴打され、一瞬、気を失っていただろう。なかなかの武芸者だな、そいつをやったのは」
……あぁ。
目の前でパンツを確認し、
「……ぐぁ……」
顔を押さえる彼氏。
……
おれはとりあえず、羞恥に顔を染めた妹の彼氏の肩を叩いてやることにした。
なんとなく……そういうのも悪くない気もするが、まぁ……トイレとか、な。多分、出かけようとしてたんだろうし。
妹の変態性の分も含めて。
……つか、警部補……どうやって、それを見つけたんだ?
「ぐっふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふっ……ふふふふふひゃひゃひゃひゃ」
……そして探偵は最高潮。
何故か無性にあの人に会いたくなった。
……はぁ。




