ダッフルコート 3
ダッフルコート 3
おもむろに立ち上がったかっくんが机の上に置いたスクール水着をおもむろに手に取り、脱ぎだした。一瞬、一体どんな妄想を始めたのかと自分の脳みそのイカレ具合を確かめようかと思ったけど、どうも眠ってはいないらしいし、現実、喉がなろうとし、それを慌てて止め、「げほっ、げほっ」となる。
かっくん……無駄に筋肉質。
いや、痩せてると言うべきか?
目の前で淡々とかっくんが着替える。
いや、淡々ではないけど。
だって顔真っ赤だし。
私はがん見だし。
きゃー……ふんふん(←鼻息)
いやいや、変態ですな。かっかっか。
じゃあなくて。
い、一体、何をしだしたのだろう……かっくん。
「なぁやすさん」
「な、何?」
「……」
「……え、と……?」
マッパになり、スクール水着を着る。
潰れたかっくんを勝手に着替えさせた事はあるし、彼の物やら形の良い筋肉は何度か目にしてるけれど、それでも目が離せない。腹筋に勝手にちゅーした事があるのは秘密だ。
大概だ。
手元にカメラがないのが悔やまれる。
えぇい。
今からでも携帯を構え写メるべきかと思い――
……抱きつかれた。
えぇ!?
えええええええええええええええぇ!?
うぇえええええええええ!?
「あ、あのさ……」
これ傍目から見たらすげー絵だよね!?
スクール水着を着た男と普通の服の女の子。
白黒ツートンのオシャレで軽妙洒脱なガチムチ警官に捕まりかねないよね!?
「なぁ、やすさん――いや、やすの」
「ふぇっ!?」
呼び捨て!?何この状況!
もしかして新たな情況!?
来たのか!
遂に来たのか!
苦節二年!
ソロモンよ!私は帰ってきた!(むしろベッドかへいへい!)
「俺……実は」
「ちょちょちょちょちょ待って!?いいいい一体ナニを告白する気!?やっぱりスクール水着が無茶苦茶好みだったとか制服がなければ何も燃え上がらないとかっ!?」
が、
「やすのの服に反応する変態なんだっ!」
……なんかこう……
チガクナイ?
おい、カリウス。
……居ないけどさ。
付き従えよ、カリウスぅうううううううううううううううううう!
けほっ、けほっ……
普通、この流れは、そういう告白をするんじゃなくて。
まんまストレートに好きでした、って言うのが普通っていうか。
それを期待していたというか。
距離の詰め方として最適というか。
私が素直になれるというか。
いや、面倒臭いな、私。
でもそういうもんなの!
女の子はいつまでも少女漫画なんです!
ていうか、私が焦って言いつのった言葉がまんま真実とか面白味が無い上にまるで生産性がない!
ていうかなんで抱きつかれてんだ!私ぃ!
あ、でも良いにおい……じゃなくてさぁ!?
これはどう考えてもあの告白してきた年下風の男の子の方が良いわよね!?そうよね!?だからその、なんていうか、私が期待してたのは――
「なんてのは嘘で――」
と、
「やすの」
で、
「うへへへ。というわけなんですよ」
と、私は行きつけ、というより腐女子友達のバーのマスターのカウンターでのろける。
彼女ほど、こういう話を言って、
「うん――帰れぇ!」
良いリアクションを返してくれる友人はなかなかいない。
「ていうかどうして私が毎回毎回のろけ話を聞く側にまわってるわけ!?」
「いや、それよりもかっくんのスクール水着写真を一緒に見ましょうよ」
「変態かっ!」
「……ほれほれ」
「あ、でも、やっぱり見して……うわぁ……」
こんな事実を知ったらかっくんも流石にしょげるだろうか。
まぁでも、ナニも無いより、適度な刺激があった方が楽しいというか。
だから、
「うん、今度は制服着せてやろう」
「……それ、あんたが着れば?って話じゃないの?やすの?」
「青春とは……無駄な時間の使い方をしてこそである」
「やかましいわ!」
将来はよくわからないけれど。
まぁ、今が楽しい。