警察管
警察管
一応警察管だ。
一応、とつくのはらしくないからだ。とは言え、早瀬(だったっけ?)みたいなイメージじゃない。どちらかと言えば悟郎だ。多分。漢字があってるかどうかは知らない。
いや、ていうかそもそも自分を話の主人公に置き換える事自体、頭が病んでる証拠に違いない。だからアレだ。
死体の前でBL雑誌を読みふける本屋の店員が居るなんて言う幻覚が見えるんだ。
その幻覚はあろう事か、
「事件あったんでしょ?」
どこから聞きつけるのか知らないが、そしてどうしてわざわざ俺の車に乗ってくるのか謎ながらまた来たのだ。隣で上司、もとい警部は「お疲れちゃん。飴食べる?」なんて話し掛けてる。
はぁ……。
いや、いいんだけどね?どこかのちづる探偵じゃないけどさ。いつの間にか解決するというか。とりあえず、うん。
なんかグロい……。
ていうか、どうして現場でBL雑誌を読みふける必要があるんだ!
「ぐふふふふ」じゃねえよ!涎垂れてるじゃねえか!何処のよこしま先生だ!
……此奴に酒に付き合わされた事もあったな……。
……まぁ、それはいいんだけど。
ひたすら肩を叩かれてた気がする。
自称名探偵行きつけのバーのマスター……可愛かったな……。
「へぇ、刑事さん」
「名探偵梅の助手扱いです」
「それはオマエの彼氏じゃないのか!?」
「いや、こっち側の事件に関しては助手じゃないです」
「はぁ……よくわからないな」
「ただの三角関係の一角です」
「なるほど」
「勿論、三人で頑張ります」
「何をかは聞かないからな!」
「聞いて下さい!刑事さん!」
「やかましい!」
まぁそれは良くて。ひどく個人的な話なので。
「柏木、おい、柏木」
「なんですか?梅探偵」
「犯人わかった」
「マジで?」
俺が見ていた限り、現場に来てからひたすらBLを読みふけっていた記憶しか、
「此奴が恋泥棒だ」
「聞いてねえよ!」
……入ってるじゃねえかっ!
「挿入シーンですね」
「何を冷静にシーン解説!?」
「ちなみにこういう具体的な汁だくシーンより、私は汗だくシーンが好きです」
「聞いてねえよ!」
「男同士の汗が……萌ゆる!」
「萌ゆるな!」
「あっ、犯人解りました」
「なにゆえ!?」
それで瞬く間に真面目に解決してしまった。ろくでもない。マジで。
「っていう事があってさ」
「へぇ……真面目に梅って探偵だったんだ」
というワケでデート中です。
……いや、話題に出す話もなんかオカシイ気がするけどさ。まぁ、警察管やっていても、ドラマチックな話題なんてそうそうなくて。そこへ行くと、あの『自称』名探偵は確かにスゴイ。
まぁでも正直な話、探偵やら仕事の話なんて事よりも(この表現も良くない気がするけど)、個人的な欲求が満たされる状況というのが幸せ過ぎる!
まさかまさかまさかまさか!
デート出来るとは!
……いやまぁ、待ち合わせの本屋行ったらBLコーナーでガン見だった辺り、あぁ……梅さんと友達なんだな……という感想は抱いたけど。
挙げ句、「待ちましたー?」と行ったら、
「我慢出来なくて!」
いや、別にアリです。アリ。個人的な話ですが。
涎ふいてください。
みたいな。
まぁ確かに夜の仕事しているとなかなか出勤前に(特に道筋になければ)本屋に、とならないのだろう。夜勤の時に夜食買いに行って特に寄らずにすぐ戻る、ような感覚だろうか。とりあえず興奮しながら見ている様はなかなか可愛かった。
いや、仕事中も可愛いんだけどさ。
時間さえあれば毎晩通ってもいいな……。
しかしアレだな。
……なんだろう。
勝負を決めるべきだろうか?
いやいや、待て待て。
まだ『初』デートだ。焦ってはいけない。手も握っていない。いや、手を握るのは付き合ってからか?うむむむ……。というか、恋愛ってどうやってやるんだっけ?
「どうしました?」
覗き込まれたーーー―――――――ー!!!!
この人、わざとじゃないよな!?
むしろ、わざとにしてくれぇ!
わざとじゃなさそうな分、性質が悪いぞ!
心臓がばっくんばっくん言うじゃないか。
普段は上げている髪が下がり、私服はボーイッシュな感じで。
まったく。
俺をどうするつもりだぁ!
ぱないじゃないか!
「で、どうするつもりなんです?」
だからBL雑誌を読みながら死体の前で尋ねるな。オマエ、ホントは犯人最初から解ってるんじゃないよな?
「解ってたとして、納得させるには根拠が必要なんですよ。結局、自白させる、というしか方法がないんですから。相手の心の防壁を取っ払う根拠、もとい、動機を探してるんです」
解るような、解らないような言葉を言いながら読みふける梅さん。
「まぁキューピッドですし。私。ぐふふふふ」
だから涎を垂らすな、涎を。