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年上の彼女

短編シリーズは管理しにくいのでこっちに変えちゃいました 失礼

 年上の彼女


 そうです。僕が噂の――ではなく、そう、俺。

 彼女からそっちの方が良いと言われたのでそうしてる。

 正直な話、俺に主体性なんてモノは皆無で。

 何もかもが他人からの借り物で、雑誌やら本やら漫画やらラノベやら高尚な教科書やら辞典、写真やら電灯、自転車、流行、そのわけのわからない抽象的でひどくふわふわしているモノをどうにか組み合わせて構成しているのが俺である。

 つまり、何処にでも居る、愛すべき人間達の人である。

 むふふ。出だしよりオマエ、自信ありげじゃないか。だって?

 そりゃアレだよ。僕には年上の――俺には年上の彼女が居るからね。

 彼女の魅力を語るに当たって、とりあえず、念頭に置いておいて欲しい事がある。

 つまり、彼女は冒頭で述べたように、僕からすれば全てが原物で、全てが結晶と言っていい。まぁ、彼女は否定するだろうけど。しかし、少なくとも、俺が感じている事の十分の一、百分の一でも伝えたいモノだ。

 僕の身体を構成している物質で、何より誇れるのは彼女だ。誇れるのが他人というのはおかしな話だ、と言うかも知れない。けれどまぁ、これは迂遠な自己肯定と言っていい。ナルシズムというヤツだ。僕――いや、俺はナルシーである。そのすげー彼女の隣に居るのだ。さて、自信を持つな、という方が無理な話だろう。

 

 僕の中での最優先事項は彼女に認められる事だ、あり、彼女を構成する一つの物質になりたいという事と言える。


……


いや、噛んでないし。


 つまる所、彼女が自慢であると言うことは、ひいては僕もまた自慢にならねばならぬわけで、また傷つくようではいまいちという話もある。

 わけがわからない?いや、確かに。

多分、動転しているのだ。

 何故か彼女に呼ばれて、部屋に行ってみると、押し倒されてすげー舐められた。

 

 いや、ごめん、アダルトな感じではないんだ。


「なっくん……汗……」

「へ?」


――れろん……


 ……まぁ夏だし?汗かくよ、そりゃぁ。

 しかしのんこさん……あんたその可愛さは異常だよ!?俺にどうして欲しいわけ!?いやつか何!?なにゆえ汗!?舌!?なんか倒錯した世界に足を踏み入れそうだよ!?俺!


「むふ……」


 あぁ……いやいや。全く。女性ってすげぇ。傷つかないとか嘘つきました。ごめんなさい。のんこさんにはのんこさんの世界があって、その世界では『汗を舐め取る』のがなんらかのキーファクターを……じゃなくって!どうした!僕の理性!

 

「なっくん。ところで仕事は?」

「……えっ……あぁ、仕事なら」


 ――れろん……


 ……拝啓。母上。すみません。僕は彼女と付き合い始めて初めて世界の崩壊を目の当たりにしております。なんだかもう彼女の言うことなら全てを任せてしまいそうな自分が怖い。あぁ……でもそんなんなったら、多分、いやがるだろうなぁ……のんこさん。

 職場では、デートの時と全くキャラが違うと言っていい。

 職場ではきまじめ。委員長と言うべきか、いや、図書委員?砕けるところは砕いてるけど、線引きがパーフェクト。その辺の芸当はまぁ高校生には必要ない話だけどさ。なんだろう……そう自分のコントロールが上手と言うか。

 だからまぁ最初のデートでやられたね。やられた。やられまくったよ。

 服従のポーズを取ってもいいくらいだった。


 緊張緊張美人笑顔美人笑顔緊張緊張美人笑顔美人笑顔緊張緊張美人笑顔美人笑顔緊張緊張美人笑顔美人笑顔緊張緊張美人笑顔美人笑顔緊張緊張美人笑顔美人笑顔緊張緊張美人笑顔美人笑顔緊張緊張美人笑顔美人笑顔緊張緊張美人笑顔美人笑顔緊張緊張美人笑顔美人笑顔緊張緊張美人笑顔美人笑顔緊張緊張美人笑顔美人笑顔の連続。


 正直に言えばこれまで付き合って、恋愛してきた人達に泣きながら、謝ろうと思うくらい惚れた。


 全部を奪い取りたい。


 何もかもを奪い取りたい。


 強欲で、支離滅裂で、ただの性欲で――ボタンをかけたがえればひどい事になるくらい。


 表情の変化は乏しいと本人も言うが、そんな事はない。


 はっきり言って――



 ――破壊力抜群だ。



「あー……のんさん……無茶苦茶可愛いす」

「何ソレ?」


 ふっと笑いながら手を振りながら言う。

 少し潤んだ風な目、それに――

 

 なるほど、耳たぶ。


 素晴らしいじゃないか!葉風さん!


 と僕は思ったモノだ。


 易々と人の心の防壁をなぎ倒す鉄球!……いや、この表現もどうだろうな。なんかえっぢがきいて、すまーとでしゃーぷな感じが、みたいなと同じくらいふざけてる風に聞こえるかも知れない。勿論、背景込みの意味で。

 でもまぁ背景込みの意味で真面目に易々と彼女の笑顔は僕の顎に右フックをキレイに入れて、トドメのフィニッシュブローを叩き込んだ感じだ。

 そりゃ吐きますよ、えぇ、吐きます。

 可愛い、優しい、面白い、笑顔滅法素敵、無敵だよ、無敵。

 いやつか僕は何を言ってるんだったっけ?

 あぁ、そう。舐め取られて気が動転してるんだった。

 半永久的輪廻供給機関ドーナッツについて考察を続けているわけにはいかない。

 いやつか色んな意味で我慢の限界だ。

 それよりも僕――じゃなくて、俺が言わなきゃならないのは――


 ――はむ


 わー!?ぎゃー!?きゃー!?わー!?ぎゃー!?きゃー!?わー!?ぎゃー!?きゃー!?わー!?ぎゃー!?きゃー!?わー!?ぎゃー!?きゃー!?わー!?ぎゃー!?きゃー!?わー!?ぎゃー!?きゃー!?わー!?ぎゃー!?きゃー!?わー!?ぎゃー!?きゃー!?わー!?ぎゃー!?きゃー!?わー!?ぎゃー!?きゃー!?わー!?ぎゃー!?きゃー!?わー!?ぎゃー!?きゃー!?わー!?ぎゃー!?きゃー!?わー!?ぎゃー!?きゃー!?わー!?ぎゃー!?きゃー!?


 わ――――――――!?


 何故か耳たぶをはむはむされている。舌と唇の柔らかい感覚がむにむにと動く。だからどうしたんですか!?のんこさん!?なんかこうこれまでにない密着度にストレートさに僕は正直色々堪えきれませんよ!?あんたどれだけ僕を萌え殺す気ですか!?


 全く。


 いやまぁほら、わかるんだけどさ。


 駄目です。ホネヌキ。


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