猫と神社 2
猫と神社 2
目の前でストローを加える彼女がなんの気ナシに身を乗り出し、俺の髪に触れる。
ゴミがついていたらしい。
前髪から少しはみ出た瞳が可愛らしく弾ける。
そう、彼女、髪はぼっさぼさで前髪で目は隠れて服装はアメカジ、もとい大学生みたいな格好をしているが、実はすげー可愛い。
……まぁ、高校の時から髪型は爆発してたから……あまり周囲に気付かれてもいなかったがな……。
雰囲気はあるけど。
描いてるのが描いてるのだったし。
「ねぇ、何描いてるの」
「可愛い女の子のえろい感じ」
「ふーん」
ふーんで流せたヤツも流せただろう。ちなみに俺は完全赤面派です。
ムッツリですが何か?
三十路手前でムッツリなんて表現もアレだけど。
事実なのだから仕方がない。
そして此奴は相変わらず気付かない。まったく。
人の内心がどれだけバクバク言ってると思っているのやら。
つーか、あまりに近すぎてアレか?気付いて貰えない、幼馴染みの悲しさやらなんとやらというヤツか?
懐かしいのが高校の時だ。
「……身体借りても良い?」
……正直に言おう。
丁度、その時期友人から借りた「えろーん」な雑誌を読んで期待したということを!!
……まぁ実際は全裸にされてひたすら描かれたという心的外傷ものの思い出ですがね。
かりかりかりかりかりかりかりかりかり……
一心不乱に絵を描き続ける幼馴染みの女の子。
裸の俺。
あますところなく俺。裸。
……ぱなくねぇ?
「……」
「……なぁ」
「こうなってるんだ」
触るのかよ!
と思った。マジで。
……つーか良く襲わなかったな、俺。と今なら思うけれどさ。
正直今同じ状況に陥ったら我慢出来る気がしない。
いや、流石にもうその意味くらい分かってるよなぁ……?
でもまぁそんな話はどうでも良くて。
そもそも伝えたかったのはそんな話じゃなくて。
「ところで……さぁ」
「ん?」
……真剣にまきあーとを飲んでる……。
此奴……人の苦悩をまるで考えてないだろ……。
そしてすげー旨そうに飲むなぁ……。
はぁ。
いやもぅ、三十路手前だと言うのに……。
なんだろう、この距離感。
俺としてはもう一歩……。
もう一歩と言わず。進みたいんだけどさ。
果たして進めるんだろうか。
というか、むしろ、この関係が……なんて苦悩もまた厄介だ。
まぁでも……
今日は!
今日こそは決めてやる!
そう決めたんだ!
「ところで……さぁ」
と、今度は彼女が話を切り出してきた。
前髪でまた目が見えない。
……やれやれ。
「……身体借りても良い?」
おいおい。