彼の友人
彼の友人
あれ?珍しい。うちは飲み屋じゃないですよ。
……いや、怒らないでください。というか、悩み事ですか?
……へぇ……てっきり、ざっくばらんに、なんて表現久しぶりに使いましたけど、気にせずストレートにやる人だと思ってましたけど、案外悩むんですね。
いや、知りませんよ。
え?……いや悩むまでもないですよ、そう言うことは。考えすぎはよく無いですって。つか、十分ラブラブですよ、ラブラブ。
……にやけないで下さい。
にやけてない?……はい、鏡。
いやいや、何を驚いてるんです?それが今の貴女の顔ですよ。でれんでれん。
私は由緒正しきツンデレだ?……大丈夫デスか?貴女、最近、ただのでれでれですよ。
いや、無理してツンを気取ろうとしても無駄ですから。ま、日常生活が充実してれば仕事も気合いが入るし、周囲も元気になるんですよ、マジで。
そう言えばこないだ、彼奴が来てましたね、うちに。なんか悩んでたみたいで。
……いや、なんですか?その『ま、まぁ、別に興味があるわけじゃないけど、聞いても良いかな?』って。リアルツンデレは。ま、別に口止めされてないんで明かしちゃいますけれど、どうも『結婚』について悩んでたみたいですね。
いやぁ……悩んでますね。何かあったんですか?……ほぅ、ほぅ。と。
……
いや、嫁は貴女じゃないですか。
『私の嫁になれ!』
どんな告白ですか。……ま、先手を打たれたら、確かにペースを乱すでしょうね、彼奴。何の話を呟いてるんだ?いや、……なんでしょうね。俺自身よくわかりませんよ。さて、此処で一押しするべきか、種明かしするべきか。性格が悪いんで、一押ししときましょう。そうです、そうです。
彼奴、指輪を前に悩んでましたよ。
……え?
指輪を買った?……あー……この質問は『あえて』させて貰うんですが。姐さん、……プロポーズって知ってますよね?……いやそりゃ俺だって、経験者じゃないんで、正確な所は知りませんけどね。普通、此処で言う『一般常識』って、あくまで俺の幻想で、イメージなので細かく突き詰められると、なんでもないんですが、俺の一般常識によれば、やはりプロポーズは男側からの『誓い』とか『制約』だと思うんですが?
うん、それは知ってる。
ならいいですね。
え、……違う?
うんうん。
つまり姐さんはこういうワケですね。
『嫁が家に嫁ぐのが普通なら、旦那を家に縛り付ける場合、それはもう、女からのプロポーズ。絶対幸せにしてやるからと言うべき』と。
うーん……見事に一般常識を反転させましたね。
……男らしい。いや、漢ですね、最早。
漢らしさが一周回って最早可愛らしいの世界に突入してますよ。
どこの電磁砲ですか、貴女。
あぁ、大丈夫。貴女に通じなくても、解る人には解ります。
まぁ、彼奴はネット主体のデザイナーだから可能でしょうけど。共働き。
……後日談がある?いや、というか、彼奴が来てたの一昨日ですからね。
じゃあその話は三日前ですか。……随分タイムリーな話ですね。ふむふむ。そのまま、区役所に赴き、そのまま結婚の手続きをその場で……いや、既に結婚してたんですね。その事実に驚きです。もとい、どん引き。そう言えば……いや、なんでもないです。
じゃあ、彼奴が悩んでたのはなんだったんでしょうね?
……メール?あぁ、彼奴から。
……満面の笑みですね。
あぁ、はいはい。お腹いっぱいです。いってらっしゃいです。
――翌日
……いや、そのリャブリャブ度はすでに殺意を抱くレベルですね、マジで。
つかいちいち報告に来るなぁ!