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各角恋愛模様



 年下の彼氏


 年下の彼氏が出来た。私に。……うん、それがどうした、おのれリア充目という話だろう。いやいや、まぁまぁ。聞いて欲しい。これまで私に出来た彼氏というのは、年下ではなく、同い年や年上が多かった。ファザコンの気があるのは認める。ま、それはいい。


 で、だ。


 ゲロを盛大に吐きながら告られるというなかなかパンキッシュでクレイジーな告られ方をし、そしてOKを出したという謎。いやまぁ謎でもなんでもなくて、実際見た目は好みだし、仕事は早い。優しい。イケメン。気が利く。年下とは思えない、スマートさを兼ね備えてる、けれど、微妙に間抜け。まさか自分にショタ属性があった事に驚きを覚えつつ、OKした。ゲロ吐くとは思わなかったけど。スゴイネタだ、ま、それはいい。ただ一つ、問題があるとすれば


 ……バイト

 

 という点だろう。私は正社員。同じ職場だ。

 そう、職場の飲みに行き、その時、アドレスを交換し、デートを何故かすることになり、そしてゲロを吐きながら彼奴は告白してきたわけだ。すさまじい。おかしなヤツである。


「えーと……じゃあ寝ますか」


「寝るの!?もぅ!?」


 見た目は草食系という感じだったのに、意外とガッツかれた。いやいや。……悪くない。まぁその話はひどく個人的な話なので置いとくとして。ノロケついでに言うなら、思った以上に上手かった。まぁそれもどうでもいい。

 さて……

 私は二十七で彼は二つ下。社会に出てしまえば、年齢というのは存外どうでもよくなるモノだ、と思う。十代は一つ違うだけで、何かがひどく素晴らしいと、何も考えずに思ってたが……大人だからと言って、大人だと限らないと学んだのはいつだったっけ?

その点、


「のんこさん」

「何?」

「無茶苦茶可愛い」


 うーん……さてさて。色々と悩んでいるのだ。最近。料理は旨い(多分私より)、笑顔が可愛い。微妙に抜けてる所も可愛い。これが、二つ上の余裕かしらん、と思いつつ、まぁ実際収入も私が上。けれど、デートの時は向こうが多めに払う。気合い(勿論色んな意味を込めて)を入れている時は彼奴持ちが多い。


 正直に言おう。


 ヤバイ好きだ。


 ……。


 それでもって、私の口はなかなか素直に動かない。これが年上の苦悩ってヤツかしらん。……なんかこう言ってしまうと負けた気がする的な。これまで付き合った年上の方が『可愛い』と言ってくれなかったのはそんな感じなのかしらん。なんて呟いてみたりして時間を稼ぐ。つか私はのんこじゃないっつーに。……ちなみに気合い(勿論色んな意味を込めて)が入ってる時は「さん」が取れる。私が『蕩れる』。困った。困った困った困った。

 

 正直に言っちゃおう。


 怖いのだ。


 ……いや、そもそも彼奴が居なくなってしまえばそれはその苦悩云々の話では済まずに、きっともっと何かが、ねばついて、巣くって、抉っている何かが……何かがなくなる。これまで付き合って、寝て、色々としてきたが、どうも厄介な事に、巣くってしまった。


 追ったら逃げられる気がする。


 犬っぽい、此奴で彼奴に逃げられてしまうような。


 抱きしめきった瞬間、消えてしまいそうで……。

 おいおい私。どうした私。美人社長を目指していた私は何処へ行った?

 イケメン男妾でも五、六人侍らすか、かっかっか、とやろうとしていた私は何処へ行った?えぇい!恋愛は無理難題を仰る!

 などと真似ながら「あちょー」と奇声を発しながら焼きそばを作る。

 いや、ていうかアレだ。抱きしめたら消えてしまいそうで、は、普通なら男側の台詞だろう。なんだろう?まぁ確かに彼奴は微妙に乙女な部分もあって、そう、妙に可愛いアイテムが好きで、変なマニアックな……いやいやいやいやいやいやいやいや私。ちょっと待て私。どうした私。いやつまり私。いやいやいやいいや私。誤魔化すな私。

 何を考えている?

 彼奴がゲロを吐いていた瞬間、考えていたのは――


『ふむ……まぁしばらく遊んでも……』


 だったぞ?おかしいな。いつの間に。

 どうして主導権が向こうに移動している?どこで間違えた?イニシア恥部は私が握っていたのではなかったのだろうか。恥部!恥部!もうわからん!ええい!いたまれろ!焼きそば!と、焼きそばに美味しくなぁれの呪文をかけながら、ふしぎなおどりを踊ってしまう。だー!と頭をかきむしろうかと思ったが自制した。

 ……うーむ。これは重傷だ。どうしよう?結婚するべきだろうか?

 いや、待て!……難しい。

 別に一緒になっていいんだが……仕事はどうしよう?私が家事?……正直向いてないのよね、と。彼奴の部屋に行った時、いやまぁ、彼奴の部屋は私の部屋より狭いんだけどさ。何て言うの?空間の使い方とか上手くて。バイトで収入が私よりないのに、家具を上手いこと揃えてる所とか、凄いなぁと思って――ってだ・か・ら!そうじゃなくて!そうじゃないのよ!のんこ!

 いやだからのんこじゃないっつーし!

 彼奴の性だ!そう!彼奴の性!つまりはこれから電話をかけて仕事が終わったら、彼奴の性ということでご飯を奢らせて……奢らせて……むぅ……理由にしようとしてる。

 

 なんだろう?厄介だな、私。


 いやもういっその事、彼奴に主夫になって貰って、仕事しながら生きようかしら……。それスゴイかも!二人で頑張る!そしたら家賃もスゴイ安い!私大変!?いやでも……家に居るよりかは……って、い……言えるかな?も、もし、だよ?……そう、もし……


「俺がのんこさんを養うよ」


きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!


――ってやかましいわ!小さい私!大合唱かよ!

 ていうかのんこさんじゃないし!

 何て言われちゃったらどうしよう……。なんかもう……いいです。いやん。裏返して。みたいな表情になりそう。でも私、他人から見るとそれほど表情に変化ないらしいのよね。

 おかしい……一人で部屋に居る時は一歩間違えば全裸馬鹿と何も変わらない気がするのに。時々彼奴がじっと私の目を見ている時とかは多分、色々とバれてるんじゃないかと内心色々ぐじゅぐじゅしていて……ってもぅ!あー!わかんない!

 というわけで、もうアレだ!これはデートするしかない!

 そうと決めた私は結構気合いを入れて(色々と上から下まで)準備にとりかかる。


 決戦じゃ!勝負じゃ!


 結局、今日も何一つ決まらなかった。


 あー……彼奴の汗……舐め取りたいかも……


 我ながら変態だとは思う……。


 ……これって知られても大丈夫よね?


 ……うむむむ……


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