まさかまさかの情報です!!(前編)
=友樹視点=
「ーーと言う事があるらしいから、糸島さんも気をつけてね。」
「そうなんだねぇ。」
俺は休憩時間中に、先程課長から言われた事を糸島さんに話していた。
「不審者かぁ…確かに春になると解放的になって変な人が増えるって言うもんね。分かった、気をつけるね!」
糸島さんは、にっこり笑いながらそう言った。
うーん…やっぱり笑顔が可愛いなぁ…さっきまでの不安が解消されていく。
あれは俺の単なる思い込みだったのかも。
もしかして糸島さんなら、イオの事を話したら信じてくれ…いや流石に無理か。
「でも私も心配だな…福岡君、本当に変な事とか起きてない…?」
くぅ…!糸島さんが心配そうな顔で見てくる!胸の前に手を置いてるからか、儚げな感じが更に可愛さをプラスしてるっ!
「本当に大丈夫だって!糸島さんも心配性だなー。」
本当はイオの事を話したいけど、糸島さんにまで危ない人を見るような目で見られたら確実に俺は死ぬ。絶対に耐えられる自信が無い。
「それより糸島さんは、さっき課長と何話してたの?」
あっ…やばい、気が緩んで聞かないようにしてる事を聞いてしまった。
何聞いてんだ俺はっ!いや!でもまだ世間話の一環としてだから!他意は無いから!
「えっ!?あっ!いやー…そんな大した事じゃなかったよ…?」
…えっ?な、何その明らかに何か隠してますみたいな動揺は。
ま、まさか本当に課長とっ!?
俺の脳内では、糸島さんと課長が会議室で抱き合ってキスしてる想像が浮かび上がった。
だ、だって!動揺して隠す程ってそう言う事ぐらいしか…!
「あ!わ、私今日は外にお昼食べに行こうと思ってたんだ!そ、それじゃあね!福岡君!」
俺は焦りながら離れて行く糸島さんを、唖然と見送るしか出来なかった。
さよなら…俺の恋…。
=イオ視点=
なんか友樹がショック受けたみたいな顔してる。
さっきから天使状態で他の人間にバレないように観察してたけど、もしかして友樹はああいうのがタイプなのかな?
自分に自信がなさそうな芋っぽい見た目?でもそれが庇護欲を唆るとか?
ふっふっふっ…でも好きな女がいたんなら言ってくれれば良かったのに〜。
あとはあの女と友樹をサクッとくっ付けて結婚って流れで良いんじゃない?
あー…でも一応あの女の情報も聞き出しとこうかな。
友樹のヘタレ具合だと、仮にあの女に好きな人がいたら諦めそうだし、人間って些細な事で恋が冷めるって聞くしなー。
とりあえずあの女のところ行こっかな。
友樹には家に帰ってから色々聞けばいいし、最悪の場合は智天使の力を使って記憶を読み取れば大丈夫でしょ。
ボク様は窓から離れて、さっきの女の所まで飛んでいく。
=初美視点=
「はぁ〜…しまったなぁ…。」
福岡君に課長と何話してたのか聞かれて、つい動揺して逃げて来ちゃった…。
でも福岡君に課長との関係を話して良いか分かんないし…。
「う〜…どうしよう…。」
「ねぇねぇ、おねーさん。ちょっとボク様とお話ししない?」
私が悩みながら歩いていると、とても可愛い女の子が話しかけてきた。
女の子は、後ろで手を組んで覗き込むように私を見上げている。
うわぁ…凄く可愛いなぁ…。
外国の人かな?可愛く整った顔に白に近い髪色、翡翠色の瞳がとても綺麗で、甘えるような声と話し方は庇護欲が掻き立てられる。
それにしても、何だかこの女の子を見ていると、この子の言う事を何でも聞きたくなっちゃう…なんだろ…この女の子に甘えられたい、尽くしたい、喜んでもらいたいって気持ちが、心の奥底から溢れてくる感じがする。
「う、うん、良いよ!お姉さんと、お話ししよっか!」
「わぁい!それじゃあ…あそこのバス停で座って話そう!」
私は女の子に手を引かれ、誰もいないバス停に向かう。
バス停に着くと、私はバス停の横に設置してある自動販売機で飲み物を2つ買うと、ベンチに座っている女の子に飲み物を手渡す。
「ありがとー♪おねーさん!」
「えへへ…どういたしまして。」
私は女の子にお礼を言われた事が嬉しくて、頭を掻いて照れる。
やっぱり可愛いとそれだけで得だよなぁ…その点私は地味で可愛く無いし…。
「おねーさん、名前教えて欲しいなぁ。」
「あっ、自己紹介がまだだったね。私は糸島初美って言うの。よろしくね。えーと…。」
私が女の子と自分の容姿を比べて落ち込んでいると、女の子が笑顔で聞いてきた。
か、可愛いなぁ…この子を笑顔にする事が出来た…それだけで心がドキドキしちゃう…。
「ボク様は…イオって言うの、よろしくね!ついでに可愛い過ぎて間違えるかもしれないけど男だよ♪」
お、男の子だったの!?
私はビックリして改めてイオちゃん…イオ君?の全身を見るけど、どう見ても顔も体も女の子にしか見えない!
そんな私を意地悪そうにニヤニヤしながらイオ君は見ている。
「んっふっふ〜ボク様の可愛さに魅了されちゃった?」
うぅ…明らかに私が騙されてるのを楽しんでる…けど男の子と分かっても、この可愛いさを目の前にすると全部許してしまう。
「それじゃあ、おねーさん。もっとおねーさんの事を教えて欲しいなぁ。ねぇ…全部教えて?」
「はうぅ…。」
それからは私の色々な事を聞かれた。
うぅ…住所に電話番号、趣味、更に身長、体重、スリーサイズまで…この子に聞かれた事全てに答えちゃった…。
いくら相手が子供と言っても、今日出会ったばかりの相手にここまで話すのは不用心過ぎると分かってる…それでも、イオ君の役に立てれて嬉しい!って気持ちが強いんだよなぁ…。
「色々教えてくれてありがと、おねーさん!それじゃあ最後に聞きたいんだけど。」
「な、何かな。」
もう私が話せるような事って無いと思うんだけど。
「おねーさんの好きな人を教えて欲しいなぁ。」
「えっ!?す、好きな人!?」
「そうそう!もちろん恋愛的な意味で好きな人だよ♪」
わ、私の好きな人…それは勿論いるけど…。
それは心に秘めておきたいって言うか…でもイオ君が聞きたいなら…。
「えっ…えっとね…。私の同僚に福岡君って名前の同期の男の人がいるんだけど…その人の事が好きなんだ…。」
「…えっ?」
私がモジモジしながら話すと、イオ君は驚いた顔で止まってしまった。
た、確かに私みたいなのが恋愛なんて無謀だと思うけど、好きになっちゃったのはしょうがないと言うか…。
福岡君は私みたいのにも凄く優しいし、仕事も手伝ってくれる。
悩んだら相談に乗ってくれるし、何よりも話しやすい雰囲気があるから…気づいたら好きになってたんだもん!
「あっ!で、でも告白とかは考えて無くてね!一緒に働いてるだけで満足してるからさっ!」
そ、そう!一緒に働けてるだけで満足だもん!
これ以上の進展は望んでないし!
「えっ?告白しないの?」
「だ、だって告白して断られたら今の関係が壊れちゃうし…それなら現状維持の方が…。」
もし告白してフラれたりしたら、私はしばらく引きこもると思う。だって絶対に顔を合わせられないし…。
だから告白せずに現状維持で大丈夫!…たぶん…。
「そっかー…。わかった!ありがとう!聞きたい事は聞けたからボク様は帰るねっ!」
イオ君は立ち上がると、「それじゃっ!」と言い残して去って行った。
まあ、イオ君の役に立てたなら良かった…のかな?
「あっ…お昼食べてない。」
結局その日の午後は、空腹の状態で仕事をする事になった。
せめてお菓子か何か持ってくれば良かったなぁ…。
=イオ視点=
まさかの友樹が好きな人も、友樹の事が好きだったとは。
初美の方から告白する気は無いと言ってたけど、そこはボク様が友樹から告白させれば良いだけの話。
とりあえず友樹に告白させて、2人を恋人関係にする…そしたら後は2、3年…長くても5年程度で結婚するでしょ。
その間ボク様はダラダラと下界で過ごしとけば良いし、思った以上に今回の役目は楽勝なのかもしれない。
「むふふ…やっぱりボク様って運も良いなぁ。よーし!さっさと2人をくっ付けて、思う存分ダラダラするぞー!」
走りながらもボク様は、片腕を上げながら自分の幸運を喜ぶ。




