情報収集は目的達成への第一歩です!!(前編)
=友樹視点=
「うーん…」
眩しい…朝か…。
今日も仕事だから、そろそろ起きないといけないんだけど…眠い。
「おーい、いつまで寝てるんだー?ボク様が朝ごはんを作ってやったんだから、さっさと起きろよー。」
ベッドに寝ている俺の体をユサユサと揺り起こしてくるのは、結局俺の家に住む事になったイオだ。
あの後再度出て行って欲しい旨を伝えたんだが「別にいいよ?そしたら家の前で「パパ捨てないでっ!!」って大声で泣き喚くから。それでも良いなら一回家から出るけど?」って脅してきたから、結局住むのを許可せざるを得なかった。
流石に今の俺の年齢で、12歳の女の子にしか見えないイオが家の前で泣き喚いたら、この町で暮らせないどころか警察の厄介になるのは確実だ。
それに一回家から出るって言ってるあたり、何が何でも一緒に住む気満々なんだろうと考え早々に追い出すのを諦めた。
俺の気持ちを知らないだろうイオは、シンプルな青色のエプロンを着けて、セミショートのホワイトブロンドの髪を短いポニーテールにして俺の顔を笑顔で見下ろしている。
「…わかったよ、ありがとう。」
「ご飯の前に歯磨きしてこいよー!」
イオは鼻歌を歌いながらキッチンに向かう。
俺はため息を吐いて上を見上げると、ロフトから人形が顔を覗かせていた。
流石にワンルームに二人で住むのは狭いと考え、物置としてしか使ってなかったロフトをイオに譲る事にしたのだ。
いきなりの同居人に戸惑いはしたが、ご飯は作ってくれるし、部屋を見る限り少し掃除もしてくれたのか綺麗になってるし、家事は任せても良いのだろう。
それに家に誰かいた方が都合の良い時もあるので、結果的にはプラスになったと思う。
「おーい?ボーっとしてないで早く歯磨きしてこいよ!料理が冷めちゃうだろっ!!」
「ごめんごめん、今磨いてくるよ。」
キッチンから顔を覗かせて怒ってくるイオに謝罪して洗面所に向かう。
歯磨きを終えて部屋に戻ると、小さなテーブルには焼いた食パンと目玉焼きが皿に乗せて置かれていた。
「お前は朝はあんまり食べない方だろ?何も食べないのは良く無いからな!無理なら残しても良いからさ、少しでも良いから食べとけよ!」
作ってくれるのはありがたいが、昨日初めて会った相手に自分の日常を知られているのはなんか怖いな。
テーブルを見回して気になった事があったので、イオに聞いてみる。
「一人分しかないけど、イオは食べないのか?」
そう、食パンと目玉焼きは、俺の方にある一皿しかないのだ。
昨日買ってきたばかりだし、まだ食パンと卵はあると思うんだけど…。
「んー…上位天使であるボク様は食べたり飲んだりする必要はないんだよねー。あくまで娯楽の一種としてはするけどさ。」
「そうなのか…。」
確かに天使が何か食べるってあまり聞いた事無いな。
俺が知らないだけかもしれないけど。
「けどほら…一緒にいるんだしさ、イオも食べないか?」
「いいの!?」
イオは笑顔になって目を輝かせると、キッチンに戻って自分の分のパンと目玉焼きを持って来た。
「なんだ、自分の分も作ってたんだな。最初から持ってくれば良かったのに。」
俺がそう言うと、イオはバツが悪そうな顔をしながら座る。
「う、うん。あとで1人で食べようかなって…。ほら、いきなり押しかけちゃったし昨日ボク様態度悪かったからさ…。一緒に食事するのは迷惑かなって…。一晩考えて反省したんだ。」
…なんだ、傍若無人に見えたイオも反省とかはちゃんとするんだな。
まあ反省してるなら俺から言う事はないかな。
「別に一緒にご飯食べるくらいは気にしないって。ほら食べようぜ。」
「あっ!待って!」
俺が箸を持って目玉焼きに手をつけようとすると、イオが急いで止めてくる。
「ほら、この国では食べる前に『いただきます』って言うんでしょ?食べ物に感謝する儀式?なんだよねっ!」
イオは笑顔でウインクをしながら両手を合わせている。
…儀式とはちょっと違うけど、確かにそうだな。食べ物には感謝しないと。
俺は箸を置くと、イオと一緒に手を合わせる。
「「いただきます。」」
改めて目玉焼きを食べると、俺の好みの半熟になっていた。
これも俺の事を知っていたからなのか、好みもしっかり把握しているようだ。
けれどさっきと違って今は嬉しい感情の方が勝ってる。
単純かもしれないけど、天使であるイオが俺の国の文化を知って尊重してくれるのは素直に嬉しい。
「あっ、そういえば大家さんにあった場合の事を考えとかないと。このアパート一人暮らし専用で同居人禁止なんだよな。」
大家さん…優しい人だけどルールには厳しいし、バレたら最悪退去させられるかも…。
「大丈夫大丈夫。天使は頭の光輪出してる間は普通の人間には認識出来ないから。何だったらボク様の可愛さでゴリ押しするし?」
それは大丈夫なのか…?
というか普通の人に見えないとなると、イオと話してる時って他の人から見たら俺って凄いヤバい人に見えるんじゃ…。
美味しそうに食事をしているイオを見ながら、俺は別の心配事が増えた事に悩む。
=イオ視点=
「それじゃあ行ってくるからな。」
「はーい、いってらっしゃーい♪」
友樹は玄関を少し開けて誰も聞いてないのを確認してから出て行った。
おそらく、ボク様が天使は普通の人間には認識出来ないと言った事を気にして、1人芝居のように話してる姿を誰かに見られたく無いんだろうなー。
そんな友樹をボク様は笑顔で手を振りながら見送る。
「…にひ。」
友樹が出て行った後、ボク様はニヤリと笑う。
朝のやり取りで多少はボク様を信頼しただろうなー。
実際に少し優しくなってたし。
それにしてもちょろい人間だとつくづく思う。
ボク様が反省?する訳が無い!!
むしろ歴史上最高に可愛いボク様の言う事を聞かない友樹が反省するべきだろ!!
ふっふっふっ…ボク様の考えた作戦はこうだ。
まずは人間は自分の国や文化を褒められたり尊重されたら、自分の事のように嬉しくなるから、褒めたりしとけば多少は警戒が解ける。
その上で慎ましく反省した態度をしてやれば、しょうがないと許してくれる。
ついでに一人暮らしが長い友樹は誰かに料理して貰ったのも久しぶりだろうし、それも後押しになったのかも。
昨日はなぜか可愛いボク様のお願いを聞いてくれなかったけど、それならそれで別のやり方でやるまで!
少し時間はかかるけど、着実に信頼関係を築いて結婚させていく方が良いだろうなぁ。
「さーて、ボク様もそろそろ行こっかな。」
とりあえず今日する事は2つ。
一つ目はボク様の可愛さはちゃんと人間に効くのか。
今までのボク様なら疑う余地のない事だけど、友樹に通用しなかった事を考えると、下界に落とされた時にボク様の可愛さが人間に効かない様に細工された可能性がある。
権能で言う事を聞かせれば良いかもしれないけど、使い過ぎるとアイツが出て来ちゃうかもしれないし、出来ればボク様の可愛いさが効いて欲しい。
もう一つは友樹の結婚候補を探す事。
出来れば5人くらい候補が欲しいけど…友樹の冴えない顔じゃ良いとこ2人ぐらいかな。
あとは女同士で接点が無いと更に良いね。
下手に接点があると、片方と上手くいかなかった時にもう1人に告白しにくいし。
いや、フラれたところを慰めてもらってそこから恋人にって可能性も無くはないけど…。
「はぁー…頑張るかぁ…。」
せめて友樹の顔がもっと格好良かったらなぁ…ボク様の苦労も少なかったのに…。
ボク様は光輪と翼を出して家の壁をすり抜けると、空に向かって飛び立つ。
友樹の働いてる場所は知ってるから結婚相手探しはあとで良いとして、とりあえずはボク様の可愛いさを試すか。




