全ての始まりはここからです!!(後編)
都心から少し離れた場所にあるビルの中。
1人の男性がキーボードを叩きながら作業をしていた。
「福岡君。まだ仕事終わりそうじゃない?」
「あっ、糸島さん。うん、ちょっとやっておきたい仕事があって。」
キーボードを叩いていた福岡と呼ばれた男性に声をかけたのは、少し地味目な女性、糸島だった。
この2人は同期で、互いに残業する事も多い為、この様に一緒に残る事も良くある。
「良かったら手伝おうか?」
糸島と呼ばれた女性は、ムンッとガッツポーズをして、手伝うアピールをする。
「いやいや!後少しで終わるから大丈夫だよっ!なんだったら外も暗いし、駅まで送っていこうか?」
「いやいや!それこそ悪いから大丈夫だよ!…本当に手伝わなくて大丈夫?」
福岡の誘いに、糸島は手をブンブンと振って遠慮する。
しかしやっぱり福岡が気になるのか、再度手伝いが必要か聞くが、福岡は苦笑いしながら遠慮する。
「あはは、気持ちだけ貰っておくね。ありがとう。」
「そっか…。あんまり無理はしないでね?」
渋々といった表情で糸島は帰り支度を始める。
「それじゃあ、お疲れ様。」
「うん、お疲れ様ー。」
福岡は糸島を見送ると頬を緩ませる。
「いやー…糸島さんってやっぱり優しいなぁ。あんな人が彼女だったら…。」
そう。この福岡と呼ばれた男は、同期の糸島に惚れていたのだった。
糸島は確かに地味目な印象だが、優しく、自信なさげに控えめに笑うのが庇護欲を誘う、福岡にはどストライクの女性なのだ。
「いけないいけない。仕事をやらないと。あんな事言った手前、長く残業したら格好がつかないし。」
福岡は気合を入れながら、再度キーボードを叩き始める。
それから少しして、仕事を終えた福岡は夜の住宅街を歩いていた。
「はぁー…思ったより時間かかっちゃったなぁ。」
コンビニの袋を片手に持ってトボトボと歩く姿からは、傍目から見ても疲れが滲み出ていた。
今年で27歳。今の会社に勤めて4年程になるが、繁忙期は残業が多く、その分給料は良いが使う暇と体力が無いため、お金は溜まっていくばかり。
好きな人はいるが、彼女いない歴=年齢なので、好きな人を誘う勇気も無い。
「はぁー…このまま歳だけ取っていくのかなぁ」
自分の未来に悲観して憂鬱そうに溜息を吐く福岡。
その瞬間ーー福岡の目の前に何かが勢いよく落ちて来た。
「くそー…何も落とす事無いじゃんかー…。」
目の前の砂煙から少女の声が聞こえてくる。
唖然としてる福岡の目の前の砂煙が晴れると、中からは地面に尻餅をついて頭を掻いている美少女が現れた。
「えっ…君…上から降ってきた…?」
「んー…?」
福岡が呟くと、声に反応したのか美少女が福岡の方を見る。
美少女は少しの間福岡を怪訝そうに見ると、パッと顔を明るくして笑顔を見せた。
「おっ!お前が福岡友樹だなっ!?」
「えっ…なんで俺の名前…。」
美少女はニンマリと笑顔になると、腰に手を当てて福岡に指を差し、偉そうに胸を張る。
「智天使の長、イオフィエルが命じる!お前、ボク様の為に人間の女と結婚しろ!」
「…はっ?」
実家の父さん母さん。俺は今日、空から落ちて来た美少女に結婚する様に命令されましたーー。
「ついでにボク様は男だから、常軌を逸した可愛さだからって惚れちゃダメだからな。」
訂正ーー空から落ちて来たのは美少年でした。




