監視役の登場です!!(前編)
=イオ視点=
「ここが初美の家だな。」
ボク様は初美に聞き出した住所に来ると、そこには二階建ての比較的新しい一軒家があった。
たしか両親と妹と住んでいるって言ってたし、一軒家に一緒に住んでてもおかしくはないかな。
でも、今回はむしろ好都合だ。
一軒家なら上手くすれば他の家族に会わずに初美に会えそうだ。
これがマンションとかだと、家族が集まりやすいリビングは絶対に通る事になるから、初美の家族に会って事情とか聞かれそうだしね。
今の催眠状態の友樹だと受け答えがまともに出来るかも怪しいし、初美にだけ会って早いとこ繁殖行為をしてもらおう。
「よし!それじゃあ友樹!レッツゴー!」
「…おー。」
ボク様が指を刺すと、友樹はゆっくり初美の家にむかった。
よしよし!あとは初美が出てきたら、ボク様の可愛さでお願いを聞いてもらうだけだ!
さすがに夜の遅い時間に今日あったボク様が初美の家を尋ねたら、警戒されてドアすら開けてもらえないかもしれないし。
人間ならボク様の可愛い声だけでもお願いを聞いてくれそうだけど、万が一ということもあるし念の為友樹を先に向かわせよう。
「むっふっふっ!これぞボク様の完璧なさくせーー。」
その時、いきなりボク様の顔に衝撃が走って真横に吹っ飛ばされ、そのまま道路に叩きつけられた。
「ぷきゅ!!」
「やっぱり、アンタは本当に碌な事しないわね。」
えっ…ボク様もしかして殴られた!?
だ、誰だよ!ボク様の完璧に可愛い顔を殴ったのは!
ボク様が声のする方を向くと、気の強そうな眼をして、長い茶髪をサイドテールにした高校生くらいの少女がいた。
ーーていうかアイツは!
「いきなり何すんのさ!三秋!」
まさに今ボク様を殴り飛ばしたのは、天使学校時代のボク様の友達で、この地域の担当をしている最下級天使の1人、三秋だ。
「あんたが初美に変な事しようとしてたから、無理矢理にでも止めたのよ。」
「だからって殴る事無いだろ!」
「殴ってないわよ。蹴ったんだし。」
「尚更悪いよね!?」
よりにもよって、ボク様の可愛い顔を蹴るなんて、相変わらず暴力的な奴だなっ!
って、そんなことより友樹は!?ここに三秋がいるって事は、他の3人がいる可能性もある!
ボク様が初美の家の方を向くと、友樹が黒髪短髪の目付きの悪い壮年の男に押さえつけられていた。
「友樹ー!?何してんのさ夏弥!友樹を離してよ!」
「そういう訳にはいかねぇだろ、ほっといたら何するかわかんねぇし。」
友樹を押さえつけてる大人の男は夏弥。
こいつも、天使学校時代のボク様の友達の1人だ。
他にも2人いるが、周りを見渡した限り、この場にいるのはこの2人だけだ。
「おい、大人しくしてろよ!暴れんなって!」
あっ、やば。友樹に初美の家に行くように命令したから、それを実行しようとめっちゃもがいてる。
夏弥が抑え込んでるけど、下手したら友樹が怪我して一大事だ!
「友樹ストップ!一旦落ち着いて!」
ボク様が再度命令すると、友樹はピタリと動きを止めて、大人しく夏弥に抑え込まれた。
「なんだこいつ?えらくイオに従順だな。」
「どーせ、また可愛さでゴリ押ししたとかでしょ。いつもの事よ。」
…やばい、三秋と夏弥は勘違いしてるけど、とても催眠で支配してるなんて言えない。
2人とも乱暴な性格してるけど根は真面目だから、催眠してる事がバレたら怒ったり叱ってきたりとかで面倒なことになる。
ボク様説教とか嫌いだから、なんとか誤魔化さないと。
「ボ、ボク様可愛いからね!言う事を聞いちゃうのはしょうがないね!」
「やっぱりね。あんたねー…ほどほどにしときなさいよ?いつか絶対痛い目見るわよ。」
とりあえず誤魔化すことには成功した!
あとはこの場を適当にやり過ごして、また後日やり直すことにしよう。
今度は事前に、周りに誰もいないかも確認しとこ…。
「…違う。イオは嘘ついてるよ。」
「すみません。遅くなりました〜。」
この気怠げな声と、おっとりと間延びした声は!
ボク様が声の方を向くと、丁度空から降りてきた2人の天使がいた。
「琴春に冬音!」
片方の、黒髪のおかっぱ頭をしており水色の音符マークの髪留めを付けている中学生程の少女が冬音。
もう片方の、茶色のロングヘアーに男性と比べても高い身長、微笑みを浮かべた優しげな目、そして何よりも天使の法衣を押し上げる豊満な胸が目立った大人の女性が琴春だ。
この2人もボク様の天使学校時代の友達で、よく5人で行動してたんだけど、まさかこんな形で再集合するとは…。
「イオが嘘ついてるってどういうことだ?」
や、やばっ!冬音が余計な事言ったから、三秋と夏弥の2人が疑問を持ち始めてる!
「それは…」
「わぁー!わぁー!何でもない!嘘なんてつく筈ないじゃんか!このボク様が!」
「いや、そんな反応されると余計怪しいんだけど。」
三秋がジト目で睨んでくるけど、今は無視して誤魔化さないと!
ボク様は素早く冬音に近づくと、冬音の口を手で押さえる。
「むぐっ…」
「あはは!冬音は何言ってるんだろうね!たぶん今眠ってて、さっきのは寝言だったんだよ!」
「バッチリ起きてんだろ。」
うるさい!ボク様が寝てるって言ったら寝てるの!
とりあえず冬音は買収なり何なりして、黙ってて貰わないと!
「先程、家の中でそちらの男の人に催眠かけてたんですよ〜。」
「琴春!?」
しまった!まさか琴春が言うなんて!
4人の中だと、ボク様に1番従順だったのから油断してた!
「「はぁ!?催眠!?」」
三秋と夏弥が驚いた顔でボク様を見てくる。
べ、別に良いじゃん、こっちの方が確実だったんだもん!
そもそも友樹がヘタレなのが悪い!ボク様は何も悪くない!
「お前何やってんだよ!超えちゃいけないライン考えろよ!」
「そこまでして天界に帰りたい訳っ!?あんた自分がどんだけ最低な事してる自覚ある!?」
「ううううるさい!ボク様何も悪くないもん!文句ならヘタレの友樹に言ってよ!」
三秋と夏弥が文句を言ってくるが、ボク様にだって言い分はある。
だってこうでもしないと、一生友樹が結婚しないと思ったんだよ!
2人は友樹のヘタレ具合を知らないから言えるんだ!
「そもそもなんで、4人がここにいるんだよ!確かにこの地域担当の天使だってのは知ってたけど、こんな都合よく集まるなんておかしいじゃん!」
ボク様は疑問に思ってた事を聞く。
いくらなんでも、この時間にこの4人が集まってるなんて不自然すぎる。
だって夜だよ?それも住宅地の中だから、どこかの店に集まってるとも言いづらいし。
本当に運悪く誰かの家に集まってたなら話は別だけど…だからって今さっき来たばかりのボク様に、こんな早く対応出来るのもおかしい…これじゃあまるでーー
「…偶々じゃないよ。私達はイオの監視を任されてるから。」
ボク様の手を除けて、冬音がそう言った。
やっぱりボク様監視されてたのか!
それならこんな早く対応出来るのも納得だわ!
「監視って誰に頼まれたの!も、もしかして兄様!?」
「…違う、ラグエル様から任命された。」
ラグエル様かよっ!あの人ボク様の事信じてないの!?確かに催眠とか使ったけど!
ボク様の頭の中では笑顔で親指を立てているラグエル様の顔が浮かび上がる。
く、くそぅ…いざとなったら4人には協力してもらおうと思ったのに。
監視役になってるんなら協力は期待できない。
むしろボク様が何かしたらラグエル様に報告されたりするだろうなぁ…。
けどボク様だって、まだ諦めた訳じゃ無い!
「智天使の長、イオフィエルが命じる!お前達、ボク様の邪魔はするな!!」
ワンチャン監視と報告だけを命じられて、止めるのは命じられてない事にボク様はかける!
この4人には天使学校時代に散々ボク様の可愛いで押し通して来たから、多少ボク様の可愛いさに見慣れててお願いを聞いてくれない可能性もあるけど、上位天使としての命令なら聞かざるを得ないからね!
さぁ!ボク様の邪魔をするなよっ!
「聞かねぇ。」
「嫌よ。」
「…やだ。」
「すみません。」
「何でだよ!ボク様の命令だぞ!聞けよ!」
智天使のボク様の命令を断る下位天使がどこにいるんだよ!友達って言っても上司の命令は聞けよな!
やっぱりラグエル様から止めるようにも言われてたのか!?
「すみませんイオ君。ラグエル様からは監視と報告をする様に言われて、止めろとは言われてないのですが、ミカエル様からイオ君が無茶な事をしようとした時は止めるように言われておりまして。」
兄様かよっ!何だよあの2人、ボク様の事全然信用して無いじゃん!確かにその予想は当たってるけども!セフィロトの樹を放火した前科もあるけれど!
ボク様の頭の中では、ラグエル様に加えて兄様も笑顔で親指を立てている光景が浮かんだ。
「うぅ〜…!」
どうしよう…思った以上にやり方が限定されてる。
こうなったら報告される事を前提で、この4人を気絶させて無理矢理進めるしか…。
「…ついでに言うと、ミカエル様の天使回線も知ってるから、変な事したら直ぐにミカエル様に連絡する。」
お、終わった…。
兄様なら連絡されたら、絶対に秒で飛んでくる。
もし4人を気絶させようとしても、1人でも残したら直ぐに兄様に連絡されて詰む…。
ていうか何で兄様の連絡先知ってんのさ!
天使回線は、天使同士が口に出さずに連絡出来る昔ながらの連絡手段。
もちろん相手の天使の連絡先を知ってるのは大前提だけど、下位天使が上位天使の連絡先を知ってるなんて普通じゃあり得ない。
例えるなら、アルバイトが社長個人の連絡先を知ってる様なものなんだから。
いくら監視役だとしても、まずは間に中位天使とか他の上位天使挟むでしょ!天使から熾天使に直通で連絡するとか聞いた事無いんですけど!
うぅ…とりあえず友樹の催眠を解いて…友樹って謝ったら許してくれるかなぁ。




