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境界に立つ者たち  作者: 麻婆豆腐


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第43章 並び立つ数字と重なる影

成績発表は、もはや日常の一部になっていた。


掲示板の前に人だかりができ、

誰かが名前を見つけては声を上げる。


「……まただ」


誰かが、呆れたように呟いた。


最上段に並ぶ名前。


ローデリク

カイオン


同点一位。


それは、ここ最近では珍しくもない光景だった。


「またローデリク様と、あの平民か」

「いや、もう平民って呼べないだろ」

「二人とも異常だよ……」


ざわめきの中、

ローデリクは腕を組み、満足げに数字を眺めていた。


(当然だ)


(俺が一位でいるのは)


横目で、隣の名前を見る。


カイオン。


その視線に気づいても、

当人はまるで興味がない様子で掲示板から離れていく。


「次、講義だぞ」


淡々とした声。

それだけ。


(……面白くない)


ローデリクの口元が、わずかに歪んだ。



一方で。


少し下の位置に、安定した名前があった。


リュシア


二位。

あるいは三位。


派手さはないが、

決して崩れない位置。


「また上位ですね」


誰かが言う。


「でも一位じゃないんだ」


その言葉を、

リュシアは気にも留めなかった。


(順位は、結果の一部)


(大事なのは、理解できたかどうか)


ノートに視線を落とし、

次の講義の準備をする。


その横で――


「……なあ」


フェリクスが、欠伸を噛み殺した。


「今回、俺何位だと思う?」


「聞いてないんですか?」


リュシアが呆れたように言う。


「どうせ五位以内でしょう」


「お、正解」


フェリクスは笑った。


「勉強してないのにね」


「してない“ように見える”だけです」


リュシアは淡々と返す。


実際、フェリクスはいつも誰かと話しているか、

中庭で女の子に囲まれているか、

あるいはリュシアたちと雑談している。


それでも、

五位以内から落ちたことはない。


「器用ですね」


「才能ってやつ?」


冗談めかして言いながら、

どこか本気でもある声音だった。



その日の夕方。


ローデリクは寮の自室で、封書を睨んでいた。


家紋入りの封蝋。


開ける前から、内容は分かっている。


——案の定だった。


『一位を取り続けろ』


『貴様は、我が家の名を背負っている』


『負けは許されない』


短く、強い言葉。


労いはない。

評価もない。


あるのは、命令だけ。


ローデリクは、紙を握りしめる。


「……ちっ」


机に投げ捨て、椅子にもたれかかった。


(俺は、ちゃんと結果を出してる)


(なのに……)


脳裏に浮かぶのは、

精霊術で注目を集めたカイオンの姿。


成績で並び続ける、あの背中。


そして――

池のほとりで声をかけてきた、

あの“にこやかな上級生”。


ローデリクは、小さく呟いた。


「……勉強会に、これからも通わないとな」


その言葉は、

自分に言い聞かせるようでもあり、

誰かに縋るようでもあった。


外では、夕鐘が鳴っている。


成績表は、ただの紙切れだ。


だが、

その数字の裏で――

確実に、何かが絡まり始めていた。

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