表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界に立つ者たち  作者: 麻婆豆腐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/25

第24章 残された判断

夜。


境界の街の宿は、いつもより静かだった。

昼間の喧騒が嘘のように、廊下には足音もない。


エリアスは、寝台に腰を下ろしたまま、剣を磨いていた。

だが、刃に映る自分の顔を、どこか他人のように感じている。


(……終わった、はずなのに)


将軍は裁かれた。

計画は潰えた。

戦争の火種は、ひとまず消えた。


頭では、そう理解している。


それでも――

胸の奥に、残っている言葉があった。


「国に恥じるつもりはない」


あの男は、そう言った。

捕らえられ、逃げ場を失い、それでも背筋を伸ばして。


(……恥、か)


エリアスは、手を止める。


恥とは何だ。

負けることか。

捕まることか。


――違う。


あの男は、自分が何をしているかを分かっていた。

それでも動いた。


思い出す。

部下たちの動き。

無駄のない配置。

逃げ道を残した指揮。


(……逃げる気は、なかった)


最初から、成功しなくてもいい作戦。

陽動。

時間稼ぎ。


そして――

“責任を引き受ける役”。


エリアスの指が、無意識に握られる。


(使われたんだ)


将軍は、自分の意思で動いた。

だが、選択肢を与えられてはいなかった。


誰かが、上から見ていた。

名前を出さず、顔も出さず、

「この役をやれ」とだけ命じた存在。


(……まだ、終わってない)


境界で起きたことは、

あの将軍一人の罪ではない。


もっと大きな、

もっと静かな“判断”が、背後にある。


エリアスは、剣を鞘に戻した。


眠るためではない。

逃げるためでもない。


(次は、見逃さない)


自分が何者になれるかは、まだ分からない。

英雄でも、軍人でもない。


それでも。


(……使われる側で、終わるつもりはない)


窓の外。

境界の夜は、変わらず静かだった。


だが――

どこかで、確かに次の火種が、くすぶっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ