第2章 村の外
家に近づくと、妹が駆け寄ってきた。
「おかえりなさい!」
父が問う。
「何があった」
次男が簡潔に説明する。
山賊との衝突と、止めたこと。
父は短く言った。
「なら、備える」
昼前、母が戻る。
畑を一目見て、言った。
「全部じゃないわね」
夕方、村長が外套姿の女を連れてきた。
「帝国アストリア、監察補。レグナです」
女はエリアスを見る。
「帝国は、
あなたのような人間を
辺境に埋もれさせておくほど、
余裕のある国ではありません」
一拍置いて、続ける。
「判断を止めなかった人間を、
いま、必要としています」
夜、家族が火を囲む。
父は語る。
傭兵という仕事の孤独と、
与えられた機会の重さを。
次男は言う。
「知らないままより、
知って戻る方がマシだ」
長男は、穏やかに笑った。
「お前が決めろ」
夜更け、母が言った。
「人を治す国も、
信じるより学ぶ国もある」
少し間を置いて、続ける。
「……私には、
置いてきたものがあるの」
エリアスは、母を見る。
「……置いてきたもの?」
母は一瞬だけ黙り、
それから、にっこりと笑った。
「なんでもないわ」
「また、
家に無事帰ってきたら話す」
翌朝。
固いパンと薄いスープ。
いつもと同じ朝食。
エリアスは言った。
「……行ってくる」
弟妹が顔を見合わせる。
「にいさま、いなくなるの?」
「外だよ」
妹が言った。
「おかえりなさいって言うから」
その言葉が、
命令でも約束でもないことが分かって、
エリアスは、思わず笑った。




