表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界に立つ者たち  作者: 麻婆豆腐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/28

第17章 止められるもの

第17章 止められるもの

夜明け前。


アストリア王都の空は、まだ色を持っていなかった。


静まり返った王宮の一角で、

レグナは机に広げられた地図から目を離さずにいた。


境界。

神殿。

そして――王都内部。


線は引かれていない。

だが、繋がっている気配だけは、はっきりとある。



「……来ました」


低い声とともに、扉が開く。


マルクスだった。


夜を越えて戻った衣には、

わずかな埃と疲労が残っている。


「リュネリアからの最終報告です」


レグナは、顔を上げた。


「話して」



マルクスは、要点だけを伝えた。


・境界で捕らえられたガルディアの軍人

・裁きの場で語られた“陽動”という言葉

・本命は、別の場所にあるという示唆

・そして――


「神殿は、この件を“宗教制度内部の逸脱”として処理する方針です」


レグナの指が、地図の端を押さえた。


「……つまり」


「国家間問題には、しない」


「はい」


マルクスは頷く。


「その代わり――

 こちらが止められなければ、次は政治の問題になります」



一瞬、沈黙。


それは恐怖ではない。

計算の時間だった。


「……間に合う」


レグナは、はっきりと言った。


「まだ、完全には噛み合っていない」


「神殿の動きが鈍る時間を狙うなら――

 次は、明後日の夜明け前」


マルクスが、目を見開く。


「阻止できますか」


レグナは答える前に、一度だけ息を整えた。


【失敗すれば、責任はすべてこちらに来る】


【それでも】


「ええ」


彼女は立ち上がった。


「阻止します」



命令は、短く、正確だった。


・王都内の神殿関係者の再確認

・入退記録の照合

・神官を名乗る者への“形式的な再審査”

・そして――


「騒ぎは起こさない」


「逃げ場を与えず、

 “正規の手続き”の中で止める」


それは、

境界で見た“責任が消える構造”を、

逆手に取るやり方だった。



夜明け。


王都の神殿に、一人の神官が入ろうとした。


年齢、装い、所作。

どれも不自然ではない。


だが――


「少し、お待ちください」


静かな声が、足を止めた。


振り向くと、

そこにいたのはレグナだった。


「確認を一つ」


「派遣証の再提出をお願いします」


男の目が、わずかに揺れた。


それだけで、十分だった。



拘束は、一切荒立てずに行われた。


声も上がらず、

刃も抜かれない。


ただ、

逃げる理由が消えただけだった。


後に判明する。


その男は、

ガルディア側が送り込んだ監察官を装う者だった。


将軍グナエウス・ヴァレンティアを解放するための、

最後の布石。


だが――

踏まれることはなかった。



すべてが終わったあと。


マルクスは、静かに言った。


「境界で止められなかったものを、

 王都で止めた形ですね」


「ええ」


レグナは、窓の外を見た。


朝日が、ゆっくりと街を照らしている。


「でも――」


彼女は、続ける。


「黒幕は、まだ見えていない」


「証拠も、

 繋がりも」


「そして、

 王妃暗殺未遂の闇も」



勝ったわけではない。


ただ、

致命傷を防いだだけだ。


それでも――

止められる者が、ここにいる。


レグナは、静かに息を整えた。


「……次は」


「境界の外だ」


その言葉が示す先を、

マルクスはすでに理解していた。


ガルディア。


そして――

【この事態を“見ていた”若い者たち】


物語は、

次の段階へ進む。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ