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第六章:冬の余韻
2026年の冬。
クリスマスのニュースが流れる寒い朝。
淳也は35歳になっていた。
大阪の会社は相変わらずで、
毎朝の満員電車、
デスクでのルーチンワーク、
帰宅後の家族との時間。
すべてが穏やかに回っている。
彩花はパートを続けながら、家事をこなす。
結衣は中学一年生になり、バスケ部に入った。
練習がハードで、
帰宅するとすぐに風呂に入って寝てしまう日も増えた。
幸恵との最後のメッセージは、
2025年の年末だった。
幸恵から:
「淳也くん、幸せでいてな。無理せんように」
淳也から:
「うん、幸恵もな。体に気をつけて」
それきり。
既読はついたけど、返事は来なかった。
淳也はそれを、
幸恵なりの優しさだと受け止めた。
もうこれ以上、かき乱さないでくれているんだ、と。
でも、胸の奥の残り火は、
完全に消えてはいなかった。
通勤電車の中でふと窓の外を見ると、
川沿いの景色が安威の土手を思い出させる。
焦げた匂いが、鼻の奥に蘇る瞬間があった。




