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不燃花  作者: 朝梅雨
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第三章:別れの色


九月。


幸恵が転校することを知ったのは、

学校が始まってすぐだった。


お父さんの仕事で、神戸へ。


「急に決まってん、ごめん……」


土手で、幸恵は目を赤くしていた。


僕は不燃花を摘んで、彼女に渡した。


「これ、持って帰って。

燃えへんから、ずっと残るよ」


幸恵はハンカチに丁寧に包んで、

ポケットに入れた。


最後の日、学校でクラスメートが花束を渡した。


幸恵は笑顔で「みんなありがと」って言ったけど、

僕と目が合った時、少しだけ特別な表情をした。


駅まで見送った。


ホームで幸恵が手を振る。


電車が動き出して、

彼女の姿が小さくなるまで、

僕は立っていた。


胸が空っぽになった。


安威の秋は急に寒くなった。


土手に座っても、

幸恵のいない景色は灰色だった。


新しい住宅地が広がり、

田んぼが少しずつ埋め立てられていく。


僕の心も、少しずつ埋められていくようだった。


中学を卒業し、高校、大学、そして就職。


僕は大阪の会社で働く普通のサラリーマンになった。


大学時代に知り合った彩花と付き合い、結婚。


娘の結衣が生まれた。


小学6年生で、

来春から中学生になる年頃だった。


妻は優しくて、家庭は穏やか。


休日は結衣と公園に行ったり、

彩花と一緒に夕飯を作ったり。


でも、時々、ふと安威の土手を思い出す。


幸恵のことは、胸の奥に鍵をかけて封印していた。


触れたら、家族への裏切りになる気がして。



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