表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

2.

.


「…なにここ?」


「メイリンお嬢様が目を覚まされたわ!

すぐに主治医をお呼びしてっ!」

「はい!」


メイリン…?何を言っているの?

私は_…。



眩しさと浮遊する感覚に目を開くと、

目に飛び込んできたのは知らない女性たち。


私が寝ているベッドの周りを、

慌てたように走り回っている。


キョロキョロと辺りを見渡すが、

こんな広いベッドも高そうな装飾が施された壁も、

何一つ見覚えがない。



病院、にしては豪華すぎるよね…。


「ん…?」


ふと横を向くと見えた鏡に映る私は、

綺麗なブロンドヘアにまるで深い海のような青い瞳。


そして、小さな体は

まさに子供そのものだ。

…子供?


「なにこれっ!!」

ガタンッ

「いけませんっ、お嬢様っ!」

「痛っ……!?」


鏡に近付こうとした私は地面に足がつくや否や

ド派手にベッドから転げ落ちた。


…ん?

「…足の感覚がない…?」


床についた両手はこんなにも痛いのに、

ぶつけた筈の右足に痛みを感じない。


それどころか、触っているはずなのに、

殆ど感覚がない。


…もしかして、事故で足が?


「大丈夫ですか!?」

「あのっ、足が動かなくて…」



「はい?メイリンお嬢様の足は

生まれつきではありませんか」

「…えぇっ!?」



.

「特に異常はありませんね。

 きっと病み上がりで混乱されていたのでしょう」


あの後、すぐにベッドに戻された私は、

侍女が連れてきた私の主治医という男の

診察を受けていた。




どうやら私は、別の世界へと転生したようだ。


信じ難い話ではあるが、

これが夢でないのは、診察の為と言って

全身を隈なくチェックされた時に確信した。


診察に使われたのは、聴診器ではなく、

手から放たれる得体の知れない光。


そして、あのゾワっとする感覚が夢のはずがない。


…さっきぶつけた手だってあんなにも痛かったし。



「しばらく食事は粥などの消化に良いものを。

 それと、食後にはこちらをお出しして下さい。」


そう言って、サラサラと紙に何かを書き、

近くにいた侍女へ手渡す。


「分かりました。」



それから分かったことは、

この世界は私が書いた物語であるということ。


前世の世界と言うべきか…いや、

世界が違うから前世とは言わないのかな。

私は、日本で生まれ育った普通の女の子だった。


強いて言えば、本を読むことが好きで、

小さな頃から小説の中のヒロインに憧れていた。


みんなから愛される、そんなヒロインに。



だから書いたのだ。


タイトルは

『お姫様は愛される』


我ながらド直球すぎるタイトルだと思ったけど

他には思いつかなかった。


だって、この本はズバリ、

ヒロインの女の子が皆から愛される

恋愛ラブロマンスなんだから!


学園に通うため、田舎から出てきた

男爵の娘であるヒロイン、エミリー・フォールド。


彼女は可愛らしい外見と明るい性格を持ち、

少々世間知らずな所はあるが、

趣味は料理と裁縫という家庭的な面もある。


そして何より、貴族令嬢達とは違って、

謙虚で素朴な姿に、金と権力が渦巻く貴族社会で

過ごしている学園の令息達は心惹かれていく、

というのが物語の主軸である。



そして、もちろん、ストーリーを引き立てるための

『悪役令嬢』も忘れてはいけない大事な要素!


やっぱり恋愛を進展させるには、

立ちはだかる壁が必要だからね。


ヒロインと主人公達の関係を妬み、劣等感から

ヒロインをいじめるが、結果として

よりヒロインと彼らの距離を縮めてしまう上に

自身は主人公と兄弟たちに見放されるという

何とも不遇な少女だ。


そして…

「…なんで私がその悪役令嬢になるのよ…」


ヒロインであるエミリーをいじめていた主犯格こそ、

この私、メイリン・サイアーズである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ