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舟屋暁屋

星空のしたふたり

作者: 山本大介
掲載日:2025/02/26

 ちょっと大人になった茜とケンジのお話。


 茜はベッドに上に胡坐をかいて、鳴らないスマホを見つめている。

 着信音が鳴りだす。

 彼女は一度、息を吸い、五秒待ってから電話に出た。


「なに」

「よう」

「で」

「うん、明日帰ろうと思ってる」

「急じゃん」

「うん、まあ、サークルの忘年会なんかがあって」

「ええのう、学生さんは」

「茶化すなよ。で、明日の夜は暇?」

「私、仕事だよ」

「分かってるよ。だから、夜にしたんだよ」

「なにするの」

「なにって、まあ、何だ、夕食のついでに星でも見に行こうかと思って」

「ふーん、ロマンチストなのね」

「なんか、棘のある言い方だな。仕事で何かあった?」

「別に、じゃ、仕事が終わったら迎えに行くわ」

「ああ、さんきゅ」

「夕飯は当然、奢ってもらうわよ」

「そこは、社会人さんが・・・」

「ん?」

「わかった。わかった。じゃ、明日」


 茜はスマホを投げると、ベットへ倒れ込んだ。

「学生さんはいいのう」

 蒲団に顔をうずめ、うっ伏しながら、思わず独り愚痴を呟いた。


 

 12月14日の翌日、茜は日中、仕事に追われてフラフラになりながら家へ帰りついた。

 さっと風呂に入り、化粧をして出かける準備をする。

「あら、おめかししてどこに行くの」

 母がニヤニヤしなかせら声をかける。

「知ってるでしょ」

 幼馴染の健司と腐れ縁なのは、母も重々承知している。

「まあ、お互い大人なんだから、いろいろ言わないけど、責任と節度を持ってね」

「・・・なにそれ、お母さん」

「あくまでも一般論よ。あなたたちはまだ若いっ。ま、早いとこ孫の顔が見れるのは悪くないけどね」

「お母さん!」

「失礼。失言でした」

 母のてへぺろに、茜は肩をすくめ溜息をついた。

「じゃ行ってくる」

「おい、茜」

「なに、お父さん」

「車で行くのか」

「うん。じいちゃんの軽トラ借りるね」

「あれ、半年以上動かしてないぞ」

「大丈夫、昨日の夜、ちょっと走らせてついでにガソリン淹れといた」

「用意周到だね~」

 夫婦はニヤニヤしながら同時に言った。

「ああ、もう、行ってくるよ」

 茜は両親にしかめ顔を見せると、2人はサムアップで返した。


 家を出ると、外の薄暗い闇に白い息が吸い込まれていく。

 ここ最近になって、ようやく寒さを体感するようになった。

「う~寒っ」

 茜は小走りに裏庭へと走り、軽トラに乗り込みエンジンをかけた。

 キュルル、キュルル、キュルル、三度キーを回しエンジンが唸りをあげる。

「さて行きますか」

 独り言を呟き、彼女はアクセルを踏んだ。


 家の前の細い路地を50mくらい走ると、矢留家がある。

 茜は窓を開けると、家に向かって言った。

「ケンジいくよ~!」

「あっ、茜ちゃん、ちょっと待ってね」

 健司の母がニコニコしながら、家の中で大声で叫ぶ。

「健司、茜ちゃん来たよっ!」

「わかってるって!」

 返す健司の怒鳴り声。

「レディを待たせるなっ!」

「茜のどこがレディだよ」

 茜は矢留親子のやりとりに思わず苦笑してしまう。

 ドタンバッタンと家の中が響き渡ると、健司が追い出されるように出てきた。


「悪い、悪ぃ、待った」

「別に」

「ホレ」

 健司は缶コーヒーを手渡す。

「ありがと」

 茜は両手で受け取ると、ぬくもりを感じた。

「荷台に置いていい」

「何置くの?」

「天体望遠鏡とテント」

「本格的ね」

「まあね。今日、ふたご座流星群が見れるっていってたから」

「ふーん、ロマンチストね」

「そうか」

「だよ」

 健司は荷台に乗せると、助手席に乗り込んだ。

「じゃ、行こうか」

 そう言う健司に、

「どこへ?」

 と返す茜、

「星野村」

「遠いよ」

「星を見るならあそこが一番だろ・・・ドライブ、ドライブ」

「へいへい」


 通り道にあったファミレス「ジョイフル」で夕食を済ませた二人は、コンビニでお菓子やジュースを買って星野村の池の山キャンプ場へとやって来た。

 そこは誰もいないキャンプ場だった。


「今日は珍しい天体ショーだし、誰かはいると思ったんだけどな」

 健司は懐中電灯を照らし、荷台から荷物をおろした。

「だからと言ってこんな寒い日に、キャンプ場にくる人なんて、どうかしているわよ」

 茜はスマホのライトモードで辺りを照らす。

「じゃ、俺らはどうかしているな」

「ま、そうなるわね」

「うん、ま、ほら、貸し切りじゃん。夜空も星も独り占めだぜ」

「物は言いようね」

「ちぇ」

 健司は手早くテントを組み上げた。

「じゃ、お姫様どうぞ」

「あれ?私、レディじゃないよね」

「・・・おふくろとのやり取り聞こえていたのかよ。売り言葉に買い言葉だよ」

「さよけ」

 茜はテントの中に入った。

 健司はずっと夜空を眺めている。

 眺めている。

「どうしたの?」

 あんまりにも長い事、星空をみている彼に彼女は話しかけた。

「あのう」

「何?」

「ふたご座流星群って何時頃から降るんだっけ」

「知らないわよ。アンタ、調べもせずに勢いできちゃったの」

「まあそうなるな」

「呆れた。ちょいまち、今スマホで調べてみるから」

 茜は手早くスマホで流星群を検索する。

「すまん」

 謝る健司。

「あー!アンタ、今日は今日でも流星群は朝方のことみたいよ」

「真にすまん・・・はあ」

 役立たずとなった天体望遠鏡を片しながら平謝りをする健司。

「しょうがないやっちゃ」

 茜はテントで寝転びスマホ片手にお菓子を食べはじめる。

「・・・・・・」

 健司はしばらく黙って星空を見続ける。

 それから、

「よっ」

 健司は原っぱに寝転び星を眺めた。

「・・・・・・」

 茜はちらりと彼の寂し気な様子を見る。

「あー星が綺麗だなあ」

 大げさに言う健司に、

「へいへい」

 茜はごそごそとテントから這い出て、彼の隣で仰向けになり空を見た。


「星が近いね」

「そうだろ」

「キラキラしてる」

「星はいいよね」

「オリオン座がはっきり見える」

「来てよかっただろ」

「流星群が観られたら、もっと素敵だったかも」

「それは言わない約束でしょ」


「はははは」

「ふふふふ」

 2人は笑い合った。

「茜」

 健司は茜をじっと見た。

「うん」

 彼女はゆっくりと目をつぶる。

 互いの唇が触れた瞬間、

「へぶし!」

 茜は大きなくしゃみをしてしまう。

「ああ、びっくりした」

「ごめんごめん・・・寒くて」

 茜は身体を震わせる。

 健司はようやく体感的な寒さに気づき、苦笑いを浮かべる。

「ラブホ行く?」

「いこか」

 彼の問いに、彼女は笑って答えた。

 星空の下、ふたりは手を繋ぎ歩きだした。



 星空の下といえば・・・でぃすたんす(笑)。

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