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アーバンヒル侵入

作者: 瀬田正義

   アーバンヒル侵入

   

              瀬田 正義

              

 昔、良くしてくれた友達に伝えます。

 

 

 俺の名は瀬田正義。松戸市で産まれた。父は松戸市役所の職員で母は平凡な主婦だ。三歳年下の妹がいる。市内の北部幼稚園を出て松戸市立中部小学校を卒業し松戸市立第一中学校に入った。中学校ではあまり成績がいい方ではなかった。中学三年の夏の前頃から体調が悪くなってきた。頭痛やだるさといったもので学校も休んだりしてた。友達付き合いの相手も減ってきた。それでも学校に行けば普通と言えるかわからないけど何とかやってきた。

 その頃俺によく話しかけてきた同じクラスの生徒で佐々木君というのがいた。家が俺と近かった事もありよく一緒に帰った。途中で寄り道しては松戸駅の近くにあるおもちゃ屋のわらそうに行ったり下校途中にある公園で適当に時間を過ごしたりしてた。

 俺が学校を休んだある日の夜中の十二時か一時過ぎに自転車で何の気無しに松戸駅の近くを走っていたらアーバンヒルという名のその時ではもう使われて無いビルが目に入ったのだ。昭和の終わり頃に地元の人を中心に人気のあったいわゆるショッピングモールの様な施設で十年位営業した後閉館になった建物だ。俺がその近くにある立体の自転車駐輪場に入った。その駐輪場の奥に行くと低い柵を跨ぐとアーバンヒルの外壁に手が届く。俺は柵を跨ぎ外壁に取り付けられている配管の部品に上手く手や足を掛けて地面に落ちない様に横に少しづつ移動した。数メートル移動した後ベランダの様な所に行き着いた。暗くて分かりにくかったが窓がありガラスで覆われていて中には入れない。その日はそこから引き返し乗って来た自転車に乗り自宅に帰ったのだ。

 その日の後から俺はアーバンヒルが何となく頭の片隅にあり気が散って生活していた。それを佐々木君に言おうか言うまいか考えた結果ついに切り出したのだ。話し合いの結果窓ガラスを割って入ろうという事になり俺が金槌を用意する事になり二人で侵入しようという事になったのだ。

 後日学校の通学バックに家にあった金槌を忍ばせついでに懐中電灯も入れて学校に行った。その日は上の空で学校を過ごし下校して佐々木君と例の自転車駐輪場に来た。佐々木君と打ち合わせをしてあの日の夜と同じ様に駐輪場の柵を越えて外壁の部品を掴みながら二人は移動してあのベランダに出たのだ。

「佐々木君、金槌でガラス割る時大きな音でばれるよ」

 二人は顔を見合わせて考えた。すると佐々木君がこう言った。

「電車がそこの線路を通る時の大きな音に合わせて金槌を叩けばどうかな」

 俺は考えた。ガラスが割れる音を誤魔化すのはそれ以外方法が無い。夕方の今なら人も少なく今しか無い。俺は決心した。電車が来た。その音に合わせて金槌を振るった。一回目ではガラスはひびが入った程度だった。それを佐々木君と交代しながらガラスを音に合わせて叩き四回目か五回目位に人が一人通れる程の割れ目ができた。そして二人はその穴から中に入った。

 入った部屋は二階のテナントスペースの様な部屋で出入り口の扉には部屋の内側から鍵が掛けられていて手で簡単に開いた。その扉の先に行くとアーバンヒルの内部に出た。俺は佐々木君と有頂天で中を歩いた。店の跡となってる数多くの部屋やお洒落な作りの内観をわくわくしながら歩き回った。そして中央の広場に続く止まったエスカレーターを降りて真上を見上げた。そこには水を流す滝のモニュメントの様な跡があり子供の頃家族と来た思い出が蘇って来た。そしてエスカレーターを登りアーバンヒルの正面の道が見渡せる二階の大きなエントランスに出て松戸市の景色を一望した。達成感を感じたのだ。そしてそこを後にし元に来たガラスの割れ目を潜り最初の駐輪場に戻った。駐輪場には誰もいなく見つかった様子は無い。二人はそそくさと後にし家路についた。

 それから俺はいつも通りに学校に通い特に何事も無かった様に生活した。月日は流れ無事に中学校を卒業した。

 

 そして一年もたたない時に佐々木君と松戸市内の変哲もない道で再会した。すると佐々木君がこう言うのだ。

「おい、警察に気を付けろよ。アーバンヒルの件で警察が動いてる」

「俺も少し様子がおかしく感じる時がある」

「つい最近警察官を名乗る人に道で呼び止められて色々聞かれた」


 俺は本当は気付いていた。警察が周りにいる時や出掛けたら後をついて来るとか。様子が違うのは空気で感じるものだ。俺は捕まらなかった。この件は今となっては時効だ。その時の警察官も定年退職してる人が多いし亡くなってる人もいるだろう。

 

 今となればその時の警察官と話してみたい気もする。色々あったからね。



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