長老
はいどうもニノハジです〜
遂に『森』へと辿り着いたレイ達。
果たして彼女達に待ち受けるものとは!?
そんなお話です!
ではどうぞ!
(生活水準は私達と同じ位かしら。こんな森の中に有るという事を考えれば、十分凄い事なのだけれど……)
初めて踏み入れた『森』。
警戒されない程度に観察した結果、レイが抱いた感想はそれだった。
想像では樹海の奥深くにある事から、もっと原始的な生活を送っているか、高い魔法力を活かした高度な生活を送っているものと考えていた。
しかし実際に見てみると、自分達と大して変わらない生活様式だった事に驚く。
だが、それよりも気に掛かる事が有った。
(生活している痕跡が有るのに、人の気配が全く無い?いえ、これは……)
そう、直前まで人が居たであろう痕跡は残っているのに、今レイ達の前には誰1人居ないのだ。
まるで突然村人全員が神隠しにあった様な、異様な雰囲気が村を覆っている。
しかし気配をよく探ってみれば、その違和感の正体に気付く。
(徹底して気配を殺しているって訳ね。いえ、殺しているというより周りと同化させている感じかしら?ここの住民全てがそれを自然とこなしている。凄いわね)
下手に気配を無くすより、周りと一体化させる方が相手の意表を突きやすい。
思い返せば先程の偵察隊も、気付くのが遅れる程の気配操作をしていた。
恐らく訓練などでは無く、生活の中で自然と身についた技術なのだろう。
(ランシュやフィオが偵察任務に適している理由が、分かった気がするわね)
そう考えていた時、先導する森人族の男がレイを睨んでいる事に気付く。
レイがその視線に気付くと、何事も無かったかの様に視線を前に戻した。
(気配を同化し、相手の意識を逸らすことが出来るのならば、相手がどこに意識を向けているかも分かる……と。ここの手練は厄介極まりないわね)
下手な事は考える事すら出来ない、と感動すら覚えたレイ。
そんな一行の前に、次第に一際大きな建物が見えてくる。
一目見て、この集落の要人が居るであろうその場所が目的地らしく、森人族の男はそこへ向かって歩いて行く。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。⬛︎⬛︎」
(会話?かしら。聞いた事のない言葉ね)
そして門番であろう森人族に、先導していた男が話し掛けた。
門番もレイには分からない言葉で答え、どうやら中へと促されたのだと察する。
しかし、全く聞いた事の無い言語に困惑するレイ。
何せ言語が違うという体験を、した事が無いのだから。
「⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
「⬛︎⬛︎」
そんな困惑を他所に男は先へ進み、辿り着いたのは一段と装飾が施された扉の前。
そこで男が口を開くと、中から声が帰ってくる。
そうして、自然と開いた扉の奥へと進む一行。
そこで目の当たりにしたのは、数人の森人族の姿だった。
高齢の男性が2人。
その間に君臨するかの様に上座で座る、更に高齢の女性が居た。
どうやら先程の、中から聞こえた声はこの女性のものだったのだろう。
そんな事を考えていると、森人族の女性が口を開いた。
「悪かったね、亜人達の首領をこんな所に呼び出したりして」
レイ達が扱うものと、同じ言語でそう語り掛ける女性。
それにディードが顔を歪めながら答える。
「本当にそう思ってんなら俺達の元に来いと言ってんだろうが。それに、ここも俺達の国だからな。自国のモンに呼ばれちゃ行くしかねぇだろ」
その言葉に、部屋の中に居た森人族達が殺気立つ。
それを何処吹く風と受け流し、飄々とするディードに今度は女性が顔を歪めながら吐き捨てる。
「ハッ!神の信仰を忘れたお前達なんかと一緒に居たら、魂が穢れちまうさね。今回はしょうがなくお前様の顔を立ててやったんだ。本来ならお前様に用は無い。有るのは……」
そうして1点を見つめ、話を続ける。
「アンタ達だよ。まさかまだ生きていたなんてね。相変わらずのバケモノだよ」
その視線の先、ニイルを睨みそう言う女性。
当のニイルは無表情のまま、その女性を見つめ返していた。
女性は続ける。
「あの時言ったはずだ。二度とこの地へ入るなと。今更その不浄の存在を連れて、何しに戻ってきた」
そう言い、視線をニイルの背後に居たフィオに移そうとした瞬間、ニイルの全身から殺気が吹き出す。
それは港で見せた物の比では無く、物理的な圧力を伴って部屋の壁や床が軋む程。
その迫力に思わず森人族達も後ずさる。
その光景を目にしてようやく、ニイルは殺気を収め口を開いた。
「お前こそそんなに老いぼれて、今では長老などと持て囃されている様だな?だが歳を食っても他種族を劣種と見下す考えは変わらんか。あの時のガキが随分と偉くなったものだ。確かあの時の名は……」
「黙れ!」
長老と呼ばれた女性が叫び、ニイルが口を閉じる。
冷めた視線をぶつけるニイルに、冷や汗を流しながら長老が更に叫んだ。
「ワシは何故ここに来たのか問うたのだ!余計な口を開くな!」
「お前が呼んだんだろ。じゃなきゃ誰がこんな所に来るか。俺達はこの国の首領であるディードに会いに来たんだ」
そしてため息を吐きながらニイルは続ける。
「そもそも、これだけしぶとく生き残ってる老害が居るなんて、誰が想像出来る。お前さえ居なければもっと穏便に……」
「貴様!黙って聞いていれば!」
「我らが長老を愚弄するのもいい加減に……」
「⬛︎⬛︎⬛︎!」
我慢の限界という風に道案内の森人族が叫び、座っていた男達も立ち上がる。
しかしそれを制したのは長老の一喝であった。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。⬛︎⬛︎……」
「そうだ、そのバケモノを呼んだのはお前達だ。あの時の恐怖を思い出させてやっても良いんだぞ?」
他の森人族達に言い聞かせていたのだろう、長老の言葉を遮り、ニイルが口を開く。
そして、そのニイルの言葉に全員の時が止まった。
いや、2人だけ、ランシュとフィオだけは変わらずのままだったが。
しかしそれ以外の思考が一致した。
代表して長老が口を開く。
「な、何故貴様が神聖なワシらの言葉を理解出来る!」
それに、変わらず冷めた視線のまま。
「⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎?」
と、レイの理解出来ない言葉で答えるニイル。
この言語はディードですら習得出来ていないのだろう。
驚き、ニイルを見つめるがそれ以上に。
「この言葉はワシら『森』に住む者達以外には扱えぬ筈!何故人間である貴様がそれを使えるのだ!」
森人族にはかつて無い衝撃だったのだろう。
部屋に居る森人族全員が狼狽し、長老が声を荒らげた。
それを鼻で笑いながらニイルが語る。
「神聖な言葉?お前達の言葉だと?笑わせるな。これはお前達の言葉じゃ無いだろう?逆に訊くが、お前達は誰にこの言語を教わったんだ?」
「なっ……!?」
それに先程以上の狼狽を露わにする長老。
その反応で確信したのか、ニイルが振り返り口を開く。
「これで得心が行きましたよ。ディード、何故貴方が『幻想種』や『幻想神種』に驚かなかったのか」
「……バレちまったか」
元の口調に戻り、そう言われたディードは観念する様に答える。
思い起こせば、ディードは最初から『幻想種』の事も、更には『幻想神種』の事すら知っている様な口ぶりだった。
しかしそれが一体今の状況とどう繋がるのか、レイには理解出来ていない。
故にニイルへと問い掛けた。
「どういう事なの?ディードが『幻想種』達を知っている事と、貴方があの言葉を使える事に、何の関係が?」
その質問に、微笑みながらニイルは優しい口調で答える。
「彼らが使うあの言葉は、森人族が考えた物ではありません。遥か昔に使われていた言葉なのです」
その衝撃に目を見開くレイ。
ニイルは構わず続けた。
「しかしその文献は無く、この言葉は完全に歴史の闇に消え去りました。ですが証拠は無くとも、使っている者が居るならば話は違いますよね?」
「そ、そんな人居る筈……まさか……」
今までの会話から1つの事実に思い至ったレイに、満足気な表情を浮かべ、長老へと向き直った。
「そう、人では無い存在。例えば永きを生きる存在が、この世には存在する」
その頃には無表情に戻っていたニイルが。
「ここに居るんだろう?『幻想神種』が」
そう冷たく言い放つのだった。
如何でしたでしょうか?
まさかまた新たな『幻想神種』が現れるなんて!?
一体どうなってしまうのか!
今後もお楽しみいただければ幸いです!
ではまた次回にお会いしましょう!




