使者
明けましておめでとうございます!
ニノハジです!
2026年最初の更新となります!
今年もよろしくお願いいたします!
段々と近付いてくる港の景色に、思わずため息を吐くレイ。
頭では理解していても、やはり無事に辿り着くまでは無意識に緊張していたのだろう。
心身共に、力が抜けていくのを感じるのだった。
「あん?なんか騒がしくねぇか?」
しかし見慣れた風景だからこそ、ディードが1番に気付く。
港に居る人数と停泊してある船の数が普段より多く、そして慌ただしい。
急いでどこかに出立しようとしている、そんな雰囲気を感じられた。
何か問題が発生したのだろうか。
気が逸りそうになるレイだったが、呆れを滲ませたニイルの声が届く。
「当然でしょう?国の首領が乗った船が沈み、その本人がバケモノと戦ってるなんて状況……国としては一刻も早く助けに行こうとするのが道理でしょうが」
「「あ……」」
それに間抜けな声を漏らす2人。
今までの戦闘で、他の乗組員を逃がした事をすっかり失念していた。
余りの失態にレイの顔が真っ赤に染まる。
「そもそも貴方の部下でしょうが。彼らを助ける為に残ったのだと思ってましたが、本当に『幻想神種』と戦いたかっただけなんですか?」
「さ、さ〜て!逃がしたアイツらは無事か〜!?」
半眼で睨むニイルに、露骨に話題を変えようとするディード。
まさか本当に、自身が楽しみたいが為に他の亜人達を逃がしたのかと、流石のニイルも呆れ果てる。
レイもそれには呆れそうになるが、しかし自身も忘れていた事から何も言えず俯くのみ。
「ん?おいアレ見ろ!」
「アレ?」
「アレってなん……まさか!」
そんな気まずい雰囲気を断ち切ったのは、港から聞こえてくる喧騒だった。
3人が近付くにつれ、騒ぎがどんどん大きくなってくる。
「おい!誰かベスタ様呼んでこい!」
「良かった……無事で……!」
「ったりめぇだ!ウチらのボスだぞ!?バケモノなんかにやられるかってんだ!」
口々にディードへの心配や称賛などの言葉が飛び交う中、そのど真ん中へと舞い降りる3人。
そしていつも見せているのだろう笑顔で、民衆に向かいディードは言い放った。
「待たせたな!無事バケモノ退治!果たしてきたぜ!」
瞬間、一気に周囲から歓声が上がる。
まるで祭りかの様に盛り上がる人々に、改めて亜人達のディードに対する忠誠心の高さを実感するレイ。
感心しながら周囲を観察していると、3人を取り囲む人垣の一部が割れ、1人の人物が進み出て来た。
「待たせたなベスタ!」
その人物、腹心であるベスタにディードは気安い笑みで語り掛ける。
それに、盛大にため息を吐きながら答えるベスタ。
「流石の私も今回は肝を冷やしましたよ。相変わらず貴方は無茶をする。そろそろご自分の立場というものを……」
「あ〜あ〜うるせぇうるせぇ!これが1番最善だったんだよ!最大の戦力で最小の被害に抑える!結果全員無事だったじゃねぇか!」
ベスタの言葉を遮り言うディードに、微かに反応をするベスタ。
「結果論ではそうですが……しかし珍しいですね。他人を、特に人間をそこまで褒めるなんて」
ディードはその性格柄、差別主義を持ち合わせていない。
しかし亜人である以上、亜人種に信頼を置くのは当然の事であろう。
更に言えば、ディードは強者を好む傾向にある。
そんな彼が人間に対し最大の戦力とまで評価するのは、かなり珍しい事であった。
「お前も目の当たりにすりゃ分かるだろうよ。コイツらはホンモノだぜ?柒翼に並ぶ力を持ってるのは間違いねぇ。それに……」
そうしてレイ達に視線を向け、不敵な笑みを浮かべて続けた。
「コイツらが人間な訳ねぇだろ。もう立派なバケモンだぜ」
「ちょっと?それは褒めているのかしら?」
さも当然とばかりの表情をするディードに、今度こそ呆れ果てるレイ達。
本来なら悪意のある言葉に聞こえる物言いだが、そう受け取れないのはディードの性格故か。
対して嫌な感情にならない2人は、顔を見合せ苦笑する。
特にレイはバケモノの弟子を自称し、更に柒翼に認められた事から、内心少しだけ喜んでいた。
そんな彼らを見てベスタは言う。
「そうですか。お二方も、この方のお守りはさぞ大変だったでしょう?国を代表してお礼申し上げます」
「おい?そりゃどういう意味だ?」
レイ達に対し頭を下げるベスタに、周囲から笑いが起こる。
主に対し不遜な物言いをしても許されるこの国は、確かに良い国なのだろう。
かつて見たスコルフィオの国の様な、居心地の良さを感じるレイ。
故にレイも不敵に笑ってこう返すのだった。
「それは確かにそうね。でも、色々と学ばせてもらったわ」
「な?こういう所だ」
「……確かに、貴方が気に入る訳だ」
思わず吹き出すベスタに納得いかないと呟くレイ。
それにまた、笑いが巻き起こるのだった。
「さて、全員の無事も確認出来た事だし、騒動解決の祝勝会と、そして……」
海に視線を移し、笑みを消してディードは続ける。
「これまでに散っていった同胞達への弔いをしなくちゃあなぁ……」
その言葉に亜人達全員が深く頷く。
結局、調査団で帰ってきたのはレイ達が救出した1人だけだった。
元凶が斃れた今、帰ってくる可能性は残っている。
そして、今後も捜索を続けるとディードは語っていたがそれでも。
「少なくない同胞達が海へと散った。国の為に戦ってくれたアイツらを!盛大に送り出すぞ!お前ら!」
「「「オオオオオオ!!!!」」」
沈みかけた空気を吹き飛ばす様に叫ぶディードに、周りも呼応し声を上げる。
こうした気遣いが出来るからこそディードは慕われ、これ程大きな国を興す事が出来たのだろうとレイは実感する。
(だからって、デリカシーが無いのはどうかと思うのだけれど……)
そう内心で零していた時、とある声がレイの耳に届く。
「お待ちください」
それはとても静かな一言。
周りの喧騒に飲み込まれ、本来なら掻き消されても不思議では無い物だったのだが。
何故かその言葉はレイだけでなく、周囲の者達全員にしっかりと届いた。
一瞬で静寂に包まれる中、人々の中から声の主が姿を表す。
その人物はとても整った顔立ちの青年。
金の長髪に、その奥にチラリと尖った耳が有ったのを、レイは見逃さなかった。
(あれは……『森人族』……)
フィオと同じ、そしてフィオとは違う本来あるべき色の髪をした美青年が、ディードの前まで進み出てくる。
「なんだ?森のテメェらがわざわざ出てくるなんざ珍しいじゃねぇか。俺達はこれから祭りの準備で忙しいんだ。まさか、テメェらも参加してぇのか?」
亜人種に対しては珍しい、明らかに険悪な空気を纏いながら問い掛けるディード。
それに対し、全く意に介さず青年は言う。
「申し訳ございませんが、その祭りは後日に。今すぐディード様と……」
そしてレイ達の方を向きながら告げた。
「客人4人をお連れする様にと、長老のお達しです」
瞬間、ニイルから殺気が溢れ出す。
その威力は凄まじく、周りに居た亜人達も顔が青ざめ、気を失いかける者すら存在した。
そしてその殺気をぶつけられている青年も、あまりの迫力に顔が強ばり、思わず後ずさってしまう。
「止めろ」
そんな2人の間にディードが割って入る。
そのまま青年を庇うように、ニイルへと問い掛けた。
「コイツらは気に食わねぇが、それでも俺の国の民だ。これ以上の狼藉は、首領として見過ごす訳にはいかねぇ」
明らかに戦闘態勢に入りつつあるディード。
そして困惑するレイの視線を受けてようやく頭が冷えたのか、ニイルが殺気を収める。
「申し訳ありません。少々取り乱してしまいました」
「なるほどなぁ……テメェらが2人を連れて来なかった理由が、何となく分かったぜ」
「……っ」
ランシュとフィオを同行させなかった事に勘付かれ、思わず反応してしまうレイ。
その反応で、疑念は確信へと変わったのだろう。
ため息を吐き、青年へと口を開くディード。
「テメェは先に行って、必ず行くとババアに伝えろ。ベスタ、後は頼む」
「かしこまりました」
お辞儀をし、周囲に指示を出していくベスタ。
そうして周囲の人々が散っていく中。
「……クソ!」
青年はそう吐き捨てレイを、いや、ニイルを睨み、人混みの中へと消えていくのだった。
如何でしたでしょうか?
新年早々新たな展開ですwww
ボスを倒して終わりかと思ってましたか?
残念!
4章はまだまだ続きます!
引き続きお楽しみいただければ幸いです!




