帰路
はいどうもニノハジです〜
遂に戦闘終了です!
今回はその直後、一時の平和な時間が描かれています!
楽しんでいただければ幸いです!
ではどうぞ!
「ハア……ハア……あっ……」
ケートスが完全に消滅したのを認識した瞬間、レイの意識は闇へと引きずり込まれた。
当然だろう。
ケートスからの攻撃に晒され続け、更に『神威賦与』、『雷装』、『電磁加速魔弾』、そしてその改良までも同時に行ったのだ。
いくらゾーン状態だったとはいえ、脳の処理限界はとっくに超えている。
当然ながら魔力も枯渇寸前で、体の内外全てで悲鳴を上げていた。
そんな状態で意識が有ったのは、ひとえに戦闘中故の興奮状態だったからに他ならない。
それ故戦闘が終了したと同時にレイが意識を失ったのは、当然の事と言える。
海へと向かって自由落下していくレイだったが、既のところで誰かに抱き抱えられ、海への落下は防がれた。
その衝撃でレイは意識を取り戻す。
「うっ……ニイル……?」
「残念だったな。俺だ」
目を開けて最初に視界に入ったのは薄金色の輝き。
それとその人物の声でようやく、相手がディードだと理解する。
「ごめんなさいね。まさか貴方に助けられるとは思っていなかったから」
「あぁん?今まで散々助けられてきたんだ。借りを返さねぇのは俺の流儀に反するんでな?それに……」
そして視線を目の前の海に移すディード。
釣られてレイもそちらを向くが、目の前には綺麗に晴れた大海原が広がっていた。
「こうして共に死線をくぐり抜けたんだ。俺はテメェらを信用するぜ?」
と、いつもよりほんの少し柔らかい笑顔でそう言うディード。
それにレイも笑いながら。
「えぇ、私もだわ」
そう答えるのだった。
「さて、当初の予定から大分変わっちまったが……これで問題は解決したって事で良いんだよな?」
戦闘の影響か完全に霧も晴れ、澄み渡る水平線を眺めながらディードが言う。
次いで視線を空に移し、レイもそちらを見ると丁度ニイルが2人の元に降りてくるところだった。
「流石にこれ以上『幻想神種』が居るとは思いたく無いですね。それに最初の目撃情報にあった元凶は、もう死んでいますし」
そう言って辺りを見渡すニイルに、レイは何故ここに来たのかを思い出す。
元々魔獣の異常発生、それと調査船を襲った者の正体を暴く為にここまで連行されて来たのだ。
最終的に別の存在と戦う事になってしまったが、そもそもの目的は達成出来たと言えよう。
「いや、まぁ……ところで俺達の目的だったあのバケモノ、『幻想種』だったか?あれは結局何だったんだ?」
何故か言葉を濁し、話題を変えたディードに不審がるレイだったが、ニイルはそれに言及せず問に答える。
「あれは恐らく魔烏賊が『幻想種』化した『北極の魔烏賊』でしょう。特徴が魔烏賊と同じでしたし、1番大量発生していたのも魔烏賊でしたから。海に生息する『幻想種』の中では割と有名なので、2人も名前位は聞いた事が有るのでは?」
それに驚きの声を上げるレイ。
「じゃあアレがよく御伽噺に出てくる海の怪物!?船を襲い、果てには小国すら滅ぼしたと言われるあの!?」
「へぇ……流石に俺でも聞いた事が有るぜ。海が舞台の話では大体出てくるからな。しかし本当に過去にあった話なんだな、御伽噺」
同様に、ディードも感嘆の声を上げる。
物語の中では暴虐の限りを尽くす怪物として描かれ、レイが言った様に国すら滅ぼす物も存在した。
それを実物で目の当たりにした衝撃と、そして御伽噺が本当に過去の記録だったという事実に、驚きを隠せない2人。
「だが、『幻想種』化するだけであんな巨大で厄介な存在になるとはな。厄介な事この上ねぇな」
「『幻想種』化に伴う変化のメカニズムは、未だ謎に包まれていますからね。個体によっては体の大きさは変わらないモノも存在しますし、そもそも魔獣化の時点で解明出来ていない事の方がほとんどです。まぁ、その最たる存在が『幻想神種』なんですがね」
「違ぇねぇ」
『北極の魔烏賊』が居たであろう場所を眺めながら笑うディード。
2人もそれに釣られ視線を向けるが、先程見かけた死骸は、今はどこにも見当たらなかった。
今までの戦闘の余波で海の藻屑と化し、沈んでしまったのだろう。
若干の肩透かし感を漂わせながらディードが言う。
「持ち帰れる証拠が何も無ぇのがちと悲しいが、首領の記憶に残ってるっつう事で良しとしとくか!んじゃ、さっさと帰って報告しなきゃなぁ!」
早くしないとベスタにどやされるぜ、と笑いながら言うディードにレイが待ったをかける。
「貴方は元気だから良いでしょうけれど、私達は疲労困憊なのよ?せめて魔力が回復する迄は待ってほしいわ」
それに怪訝な顔をしながらディードが答える。
「あぁん?んなもん俺がテメェらを抱えて走りゃ良いだけだろうが。こんな海上じゃロクに休めねぇんだから、さっさと帰るぞ」
「か、抱えるってそんな恥ず……いえそもそも!貴方の速度で走られたら、私達じゃ風圧に耐えられないわよ!」
抱えようと近付いて来たディードから距離を取りつつ、少し赤い顔で抵抗するレイ。
いくら強くなったといっても年頃の女性、更に意識している男性の前では、より羞恥を感じるのだろう。
気付けば徹底的に拒絶するレイと、全てを知りながらも内心面白がり、何も言わないニイル。
そして何も知らない、というより理解する気もないディードという構図が出来上がっていた。
「だったらお得意の魔法でも使えば良いだろうが!それならテメェらも振り落とされずに済むじゃねぇか!」
「だから!その為に必要な魔力が無いって言ってるのよ!そもそも、貴方の能力のせいで魔法が吸収されるのだから意味無いじゃない!」
「こちとら力が有り余ってんだ!今更『神性』を使う訳無ぇだろ!」
段々とヒートアップしていく口論に、最初は面白がっていたニイルも次第に呆れを見せ始める。
「ここで言い争う事の方が時間の無駄でしょう。早く帰るのは賛成ですが、魔力が無いのも事実。ですので貴方は私達でも耐えれる程度に手加減して走ってください。それと、貴方はもう少しデリカシーを学んだ方が良いですよ」
ため息と共に口を挟んだニイルに対し、疑問に満ちた顔でディードが答える。
「最初からそのつもりだっての。つか今更デリカシーだと?コイツがそんなモンで恥ずかしがるタマか。なんせ、こんなつえぇ女が軽い訳ね……」
「〜〜〜〜バカ!!!!!」
そしてこの日、ニイルも聴いた事の無い程の怒声が響き渡ったのだった。
「そういや、なんでテメェはあの野郎の魔法が効かなかったんだ?テメェも俺と同じ様に魔法を吸収出来る訳じゃ無ぇんだろ?」
ディードが小脇に抱えたニイルを見ながら問い掛ける。
あの一悶着から数刻。
その後も色々揉めた結果レイが折れ、ディードも何も言わない事を条件に、2人を抱えて走り出した。
今は間もなくデミーラ共和国が見えてくるか、という頃での質問であった。
「私は色々と対策を講じてましてね。その中の1つに魔法を無力化する、という物が有るんですよ」
「なんだそりゃ?んな事が出来んのかよ?それが出来るんなら最強じゃねぇか?」
そのディードの言葉に苦笑を浮かべながら、ニイルは否定を返す。
「残念ながらそんなに万能な物でもありません。当然ながらデメリットも存在します。まず自分で魔法は発動出来ますが、その恩恵を受けられません。つまり強化魔法や治癒魔法などを、自分に掛けられないのです。自身に対する全ての魔法の無効化、それがこれのメリットであり、デメリットと言えるでしょう」
その返答に、レイは数年前の出来事を思い出す。
(そういえばあれはスコルフィオと初めて出会った時、その後の宿屋でニイルは回復薬を飲んでも意味が無いって言っていたわね。あれはこういう意味が有った訳か)
他にも、自身に治癒魔法を使っているところも、強化魔法を使っているところすら見た事が無い事を思い出す。
あれはニイルが強い故に使わなかったのでは無く、使えなかったというのが正しかったのだと今更ながらに気付いた。
そしてその答えに納得を示しながら、尚も質問を口にするディード。
「なるほどな。だが何故俺には効いたんだ?その理屈なら俺にも全ての魔法を無効化出来る筈だぜ?」
「それは貴方の体内は対象外だという事でしょう」
それに首を傾げるディード。
そうですね、と一瞬思案した後、再びニイルは語り出す。
「魔法とは自分の魔力を変換する事で生まれる現象です。つまり自分の魔力がその場に無ければいけない。普通なら遠くの場所に魔法を発生させる場合、自分の魔力をその場所に流します。貴方の能力は、その魔力を吸い取る事で自身の力に変えている。そうですね?」
そう告げるニイルに首肯を返すディード。
それを見て更に続ける。
「しかしケートスのあの魔法は違う。『幻想神種』の能力でしょうね。貴方の体内に、直接自分の魔力を生み出したのです。魔力を変換し、自身の力へとする以上、貴方の体内までは『神性』を作用させる事が出来ない。だからヤツの魔法で貴方の血液は沸騰し、ダメージを受けたのでしょう」
そう語るニイルを見ながら、レイは先日浜辺で見た光景を思い出していた。
(ニイルの身体には隙間無く魔法陣が刻まれていた。それの効果の1つなのだろうけれど、それって……)
「私は特に変換する訳でも無いので、内部も全て無効化する様にしてあるのですよ」
(やっぱり……つまり体内では何も変化する物が無いという事よね?不死身だからこそ出来る芸当なのかしら?)
レイが勝手に考察しているだけで、ニイルが不死身だという確証は無い。
しかしそれが事実なら色々と辻褄が合うのだ。
何せ身体の全てで老いもなく、不調も発生しないからこその不死身なのだから。
不死身だから魔法が効かないのか、魔法が効かなくなったから不死身に成ったのか、それは定かでは無いがまた1つ、自身の考えを裏付ける証拠を得たレイ。
その真相を知りたくはあったが、今は教えてもらえないだろうと考え口を噤む。
「なるほどな。俺の力にも弱点が有ったって事か」
若干悔しそうに、されどそれ以上に獰猛な笑みを浮かべて言うディードに、レイ達2人は苦笑する。
そんな話をしている内に、3人の遥か前方にデミーラ共和国が見えてくるのだった。
如何でしたでしょうか?
今まで緊迫した状況から一転、和やかな雰囲気を感じてもらえれば嬉しいです!
さて、遂に次回は3人がデミーラに帰ってきます!
お楽しみに!




