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バケモノが愛したこの世界  作者: 一一
第4章 ???編

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86/88

ベルゼブブ

はいどうもニノハジです〜

遂にディードの力が解放されます!

どんな力かぜひ読んでみていただけると嬉しいです!

ではどうぞ!

 ディードが『神性(ちから)』を解放すると同時に、彼から絶大な圧力(プレッシャー)が吹き荒れる。

 それは共闘している筈のレイにまで影響し、まるで力が抜けていく様な錯覚すら覚える程。


(いや違う!これは……!)

「レイ、離れますよ!」

 それに違和感を感じた時、ニイルがレイへと叫ぶ。

 咄嗟に2人がディードから離れ、その違和感の正体を確かめるべくレイはディードを視た。


「今まで視えてなかった様ですが、これで分かりましたか?」

「えぇそうね……これは、私達には天敵だわ」


 レイの言葉に、そうですねとニイルも肯定する。

「彼の『神性(アルカヌム)』は魔力を吸収し、自身の力へと変換する能力です。彼の前では、優秀な魔法師であればあるだけ、彼を強くさせる要素にしかなり得ない。正に魔法師の天敵の様な存在です」


 その時、ケートスが放った魔法が着弾する。

 本来ならディードが吹き飛ぶか、あるいは貫かれるかする程の威力を誇る魔法達。

 しかしそれらはディードに当たる寸前に形を失い、ただの水となりディードを濡らすだけに留めた。


「本来ならあれ程の速度で水がぶつかれば、多少のダメージを負うのが人間です。しかし獣人族(ビースト)の身体とあの力が合わさり、かなりの身体能力を獲得するに至っている」

 それだけでも十分な脅威を感じるレイだったが、更に驚きの出来事が目の前で繰り広げられる。

 何と失った筈の腕が再生しだしたのだ。


「う、腕が!」

「身体能力が上がるという事は回復力も上がるという事。しかし流石『神性(アルカヌム)』と言うべきですか。欠損すら治癒してみせるのだから驚きですよ」

 これには2人も驚きを隠せない。


 本来なら魔法を用いたとしても失った腕などを生やす事は出来ない。

 接着させる事は可能だが、失ったものは元に戻せないのだ。


 それを可能とするのは魔法以上の、いわば神秘。

 噂では、『繁栄の証(ディーサイド)』でそれを可能とする物も存在するらしいが眉唾であり、つまり現状では不可能というのが共通認識である。


 しかし、ディードはそれを可能としてみせた。

 本人にしか使えない力だとしても、それでも強力過ぎる代物だと感じるレイ。


「周囲の魔力すら吸収するので本来なら魔法を使えなくなる筈ですが、獣人族(ビースト)故に元から魔法を使えないのでデメリットにすらなり得ず、只々メリットが存在するのみ。獣人族(ビースト)相手に近接戦闘は自殺行為、しかし魔法に頼ろうものなら、相手の性能を上げ続け手に負えなくなる。対人相手ならほぼ無敵の力と言えるでしょう」

 そう締めくくるニイル。


 それはレイも同感で、人間と獣人族(ビースト)には身体能力の差が大きい。

 その中でもディードは更に優れた性能を有しているとレイも感じていた。

 事実、『神性(アルカヌム)』を使う前のディードに並ぶのに、レイは身体強化を『+10(フルブースト)』にまで引き上げていた。

 素の状態でそれだけの差が生まれるのだ。

 そんな相手に近接戦を仕掛けるのは無謀だろう。


 しかし、だからといって魔法を使えば逆に強くしてしまうなど、理不尽もいいところだとレイは思う。

 ただでさえ目に追えぬ程の速さなのだ。

 そんな相手にこの世界で主流の弓が当たる筈は無く、それ以上の速度が出せる遠距離攻撃は魔法のみ。

 それすらも封じられれば、待っているのは一方的な蹂躙であろう。

 スコルフィオもそうだったが、分かったところで対処出来ない、そんな理不尽な強さを持つのが『柒翼』なのだと、改めて理解する。


「これで仕切り直しだ!行くぜぇぇぇぇぇ!!!」

 見れば完治したディードが全身に力を込めているところだった。

 あれ程の重傷が、この短時間で跡形もなく消えている事に改めて驚愕しそうになるレイだったが。

 気付いた瞬間、ディードが目の前から姿を消した。

「なっ!?」


 そう錯覚する程の高速移動。

 そして気付いた時にはもう、ディードはケートスのその巨大な背中に飛び蹴りを叩き込んでいた。


【ぐお!】

 その威力は凄まじく、流石のケートスも余りの衝撃に呻き声を上げ、海中へと叩き落とされる。


(眼で視て次の動きは分かっていた!『雷装』で速い動きにも慣れていると思っていた!それでもあの動きを見逃してしまったなんて!)

 激しい水飛沫の中、(たたず)むディードを見やりながら胸中で叫ぶレイ。

 普通の人間なら見失う程の動きを捉えた時点でレイも相当のものなのだが、何より驚くべきはディードの動きである。


「あれ程の速度……貴女の『雷装』に並ぶんじゃありませんか?」

 それはニイルも同感の様で、余裕の無い笑みを浮かべながらレイへと話す。


「そうね、しかもただの『雷装』以上の疾さだと思うわ。下手をしたら『100%(リミットカット)』並かも」

 レイも冷や汗を流しながらそう返す事しか出来ない。


 改めてディードを解析してみると、現在の彼に先程の動きが出来るとは思えなかった。

 つまりその前に吸収した魔力を使った、消費するタイプの神性(のうりょく)だと推察するレイ。


(そして解析して分かった。()()()()()()()()()()()()に)


 それが示す事実。

 それは魔力さえあれば、いくらでも能力が向上し強くなれるという事。


(唯一の弱点は、魔力が無くなれば通常状態に戻る事なんだろうけれど……周囲の空間から魔力を吸収しているのだし、素の状態で強いのだからあまり意味は無さそうね)

 ディードだからこそ、ここまで強力足り得るのだと改めて理解するレイ。


 そんなレイ達を置いて、ディードは高らかに叫ぶ。

「そんな程度かぁ!?自称神も大した事ねぇなぁ!」


 その叫びに呼応する様に、ディードの目の前に水球が現れる。

 それは先程爆発した物と同じ、中心が光り輝く小さな球だった。

 それがまたしてもディードの目前で爆発するかと思われた時、ディードがそれを握り潰し呆気なく水球は消える。


「無駄だ!()()()()()()()()()も俺の吸収対象だ!テメェの全ては俺の養分になるんだよ!」

 水球を取り込んだ事で、またしても強化しディードは挑発する。

 その挑発を受けても姿を現さないケートスに舌打ちするディードだったが、その目の前に派手な水飛沫を上げて巨大な柱が現れた。


「あれは、尻尾?」

 レイのその疑問に答えるように、ゆらゆらと揺れる巨大な尻尾。

 そんな大きさの柱とも呼べる物体が、次の瞬間3人目掛けて倒れ込んでくる。


「速っ!」

 大きさの割に凄まじい速度で襲い掛かる尻尾に、ディードは『空底』で、レイはニイルと共に転移魔法で回避する。


 激しい水音と共に海面に叩きつけられる尻尾。

 それに伴い大量の水飛沫が舞うが、次第にその全てが氷となっていく。


「凍って……?」

「来ます!」

 ニイルの警告と共に、3人へ飛来する(つぶて)達。

 様々な大きさの氷をレイとニイルは魔法で防ぎ、ディードは……


「クソ!もうバレちまったか!」

 そう叫びながら()()()()


 それを見てレイも理解する。

「そうか!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のね!」

「その様ですね。先程の水球は全てが魔法で作り出されたので取り込めたのでしょう。しかしこれは元は海水。魔法によって凍らされただけで元は自然界の物質です。故に吸収出来ないのでしょう」

「あぁクソ!余計なヤツらにもバレちまった!」

 ニイルが同意し、ディードが悪態をつく。


(助けたいけれど、彼の近くに魔法を展開すれぼ全て吸収されてしまう。下手な干渉を起こしてややこしくするより、対応出来ているのだから彼に任せましょう)

 そう考え、目の前に集中するレイ。


 ディードの能力は強力故に扱いも難しい。

 魔法の一切を無効化する、つまり強化魔法や治癒魔法、魔法障壁すら無効化してしまうという事である。

 魔法師との連携が取り辛い、それも弱点の1つと言えよう。


【何故、獣風情から()()()()()()()()()()()のだ?】

 そんな事を考えていると、声と共にケートスが姿を現す。

 先程から度々意味の分からない言葉が出て来るのに、少し気掛かりを覚えるレイ。


「さっきから何言ってんだテメェ?テメェらの主なんか知らねぇよ」

 それはディードも同じの様で、鬱陶しげに吐き捨てる。


【なんなのだ貴様達は?なんなのだこの不愉快な存在共は!】

()()()()()()()()()()()ですよ。時代遅れの老害は、さっさと退場してくれませんかね?」

 何故か狼狽するケートスに、ニイルがそう言い渡す。

 その意味ありげな言葉に一瞬の間が空き、そして。


【やはり()()()()()()()()か!バケモノがぁ!】

 ケートスがそう叫び、魔法を展開するのだった。

如何でしたでしょうか?

ディード強すぎたか?

そして伏線張りすぎ?

この伏線達は直近では回収する予定は無いので、気長に覚えていてもらえればと思います!www

こうして完結させる為に逃げ道を塞いでいくスタイル……

今後も頑張りますので楽しんでいただければ幸いです!

では次回もお楽しみに!

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