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バケモノが愛したこの世界  作者: 一一
第4章 ???編

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81/88

二転三転

はいどうもニノハジです〜

遂に戦闘が終息する...のか?

何やら不穏なタイトルですがどうなるのか...

最後まで楽しんでいただければ幸いです!

ではどうぞ!

「ぐっ……!」

 全開で発動した力が、目の前の事象全ての情報を映し出す。

 そのあまりにも膨大な情報量に激しい頭痛を覚え、思わず声が漏れてしまうレイ。

 それはどうやらニイルも同じの様で、微かに響いた苦悶の声がレイの耳へと届いた。


 まずは自身の周囲に展開している魔法、その後すぐに視界全てに広がる海水、その性質、構成、海水が海水たる情報の全てが瞬時に脳へと送られてくる。


(余計な情報は切り捨てる!必要なモノだけを視て、それ以外は受け流せ!)

 その全てを受け止めていては、どんなに優れた人間であろうと脳がパンクし死に至る。

 それを回避する為、必要な情報だけを抜き出す様意識するレイ。


 例えるなら視界全体を見回しながら、1つの物を注視しないで見付けだす様なもの。

 そんなある意味矛盾した荒業で、情報の海を突き進んで行く。


(まぁだからって、それが出来るなら苦労しないわよね!)

 しかしそんな付け焼き刃が通用する筈も無く。

 人間、してはいけないと意識すればする程、それを強く意識してしまうのは必然。

 結果、大量の情報を処理し切れず頭痛は激しさを増し、鼻や目から血が流れて来るのを感じる。


「あ……れ……?」

 その余りの痛みから意識が飛び掛けた寸前、多少ではあるが確実に、脳の負担が減ったのを感じるレイ。

 混濁しそうな意識に喝を入れ集中してみれば、レイが受けていた余分な情報をニイルが少し肩代わりしているのに気付いた。

 レイよりも脳の処理能力が高く、何よりこの『神威賦与(ちから)』の使い方を熟知している分、レイよりも負担が少ないのだろう。

 今までもそうして肩代わりをしてもらっていた事は有るが、今回はその比では無いらしく歯を食いしばる音すら聞こえてくる。


(私は何をやっているの!彼の力になる、その為に覚悟を決めたんじゃない!いつまでも足手まといのままで良い筈無いでしょう……)

「がああああああああああ!!!」

 そんなニイルを背後に感じたレイは、残りの気力を振り絞り意識を手繰り寄せる。

(もう余計な事は考えるな!ただ皆を守る為!彼に寄り添う為!その為に目の前の敵を殺す事だけに集中しなさい!)


 そうして想いや覚悟を背負い、更に死に直面した事で彼女は極限の集中状態、所謂(いわゆる)ゾーンへと到った。

 自我の感覚は薄れ、目の前の必要な情報のみ取り込み、残りは自然と意識外へと流されて行く。


「ふっ……」

 脳の処理が減った事でレイの変化に気付いたのだろう。

 背後でニイルが笑みを零すが、レイの耳にはその声すらも届かない。


 そんな領域に辿り着きようやく視界が、脳が、魔獣の群れを認識した。

 そこからはひたすら魔獣を解析していく作業である。

 今までは受け流していたが、ここからは大量の魔獣の情報を全て受け止めなくてはならない。


「……っ!」

 自我の感覚が薄れた事により無意識に歯はきつく食いしばられ、レイの目や鼻からは血がとめどなく流れ出すが、本人は気付かず魔獣を視続ける。


「ぐわぁ!」

「ぎゃあ!」

「クソ!テメェらまだか!?この数相手に守りながら戦うのはキツイぜ!?」


 ――残り50匹。

 身を呈してレイ達を守っている獣人達の悲鳴も、ディードの声も届かず、ひたすら前を解析し()続けるレイ。


 ――残り20匹。

 群れの奥、ギルドではS級と判定される様な魔獣達すら控えているのが分かる。

 どうやら魔獣の中でもかなりの知恵を獲得していたらしく、群れでこちらが疲弊するのを待っている様子で、気配を殺して戦いを眺めていた。

 しかしそれすらも気にも止めず、目に視える魔獣(そんざい)全てを解析(りかい)していく。


 ――残り5匹。


「しくった!」

 誰の声か、レイには最早分からない。

 しかしそんな声と共に魔獣の1匹が防衛線を抜け、レイの近くまで迫る。

 だがそんな状況で尚動揺もせず、いや、そんな感情すら置き去りに、迫り来る魔獣(じょうほう)()っていく。

 そして遂に。


 ――解析完了――


「離れろぉ!」

 ニイルの叫びに反応し、レイ達を守っていた獣人達が一斉に海上へと避難する。

 それを認識……すらせずにレイは目の前に手を差し出す。


 あわや魔獣が、その手に喰いつこうとした刹那……


 その魔獣は身体を徐々に砂にしていき、最後は完全に消え去ってしまった。

 それだけでは無い。

 レイ達の周囲を取り囲んでいた約500程の魔獣達も、徐々に砂になっていく。


 そうして残されたのはレイとニイルの2人のみで。

 周囲は完全に静寂に包まれた。


「はぁ……あ……」

 それを認識したレイは大きく息を吐き。

 そしてゾーンからも抜けたのだろう。

 途端に襲い来る激しい頭痛と、体の力が抜けるのを感じながら意識を手放すのだった。



「目が覚めましたか?」

 小さな呻き声と共に意識を取り戻したレイの耳に届いたのは、そんなニイルの言葉だった。

 未だ痛む頭に手を当て、周囲を見回してみればどうやらレイが居るのは甲板の様で。

 その中には獣人や彼等に指示を出すディードの姿も見える。


「私は……どれだけ眠っていたの?」

「精々10分位です。思ったよりも早く目が覚めて良かった。ひとまずこれを飲んでおきなさい」

 そう言ってニイルから渡されたのはニイル特製の回復薬。

 以前は激マズとして阿鼻叫喚を巻き起こした代物だったが、今では改良され普通の味の回復薬として重宝されている。


 それを飲みながらニイルの説明を聞けば、どうやらレイ達のお陰で魔獣達は全滅した様だった。

 周囲の索敵にも何も引っ掛からず、安全を確保した後数分前に航海を再開したらしい。

 その間に船は目的地である災厄の海(エーリヴァーガル)へと到着、間もなくその中心へと到着予定との事だった。


「今のところ異変は有りませんが、未だこの悪臭は続くどころか悪化の一途を辿っています。今はしっかり休んで、今後どんな状況になろうと対応出来る様にしておきなさい」

「えぇそうね、そうさせてもらうわ」

 そう言いながら薬を飲み干すレイ。

 この悪臭の所為でせっかく改良した回復薬も不味く感じてしまい、かつてのトラウマが少し顔を出す。

 それを頭を振って追い出していると、指示を出し終わったのかディードが声を掛けてきた。

「お、目覚めたか。また助けられちまったぜ、礼を言う。しかしあの力は凄まじかったな!あれがてめぇの力か?」


 心配と共に礼を述べるディードだが、本当の目的は先程見せた力の正体を知りたい、といった所だろう。

 鋭く輝くその眼光がそれを物語っている。


「見てた通り、あれは私だけの力じゃないわ。私だけではあれ程大きな力は発揮出来ない」

「それにしたってすげぇ力だったじゃねぇか?ありゃ『神性(アルカヌム)』よりタチが悪ぃんじゃねぇか?テメェら本当にナニモンだ?」

「あら、私から見れば『神性保持者(あなたたち)』もかなり厄介だと思うわよ?最も、貴方はさっきの戦いで力を使っていない様だったけれど」

「あぁ?そりゃどういう意味だ?」

 レイの言葉に眼光が鋭さを増すディード。


 ベスタ以外の部下はもちろんの事、他の『柒翼』ですらディードの『神性(のうりょく)』の詳細は知らない筈である。

 それを何故初めて会ったレイが知った風に語るのか。


 訝しむディードにようやくやり返したとばかりに満足気な笑みを浮かべ、レイは答えた。

「秘密よ。『柒翼(あなたたち)』相手に、切り札をおいそれと教える訳無いでしょう?」

「ハッ!良いねぇ!いつかテメェとやり合ってみてぇもんだ!」


 その返答に満足そうに笑うディード。

 横では好戦的なレイにため息を吐くニイルが居たが、レイは気付かないふりで通すのだった。



 そんな少し物騒でありつつも和やかな航海は、しかし長く続きはしなかった。

 何故なら向かう先、中心地であろうその場所に霧が立ち込めていたから。


 ディードの指示の元、意を決して霧の中に突入した一行を襲ったのは、今までとは比較にならない程強烈な悪臭だった。


「うっ……!」

「尋常じゃないですね……」

 これ迄の航海で麻痺しているにも関わらず、思わず嘔吐(えず)いてしまう臭いに顔を顰めるレイとニイル。

 人間ですらそうなるのだ。

 嗅覚の鋭い獣人の中には、気を失ってしまう者も現れた。


「流石にこれ以上ここに留まるのは厳しいかもなぁ。こんなんじゃまともに戦闘も出来やしねぇ」

「そうね、1度対策する為に引き返す必要が……」

「ボス!大変だ!」

 ディードの言葉に肯定しようとしたレイの言葉を、部下の叫びが掻き消す。

 それは見張り台で周囲を警戒していた獣人族(ビースト)の物だった。


「前方に巨大な影が!こんなデケェ影見た事ねぇ!」

「んだと!?」

 大急ぎで動ける全員が船の前方に集まる。

 見ると確かに尋常では無い大きさの影が、船の行き場を遮る様に鎮座していた。


「な……」

「なに……あれ……?」

 全員が呆然とする中、尚も船は進む。

 そうして間近に迫り、霧の中から姿を表したのは……


 とてつもない程の大きさをした、『ナニカ』の死骸だった。

如何でしたでしょうか?

戦いが終わったと思ったらまた新たな展開が!

引き続き楽しんでいただけれ嬉しいです!

ではまた次回、お会いしましょう!

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