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バケモノが愛したこの世界  作者: 一一
第4章 ???編

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79/88

違和感

はいどうもニノハジです〜

本格的にこの章の戦闘が始まりました!

楽しんでいただければ幸いです!

ではどうぞ!

 自身に身体強化、剣に魔法装填を施し魔鮫(スクアルス)を一瞬で切り伏せるレイ。

 その様子を見ていた周りの亜人達から歓声が上がった。


「いいねぇ!テメェらも遅れんじゃねぇぞ!」

 それに気を良くしたのか、ディードがそう叫び部下達を鼓舞する。

 そうして亜人達も雄叫びを上げながら善戦し、何とか拮抗状態を維持していた。


 いくら精鋭達が揃い、水中では魚人族(マーフォーク)が、空中では鳥人族(ハーピー)が、その両方で獣人族(ビースト)が活躍しようと、未だ500以上居る魔獣達相手ではいつその拮抗状態が崩れるか分からない。

 これを維持出来ているのは(ひとえ)に、ディードの活躍に他ならなかった。


 亜人達も優れた身のこなしで魔獣と退治しているが、ディードはたった1人で複数の魔獣を相手取り、そして圧倒していく。

 その動きは他の亜人達よりも圧倒的に疾く、そして一撃で敵を屠る威力を誇っていた。


(確かに身体能力は圧倒的ね。あのスピードに追い付くには『身体強化+10(フルブースト)』でも厳しそう)

 それを魔法を使わず行っているのだから驚愕には値する……が。

(でも彼の力がこれだけだとしたら『柒翼』と呼ばれるかしら?()()()()ならあの『剣聖』、ブレイズにだって対応出来る……と思う)

 そこまで考え、先程のニイルの言葉を思い出すレイ。

(そういえば魔法使用中は彼に近付くなって言っていたわよね。つまり彼は魔法に対して強いアドバンテージを持っているのかしら?それが彼の『神性(アルカヌム)』……)

 魔鮫(スクアルス)が放った水刃を弾き、別の魔獣にぶつけながらディードを観察するレイ。


 エレナートにてスコルフィオから聞いた話によると、『柒翼』とは『聖神(せいしん)教会』が定めた人類の七つの大罪、それを象徴とする悪魔の名前が付いた神性(のうりょく)を持っているのだという。

 その能力の詳細は分からないそうだが、スコルフィオの強さから鑑みて、かなり強力な力を有していると考えて良いだろう。

 魔法が使えないという欠点を補って余りあるモノだとするなら、到底油断出来る相手では無い。


(ニイルは視れば分かるって言っていたけれど、今の私じゃ彼が能力を使用していないと詳細は視えないのよね)

 故に先程から『神威賦与(ギフト)』にてディードを解析しようとしているのだが、肝心の『神性(アルカヌム)』については何も視えない状態であった。

 つまり何も使わず、素の状態でこれ程の戦闘力を発揮しているという事。


()()()()()、色々と学ばせて貰うわね)

神性(アルカヌム)』を使っていなければ再現可能、自身が強くなる為に『柒翼』すら利用しようと企むレイなのであった。



(少し、妙だな……)

 戦闘が激しさを増す中、ニイルが違和感を覚える。

 彼は今、船上にて要所に魔法で援護をしながら全体を俯瞰(ふかん)していた。

 だからこそ、魔獣に対して違和感を感じたのである。


(『幻想種』が指揮しているにしては統率感が無い。共食いはしてねぇがただ単に暴れ回っている様に思える。指揮系統が機能してねぇのか?)


 いくら魔獣の数が多かろうと、『幻想種』が指揮を執っているのならそこに乱れは生じない。

 真っ直ぐにこの船を狙ってきた事から勘違いしていたが、戦い方から組織だった動きが無い様に感じたのだ。

 その違和感の正体を突き止めるべく、辺りを見回すニイル。

 しかし特に()()()()()()()()、しかしそれが寧ろ1つの疑念を産んだ。

(そういや、この元凶たる『幻想種』はどこだ?)


 その違和感は間近で戦っているレイも如実に感じ始めていた。

(魔獣が以前戦った時より大分弱い……?違う、あの時より戦いやすいんだわ)


 もちろん数は魔獣の方が圧倒的に上で、個々でも強力な魔鮫(スクアルス)等の魔獣も存在している。

 その為こちらの被害も大きく、幸い死者は出ていない様だが戦闘不能者の数は刻々と増えていた。

 しかし、それを踏まえた上で被害が少なく感じられるのだ。


(以前の魔獣、特にあの時戦った魔鮫(スクアルス)は完璧な連携で攻め立てて来ていた。あの時はかなり戦いにくかったけれど、今はただ闇雲に暴れている様な戦い方だわ)

 改めて観察すると、今相手をしている魔獣達は複数での連携など皆無で、ただ目の前の獲物に攻撃している様だとレイは感じる。

 当然数が多いのでそれを捌くのに苦労するのだが、以前の様に連携の取れた攻撃だったならばこちらの被害は甚大、ともすれば全滅の可能性も有り得た。

 しかし今の戦況はこちらが有利に傾きつつ有る。


(優勢の筈なのに不安を覚えるこの感覚……この違和感の正体は何?)

 原因を究明したい所ではあるが、そんな余裕などある筈も無く。

 横から猛スピードで襲いかかって来た魚型の魔獣を斬り捨て、考えが中断される。


(流石にこの状況で他に意識を割いてられない……か。この眼で調べるにしても、もっと数を減らしてからじゃないと……っ!)

 その時、レイの付近で戦っていた獣人族(ビースト)が吹き飛ばされる。

 どうやら息継ぎをしようとした際の隙を、魔鮫(スクアルス)の魔法で突かれたらしい。

 血を吹き出しながら沈みつつある獣人族(ビースト)に、とどめを刺す様に魔獣達が迫る。


「させない!」

 そんな獣人族(ビースト)の元へ魔法を使い一気に接近、自身の展開している魔法領域内に取り込み、呼吸が出来る様にしてやる。

 その間にも魔獣が迫って来ていたが、直前のところで海上から魔法と、そしてディードが飛来し魔獣達を殲滅、事なきを得た。


「悪ぃな、ウチのもんが世話掛けて。テメェら無事か?」

 レイの魔法内に入り、そう問い掛けてくるディード。

 言葉はぶっきらぼうだったが、その目は心配そうに傷付いた部下へと向けられていた。


「お陰様で。でも早くこの人の治療を行わないと、出血が酷いわ。私が治癒魔法を施す間フォローお願い」

「では私も手伝いましょう」

 その時海上からニイルが降りて来る。

 今まで船上から全体をサポートする役目を担っていたニイル。

 先程の魔法も彼による物だったのだが、何故今前線へと出て来たのだろうか。


「助かるぜ、またテメェらに借りが出来ちまったな。しかし何でこんな所に?」

 レイの疑問と同じ事をディードも感じていた様で、ニイルへと問い掛ける。


 ニイルは周囲に魔法を展開し、魔獣を吹き飛ばしながら答えた。

「貴方達と情報を共有したいと思いましてね。少しこの戦況に違和感を感じるのですよ」

「ニイルも?」

 その言葉にレイが反応する。

 やはり同じ違和感を抱いていたのか、その言葉で違和感は確信へと変わった。


「俺には何も分からねぇが、強いて言うならこの異常な数か?」

 先の魔鮫(スクアルス)との戦闘を経験していないディードはそう言う。

 ニイルはそれも有りますが、と前置きしながら語り出した。

「異常な数の多さには『幻想種』が絡んでいるのなら説明がつきます。問題は以前戦った時より魔獣の動きが悪い、という事です」


 そうしてレイが感じたものと、全く同じ感想を述べるニイル。

 レイが想定していた、数が多い故の指揮系統混乱の線もニイルから否定される。


「なるほど、俺はその以前のヤツらと戦ってねぇから何とも言えねぇが、本来ならそういう戦い方をすると?」

「自然発生でこの数が動くのはまず有り得ません。なら『幻想種』が噛んでいるのは確定。であるならば指揮も執っている筈ですが、それが成されている様子はありません」

 そう言って接近して来ようとした魔獣に対し、魔法を放つニイル。

 その魔獣は避けられず周囲の魔獣も巻き込み、深海へと沈んで行った。


「この様に、いくら魔獣になれば知能が上がると言われようと所詮は獣。もっと高位の魔獣にならなければそこまで飛躍的な知能向上にはなり得ず、それを補うのが知性を得るにまで至った『幻想種』の指揮です。奴らが動いているのなら、あの様に周囲を巻き込んでの行動など取れる筈もありません」

 それになるほど、と納得を示すディード。

 更にニイルは続ける。

「ならば考えられる可能性は2つ。魔獣を生み出した迄はしたが何故か関与していない、もしくは()()()()()()()か、です」

 その言葉にハッとするディード。

 レイも同じ結論に至った様でニイルへと問う。

「陽動、という事?」

 その言葉に首肯するニイル。


 もしその推測が正しいのであれば、元凶たる『幻想種』が姿を現していない事にも説明がつく。

 こちらをこの場に縫い止める、又は戦力を削る目的が有るのだとすれば、この大量の魔獣をぶつけて来るだけで事足りるであろう。


「向こうの思惑が分からない以上、早期決着をさせた方が良いかもしれません」

 と、ニイルはそう言うのだった。

如何でしたでしょうか?

何やら不穏な気配が…

続きがきになっていただければ嬉しいです!

ではまた次回もよろしくです!

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