異変
はいどうもニノハジです〜
遂に動き始めた物語ですが果たしてどうなるのか!?
楽しんでいただければ幸いです!
ではどうぞ!
最初に異変に気付いたのは、同乗している獣人族達だった。
現在レイ達が乗っている船には、ディードが選抜した精鋭の亜人達も同乗している。
海上という事で鳥人族や魚人族等も居るが、その半数は獣人族で構成されていた。
「うっ……!」
「なんだこりゃ!」
その獣人族達が一様に苦悶の声を上げ、酷い者はその場に蹲り出したのだ。
「……こりゃひでぇな……」
その影響は当然ディードも受けている様で、顔を顰めながら船の行先を見つめている。
「ど、どうしたの!?」
その異様な光景に思わず声を上げるレイ。
何しろレイはもちろん、ニイルでさえ何の変化も感じられないのだ。
思わずニイルを見るレイだったが、首を横に振り否定を返してくる。
「暫くすりゃ嫌でも分かるさ」
そんなレイ達に一瞥くれ、視線を元に戻すディード。
その間も船は進み、段々と他の種族達も呻き声を上げ始める。
毒ガスなのではと警戒していたレイだったが、目的地に近付くにつれそれが思い違いだったと気付かされた。
「酷い匂い……」
思わず顔を顰めてしまう程の悪臭が辺りに充満しているのだ。
人間のレイですら、思わず嘔吐いてしまいそうな程である。
嗅覚等の感覚が鋭い獣人族はひとたまりもないだろう。
「これは、腐臭ですか?」
流石のニイルも少し顔を顰めながら辺りを見回す。
レイも周囲を確認してみるが、異臭以外特に変化は感じられなかった。
「あぁ、最初嗅いだ時、かなり強烈だったが生物特有の腐敗臭がした。だから恐らく近くに何かしらの死骸が有る筈なんだが……」
ニイルの思考を察したらしくディードが答える。
そう、この原因が腐臭だとするならその発生源が近くに存在する筈である。
しかし目に見える範囲では何も居らず、ただの水平線が広がるのみ。
「だがこの辺りで異臭がするなんて話は聞いた事がねぇ……しかもこんな強烈なのなんざ特にだ。発生源を探りたくても獣人族の嗅覚もマヒっちまって使い物にならねぇ」
そう言うディードも未だに少し辛そうでは有るが、他の亜人達に指示を出している。
この原因を調査する様伝えたのだが、獣人族の一番の索敵方法である嗅覚が完全に使い物にならない事も有り、発生源の特定には至っていなかった。
「なら考えられる原因は2つ。匂いが風に流されて届いたか、死骸が水中に沈んでいるか、ですね」
そのニイルの言葉に肯定を返しながらディードも言う。
「俺もそう考えたが、こんな強烈な匂いが風に乗って来るってのも怪しいところだ。辺りに何もねぇ事からよっぽど遠くから流れて来てる事になる。そんだけの匂いを発生させる物が有るとは思えねぇ」
「では……」
「あぁ、水中だと考えるのが妥当だろう。とりあえずウチの魚人族に探らせるか」
そう言って魚人族達に指示を出し始めるディード。
しかしそれを遮ってレイが叫んだ。
「ちょっと待って!」
いつの間にかレイは『神威賦与』を発動し、その眼でもって海を眺めていた。
その眼が、海中から多数のナニカが接近している事を告げてきていたのだ。
この数年の特訓の結果、『神威賦与』の力を十全に使うにはまだ制限が必要であるが、本気で使わないのであればニイルと同程度まで使用出来るようになっていた。
その力で、どんな脅威が迫って来ているのか解析するレイ。
「こっちに接近する存在、あれは……魔鮫ね。それが……嘘でしょ?」
驚愕と共に言葉に詰まるレイ。
何度視直しても結果は変わらず、映し出された情報が正しい事を証明してくる。
「んだよ?魔鮫程度がなんだってんだ?」
その様子にディードとニイルもレイの視線を辿る。
そしてニイルも『神威賦与』を使い、事の異常さに気付いた様だ。
しかしディードの方は遥か先の海中、更に嗅覚も鈍っている事から気付かないのだろう。
そんな声を上げるディードにレイが答えた。
「魔鮫の群れ……その数100以上よ……」
「ハァ!?」
それに改めて目を凝らすディードだが、その優れた視力をもってしても何も映らない。
だがニイルも同調している事から、それが嘘では無いのだろうと判断する。
「なるほど、それがテメェらの能力って訳か。何が視えてんのか知らねぇが、随分便利そうな力じゃねぇか?」
愉快そうに笑うディードだったがその目の奥は笑っておらず、魔鮫が居るであろう海中を見つめている。
それもその筈、いくらディードが『神性保持者』であり亜人達が精鋭であろうとも、本来Aランク相当の魔獣が100以上押し寄せて来ているのである。
対応を間違えれば容易に全滅してしまう程の脅威であった。
「お陰で部下を無駄に死なせずに済んだぜ。テメェら!戦闘準備!」
レイに礼を述べ大声で指示を出し始めるディード。
彼は魚人族の代わりに鳥人族に空から索敵させ、情報を集める様命令する。
その間レイとニイルも周囲を見渡し索敵を行った結果、とんでもない事実が判明した。
「マジかよ……」
その事実をディードにも伝えるが、流石に彼も絶句してしまう。
何故なら船の周りを取り囲む様に、様々な種類の魔獣が迫って来ていたのだ。
その数合計で、何と約千にも登る。
脅威度の差はあれど、それ程の数が迫って来ているのであれば、小国なら滅んでしまうであろう状況であった。
「こんだけの量の魔獣なんざ見た事ねぇぞ!?今までの大量発生は序の口だったって事かよ!」
「これこそが『幻想種』の厄介なところです。奴らは無制限に魔獣を生み出し自らの支配下に置く。今まで魔獣討伐を行っていた事を考えれば、これでもかなり数を減らした方でしょう」
その間も約千近い魔獣がこちらに向かって来ており、遂にその姿が捉えられる程にまで接近する。
海中に潜む多数の影が、海上から昇る多くの水飛沫が、それらの数の暴力が他の亜人達を恐慌状態に陥らせる。
「マズイわね……」
それを見てレイが呟く。
レイやニイルも焦ってはいるが、戦闘中に混乱すればそれは死に繋がると理解している。
だからこそ冷静に対応しているのだが、全員がそう出来るとは考えていない。
案の定、パニックになりかけている船内を何とか落ち着かせようと考えたレイだったが。
「落ち着けぇ!」
空気を切り裂くような叫び声がディードから放たれ、全員の視線が集まる。
その視線を一身に受け、ディードは笑いながら声を張上げた。
「この程度で取り乱してんじゃねぇ!相手は所詮獣!俺達戦士の相手じゃねぇだろ!?いつも通りの害獣退治と変わらねぇ!」
その言葉に段々と落ち着きを取り戻していく亜人達。
それを見やり凶暴な笑みを浮かべて、更にディードは言う。
「何より、ここには俺が居るんだ。負ける筈ねぇだろ?行くぞテメェら!」
「「「オオオオオオオ!!!」」」
ディードの声に呼応する様に叫びを上げる亜人達。
先程までの混乱は完全に消え、今はやる気に満ち溢れている。
その様子から、彼等のディードに対する絶対の信頼を感じられた。
「流石ね」
「ハッ!ウチの精鋭を舐めんじゃねぇ。まぁただ厳しい戦いになるってのも理解してる。だからテメェらにも期待してるぜ?」
レイの言葉にそう返すディード。
先程は亜人達を鼓舞する為に言ったが、こちらの人数は大体30人程度。
それに比べ向こうは約千体の魔獣である。
如何に精鋭といえど数の不利は大きい。
ディードもそれを理解しているのだろう。
そして、この状況もレイとニイル、この2人が加われば対処出来てしまうのではないのか、という事も。
「もちろん、ここで死ぬつもりは無いから全力でやらせてもらうわ。ニイル、手伝ってちょうだい」
そう言うとレイは眼を見開き、開戦の狼煙となる言葉を叫んだのだった。
「『神威賦与発動』!」
如何でしたでしょうか?
次回より本格的な戦闘に入っていきます!
大量の魔獣相手にどう戦うのか、楽しみにしていただければと思います!
ではまた次回!




