前兆
はいどうもニノハジです〜
前回に引き続き水着回、なのですが!
非常に重要な伏線回収の回となっております!
和やかな雰囲気に油断してるとテンションの落差に風邪をひきますよwww
そんなお話です!
では、どうぞ!
「ち、ちょっと!?そのまま海に入るつもり!?」
慌てて叫ぶレイ。
視線の先、そこにはいつも通りの格好、つまり水着では無いニイルが海へと入ろうとしていた。
それに不思議そうな顔を浮かべるニイル。
「別に、魔法が有ればこの格好で問題無いのでは?」
そう言うニイルに、呆れながらもレイは返す。
「その格好で海に入る事がおかしいと言っているの。魔法が有ろうと水の中に入るのだからそれなりの格好をしてもらわないと。こっちが違和感を覚えるわ」
そうしてその表情のままニイルの全身を見やり、更に続ける。
「そもそもここに来てからもいつもと同じ格好で、傍から見てるだけでも暑苦しいのよね」
そう言われ自身の格好を見下ろすニイル。
その全身はフード、更にその下は今までと変わらず黒一色の全く肌を出さない服装であった。
女性陣はあまりの暑さに、今朝から観光で買った涼しげな服装をしていたのに対し、ニイルだけは変わらずいつも通りの服装を維持していた。
いつも身に着けている手袋までそのままで、まるで肌を見せてはいけないかの様だと感じるレイ。
「実はとある事情から肌を出さない様にしているのです」
そして、そのレイの予想はこの言葉でどうやら正解だったと分かる。
「また隠し事?」
しかし、だからと言ってそれで納得するかと言われれば否である。
半眼でニイルを見つめるレイ。
しばしの無言の後、降参だと言わんばかりに手を挙げ、ニイルが口を開いた。
「分かりました……あまり楽しい物では無いですからね?」
そう言い残し、着替える為に立ち去るニイル。
「何……?それ……?」
「だから言ったでしょう?楽しい物では無いと」
数分後、戻ってきたニイルの姿を見て言葉を失うレイ。
ニイルの服装は昨日皆で選んだ水着だったのだがその下、正確にはその肌にビッシリと模様が刻まれていたのだ。
元の肌の色が分からなくなりそうな程、様々な色の模様が隙間無く首から下の全身を覆っている。
手足の先まで及ぶそれをよく見ると、所々何処かで見た事が有る様な物も含まれていた。
その時、ニイルが口を開く。
「貴女ならこれが何か分かる筈ですよ」
その言葉にまさかと思い、少しだけ神威賦与を発動させる。
するとレイの予想通り、描かれた模様は全て魔法陣であった。
少し視ただけだが、魔力回復の向上や身体強化など多種多様。
そんな様々な効果の魔法陣が複雑に絡み合い、最早原型すら失い一目見ただけでは複雑過ぎて、どんな効果が発揮されるのか分からない物も見受けられた。
その全てを理解出来なかったが、恐らく反発する事も無く、寧ろ相乗効果が働き効力が上がるのだろう。
この眼を持ってしても理解する事が困難な領域の存在に、魔法という技術の全てが注ぎ込まれた産物、そんな感想を抱くレイ。
「そんな良い物では有りません。人類が生み出してしまった負の遺産ですよ」
それにまるでレイの心を読んだかの様に、悲しげに呟くニイル。
「負の遺産?」
その言葉に疑問を抱き、問い質そうとするレイだったが。
「人間の愚かな欲望の末に生まれた、醜いバケモノというだけです」
首を振り、それ以上喋ろうとしなかった。
それに悲痛な表情を浮かべるランシュとフィオ。
(過去の話になると途端に皆喋らなくなるのよね。余程話したくないのか……まぁ誰にだって話したくない過去の1つや2つ……?)
そんな3人の様子を見ていたレイだったが、とある事に気付き口を開く。
「その胸の、ハート?かしら?それ、2人にも付いてるわよね?」
レイが指摘した物。
それはニイルの左胸、丁度心臓の位置に有る小さなハートの模様だった。
一般的に見るハートとは少しデザインが異なり、鎖で縛られているかの様なそれが、ランシュとフィオの胸にも刻まれているのだ。
その問に自身の模様を指でなぞりながらニイルが答える。
「これですか?これはランシュとフィオを縛る呪いで……」
「呪いじゃないよ」
しかしその言葉を遮り、フィオが口を挟む。
「呪いなんかじゃない」
模様の上に手を乗せ、もう一度同じ言葉を吐くフィオ。
見ればランシュもフィオも、その言葉にとても怒っている様に思えて。
「そうですか」
少しだけ微笑みながらそれだけ言い残すと、ニイルは先に海へ入って行く。
残された3人も、無言で後を追って行くのだった。
海の中を泳いで進むのかと思っていたレイ。
しかし、ニイルが展開した魔法によりその予想は裏切られる事となった。
「なるほど……この魔法はこうなっているのね」
神威賦与を発動しながら周囲を見渡し、そう独りごちるレイ。
4人の周囲は今、見えない膜の様な物に覆われ水の侵入を防いでいた。
ニイルが作り出した魔法、それは術者の周囲の海水を水魔法で操作、水の無い空間を作りだし、そこに風魔法で空気を送り込むという物だった。
更にその中の存在を風魔法で浮かす事により、呼吸をしながら自由に水中を動ける仕様となっていた。
水と風の複合魔法。
初めて見るその魔法を我が物とするべく、解析に勤しむレイ。
その様子に微笑みながらニイルは言う。
「以前より複合魔法という物は存在していました。しかし魔法の難易度や魔力の消費量などの観点から廃れていき、今ではほとんど記録にすら残されていません。本来ならこの魔法も魔力消費がとてつもない物だったのですが、以前出会ったマーガが使っていた技術を応用して作り直したのです」
その言葉にレイは思い出す。
以前フィミニアで出会った『魔王』、マーガが使用していた魔技『重複』。
魔法陣を重ねる事により、全く別の魔法すら生み出す事が出来るその技術を用いれば、確かにこの様な芸当も出来よう。
「今や『重複』を使える者など皆無に等しい高等魔技です。私も解析や書き換えばかりを行っていたので久しく忘れていた技術ですが、こういう時は『重複』の方が労力が少なく済みます。これを独学で身に付けたというのですから、改めて彼の魔法技術は驚嘆に値しますね」
ニイルも手放しで称賛している事から、その技術の高度さを伺える。
この魔技を獲得出来れば更に強くなれる、そう確信し解析に一層熱が入るレイ。
そうして忙しなく辺りを見回していると、レイの視界を高速で横切る何かに気付く。
丁度解析も一段落した事でそちらに注意を向けると、それは巨大なサメの姿をしていた。
「あれは……!」
ニイルも気付いたのだろう、声を上げるがその視線はレイとは別の方向を向いている。
それにレイも注意を辺り一帯に向けてみれば、そのサメが1匹では無い事に気付く。
優に十を超えるそのサメが、レイ達の周囲を泳ぎ回っていた。
「魔鮫!何故こんな浅瀬に!?」
ニイルが驚きの声を上げる。
魔獣魔鮫。
サメが魔獣化した存在で、性格は極めて凶暴。
その巨体に似合わず水中を高速で泳ぎ、更に魔法も使う事から討伐は困難を極め、ギルドではA級のパーティが対処する様な強敵である。
しかし本来ならもっと陸地から離れた海域に生息し、何より……
「共食いする程凶暴な奴らが群れを成すなど、本来ならば有り得ません!」
周囲を警戒しながらそう叫ぶニイルに、レイも剣を抜き臨戦態勢に入る。
(辺りを泳ぐ魔鮫達は共食いをする気配は無い。確実にこちらの様子を伺っているわね)
魔鮫達は周囲の魚には目もくれず、仕切りにレイ達の周囲を回遊している。
辺り一帯を食い荒らす彼等の行動としては余りに逸脱していて、何か組織めいた動きに思えた。
それはニイルも思ったのか、舌打ちをしながら呟く。
「魔烏賊の大量発生だけで無く、魔鮫まで……これは予想以上に不味い展開かもしれません」
「それってどういう……」
しかし、レイが言葉を続けるより先に。
巨大で凶悪なその悪意が、襲い掛かって来たのであった。
如何でしたでしょうか?
伏線回収と新たな伏線を張った回でした!
ニイルは全身に魔法陣の刺青を入れている様なものだとイメージしていただければと思います!
どうしてそうなったのか、その謎が明かされるのはまだまだ先の予定なのでお楽しみに!
では次回もよろしくお願いします!




